中国政府が8月10日に、日本への団体旅行を解禁することを発表しました。当ニュースに関する観測が伝わった9日、10日にはJ-REIT市場でもジャパン・ホテル・リート(8985)や星野リゾート・リート(3287)など、ホテル系REITに強い動きが見られました。
訪日客の一段の増加が見込まれる
日本政府観光局(JINTO)が毎月発表している訪日外客統計では、2023年1-6月の上半期で訪日外客数が1000万人を超えるなど、海外からの訪日需要は回復傾向にあります。ただ、コロナ禍前の2019年の水準にはまだ遠く、本格回復には今回の中国による日本への団体旅行解禁が待たれるといった状況でした。今回の決定を受けて、この先は訪日外客数が一段と増加することが予想されます。
ホテル系REITにとってはADR(平均客室販売単価)の上昇が見込まれ、平日やオフシーズンの利用が増えれば客室稼働率の上昇も期待できます。そうなれば、RevPAR(販売可能客室数あたり客室売上)の上昇にもつながりますので、業績面で大きな変化が出てくる可能性があります。ADR、稼働率、RevPARの説明については、属性解説(ホテル・前編)をご参照ください。
2023年のホテル系REITは軟調推移
ホテル系REITは、2023年に入ってからの投資口価格がさえない動きとなっているものが多いです。先ほどのジャパン・ホテル・リートも、週足のチャートを見ると下落基調となっています。星野リゾート・リートもメディアで取り上げられる機会は多いですが、7月までは下値模索が続いていました。
この背景としては、日本の経済活動が正常化に向かった2022年に大きく水準を切り上げたことがあります。2023年は訪日客増加の好影響はある程度織り込み済みであった上に、今回の発表までは中国からの需要増が期待できなかったことから、調整売りに押されました。
反転のきっかけとなるかに注目
今回の解禁措置を受けて、訪日外客数は大きく増加する可能性が高いです。それに対してホテル系REITがどういった動きを見せるかが注目されます。弱い動きが続く中での一時的な戻りにすぎないのか、それともトレンド転換が見られるのか。今後は関連のニュースが多く出てくると思われますし、数カ月後にはホテル系REITの決算にも影響が出てくると考えられます。強い反応が見られるようなら、ここまでの動きが案外であった分、息の長い上昇が続く展開も期待できます。