J-REIT入門

REIT指数が1900p台に到達

2023年8月29日に、東証REIT指数が7月27日以来、約1カ月ぶりに1900pを上回りました。

米国の長期金利に上昇一服感


J-REITに資金が向かった要因は、米国の長期金利低下に対する期待が高まったことが背景にあります。8月25日にはカンザスシティー連銀が主催するジャクソンホール会合パウエルFRB議長の講演が行われましたが、ここでの発言内容は概ね市場の想定の範囲内と受け止められました。これにより米国の10年債利回りに上昇一服感が出てきたことから、J-REITには買いが入りました。


その後、7月JOLTS求人件数や8月のADP民間部門雇用者数が市場予想を下回り、4-6月期GDP改定値が速報値から下方修正されるなど、米国では弱い経済指標の発表が相次ぎました。米国の長期金利がピークアウトするとの期待が高まったことで、REIT指数は足元で基調を強めています。


高値圏で荒い値動き


ただ、上述の日足チャートを見ると、1900p台に乗せた8月29日以降は1日の振れ幅が大きくなっていることが見て取れます。『日銀の「柔軟化」とJ-REIT』でも触れましたが、今年のREIT指数は1900pに接近すると売りも出てきており、今回、1900pを超えてきたことで値動きが荒くなっています。米国の10年債利回りは上昇にブレーキがかかったとはいってもまだ4%台で推移しており、強弱感が交錯している状況です。


週足チャートではもみ合いが継続


こちらはREIT指数の週足チャートとなります。週足では上がったり下がったりを繰り返しており、中期でみれば水準が大きく変化していません。ざっくり1840p~1900pのレンジでの一進一退が続いており、1850pを割り込むと底堅くなる一方、1900p近辺では上値が重くなっています。


ただ、7月末に1900pを上回った後、いったん売りに押されたものの、1カ月程度で再び1900pを超えてきました。レンジの上の方で推移する期間が長くなってくると、もみ合い相場脱却から上放れへの期待が高まります。


上放れなら上昇加速も


もみ合いが続くのであれば、現状の水準は天井に近いということになります。一方、足元の動きがもみ合い相場終了を示唆しているのであれば、ここから先は売り圧力が和らぎ、買いが入りやすくなるでしょう。


もみ合い継続であれば、レンジ上限をキープできずにどこかで調整が入るはずなので、1900p近辺で下がらない状況が続くだけでも、この先のトレンドが上向きになることへの期待が高まります。次の心理的節目である1950pを超えてくれば上放れが濃厚となります。その場合、もみ合った期間が長い分、バイイングパワーが大きくなることが期待できます。J-REITは大きな転換点を迎えている可能性があります。相場の転換点はトレードチャンスでもありますので、しっかり方向性を見極めておきたい局面です。



この連載の一覧
日本株が大幅安の週にREIT指数が上昇
REITの逆襲
先週のJ-REIT市場では●●がゼロでした!
REIT指数、ここまで下げたらその先は・・・
出遅れるREIT指数
大江戸温泉+アパグループ
J-REITの好パフォーマンス銘柄
KDX不動産投資法人、始動!
米長期金利の5%乗せとJ-REIT
10月決算のREIT
REIT指数が1900p台に到達
中国の団体旅行解禁でホテル系REITが動意づく
日銀の「柔軟化」とJ-REIT
3社合併で巨大REITが誕生
6月決算のREIT
REIT指数が年初来高値を更新
REITの優待
【初心者向け】REITの買いタイミングの考え方
物流REITは売り出尽くし?
株安の中でJ-REITが存在感を示す
複数REITのスポンサー
REIT市場は日銀の新体制を歓迎
REITを見るには金利の方向性が重要に
J-REITは2月決算が多い
温泉以外も始めます
逆風下でのREITの投資戦略
日銀の政策修正でREITが急落
J-REIT入門【第13回】 ローカルREIT
J-REIT入門【第12回】 オンリーワンREIT
REITの合併で投資家が期待できるメリットは?
J-REIT入門【第11回】~不動産株かJ-REITか~
J-REIT入門【第10回】~J-REITで毎月分配~
J-REIT入門【第9回】~急落からの大幅上昇~
J-REIT入門【第8回】~米長期金利4%台の衝撃~
J-REIT入門【第7回】~総合型REITを攻略する~
J-REIT入門【第6回】~属性解説(住居編)~
J-REIT入門【第5回】~属性解説(ホテル・後編)~
J-REIT入門【第4回】~属性解説(ホテル・前編)~
J-REIT入門【第3回】~属性解説(物流編)~
J-REIT入門【第2回】~属性解説(オフィス編)~
J-REIT入門【第1回】~手軽に大家さん~

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

小松 弘和の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております