高利回りの金融商品としてREIT(不動産投資信託)が注目を集めています。日本銀行の金利政策によって東証REIT指数は下降していますが、長期的には堅調な動きで推移しています。
「REITの概要は分かるが詳細を知らない」「今さら聞けないけどREITのメリット・デメリットとは?」というかたも多いのではないでしょうか。改めてREITとは何か、特徴・仕組み・メリット・デメリットについて解説していきます。
REIT(不動産投資信託)の資産総額が増加中
2018年から2023年までの東証株価指数(TOPIX)と東証REIT指数の動きを見ていきましょう。
上:青…東証REIT指数
下:橙…東証株価指数(TOPIX)
おおむね連動していますが、2020年のコロナ禍にはTOPIXが低迷する中でREIT指数は上昇しました。3月の「コロナショック」以降は堅調な動きを示しています。
一般社団法人日本投資信託協会 統計データの2022年12月「公募不動産投資信託資産総額」の数字から見ても、REITへの資金流入が続いていることが分かります。
日本投資信託協会 統計データ(2022.12)より筆者作成
上昇の背景にあるのは米金利の低下です。FRBの利上げペースの鈍化により米国債への投資が鈍化し、高利回りのREITへ資金が流れたとみられています。ただし2022年12月の日本銀行の緩和縮小により、東証REIT指数や評価額は以前より不安定な状況です。なぜ金利の動きと関わりがあるのでしょうか?
REITの仕組みや特徴、メリット・デメリットを見ていきましょう。
REITとは?特徴と仕組み、メリット・デメリット
REITとは投資家から集めた資金でマンション・オフィスビルなどを購入し、家賃・売却益を投資家に還元する投資信託です。
日本の不動産を投資対象とするファンドは「J-REIT」と呼ばれ、海外不動産に投資する「米国REIT」や「豪州REIT」、「英国REIT」などもあります。海外のREITは日本より高リスク・高リターンと言われ、J-REITより値動きの幅が大きいという特性があります。REITだけではなく、株式・債券も外国の商品は国内に比べ高リスク・高リターンと言えるでしょう。
REITには、J-REITの時価総額加重平均などから算出した「東証REIT指数」などの指数が存在します。東証REIT指数などに連動する動きを目指した「REIT-ETF」という商品もあり、金融商品の中では中リスク・中リターンと言われています。
REITの特徴・仕組み
REITを運用するためには、REITを購入する又はREITファンド(REITに分散投資した投資信託)を購入します。REITファンドは複数のREITに分散投資が可能ですが、手数料(売買・信託報酬など)がかかります。REITは1つの不動産投資法人に投資する手法です。
法律上、投資信託は「会社型」と「契約型」の2種類があります。「会社型」は投資を目的とする法人を設立する投資信託で、日本では主にJ-REITを中心に用いられています。一方「契約型」は運用会社と信託銀行が信託契約を結ぶ投資信託で、一般的な投資信託は契約型が主流です。
REITの投資先・種類
REITが運用する不動産には、住宅・ホテル・オフィスビル・商業施設などがあります。REITには「単一用途特化型」「複合型」「総合型」があり、単一用途特化型はホテルのみなど特定の用途の不動産に投資するものです。一方で複合型は2種類の用途の不動産に投資、総合型は3種類以上の不動産に投資します。
REITのメリット
REITは実際に不動産投資をするより少額で始められる、複数の不動産に分散して投資できるというメリットがあります。不動産の家賃収入などを毎期の分配金として受け取ることができ、一般的な投資信託と比べ利回りが高い傾向にあります。
J-REIT5つの利回りを見ていきましょう。
「J-REIT不動産投信情報ポータル」より筆者作成
運営法人によって利回りにバラつきがあることが分かります。一般社団法人日本不動産証券化協会のデータによると、J-REITの平均利回りは直近10年間で3%台前半から4%台後半で推移しています。通常の不動産投資のように、実際に不動産を購入・運営する必要がないという利点もあります。
REITのデメリット
REITは、投資法人が倒産・上場廃止になった場合に価値が下がるというデメリットがあります。不動産投資法人は融資や社債の発行などで資金調達をしているため、金利の影響を受けやすい点も要注意です。
不動産という資産の特性上、自然災害の被害で損失が生じるというリスクもあります。REITでは投資先の不動産を公開していないため、自身で災害などの対策を講じづらいというデメリットも存在します。
ポートフォリオへの組み込みを検討してみよう
REITは現物の不動産を購入せずに不動産に投資できる商品です。REITのみに投資すると不動産業界が不況なときにダメージが大きいですが、他の投資信託や株式などと組み合わせることでリスク軽減が期待できます。
ポートフォリオにREITを組み入れることを検討してみましょう。