先週はFOMCや日銀金融政策決定会合など、長期金利を刺激しやすいイベントが相次ぎました。米国の長期金利は上昇基調が続いていますが、中央銀行イベントを通過したことで、J-REIT市場ではいったん「森よりも木を見る」視点で個別重視の様相が強まりそうでもあります。そこで今回は、10月決算銘柄のREITをいくつかご紹介します。
なお、銘柄を推奨することを目的とはしておりませんので、その点はご了承ください。
リゾートREITの雄、星野リゾート・リート
まずは、星野リゾート・リート投資法人(3287)です。リゾート界隈では「星野リゾート」は知らぬものなしの有名ブランドで、同投資法人でも「星のや」では軽井沢や沖縄など5物件、「界」では鬼怒川や箱根など13物件、「リゾナーレ」では八ヶ岳と熱海の2物件がポートフォリオに含まれています(2023年7月1日時点)。
星野リゾートは株式市場には上場しておらず、同グループのスタンスが好みで投資をしたいという場合、受け皿になるのがこの星野リゾート・リートとなります。その分、人気になりやすい傾向があり、分配金利回りは他のレジャー系REITと比べて低めとなることが多いです。
合併に伴い分割を実施するケネディクス・オフィス
続いてはケネディクス・オフィス投資法人(8972)です。「3社合併で巨大REITが誕生」では、ケネディクス・オフィス、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト(3278)、ケネディクス商業リート(3453)の3つの投資法人が合併することを取り上げました。
存続投資法人がこのケネディクス・オフィス(合併後の新商号はKDX不動産投資法人)となりますが、合併の効力発生日が2023年11月1日ですので、10月には様々な思惑が絡んで大きな動きが出てくる可能性があります。2023年6月の合併発表時には、3つのREITがそろって大きく上昇する場面がありました。また同投資法人は、2023年10月31日を分割の基準日(権利付き最終日は10月27日)、11月1日を効力発生日として1:2の投資口分割を実施することを発表しています。
なお、現時点では組み入れ物件はほぼオフィスですが、合併に伴い、2023年11月以降は住居や商業施設も多くポートフォリオに加わることになります。
賃貸住宅に強みを持つスターツプロシード
続いては、スターツプロシード投資法人(8979)です。「ピタットハウス」などを展開するスターツグループ系のREITで、主に首都圏の賃貸住宅が投資対象となっています。ポートフォリオの大半は「プロシード●●(地名)」となっています。
住居系はREITの中でローリスク・ローリターンの性質がありますが、同投資法人は運用のスタンスにおいても、需要の安定している平均的な所得層をターゲットにしており、シングルタイプやファミリータイプの物件に力を入れています。物件の稼働率は高水準が続いており、分配金に関しても、コロナ禍でも大きく落ち込むことはありませんでした。
10月決算REITの多くが4%を超える分配金利回り
10月決算のREITには他にも、大手の住宅・不動産企業がスポンサーとなっている積水ハウス・リート(3309)、NTT都市開発リート(8956)などがあります。予想分配金利回り(9月26日時点)では4%を超えているものが多く、トーセイ・リート(3451)は5%を超えています。星野リゾート・リートは2%台と低めですが、猛暑が一段落して行楽シーズンとなりますので、こちらの観点から注目される要素があります。
米国の長期金利上昇は警戒材料ではありますが、足元のJ-REITは比較的落ち着いた動きを見せています。個別銘柄を吟味するにも良い時期と言えるでしょう。