経過措置の期限明らかに
東京証券取引所は25日、市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の内容を公開しました。そのなかで、プライム市場などの上場基準に満たなくても暫定的に上場を認める「経過措置」を2025年3月以降に順次終了する案を明らかにしました。
経過措置終了後は、2025年3月から1年の改善期間を設け、その間に基準を満たせなかった企業については、原則として6カ月間、監理銘柄・整理銘柄に指定された上で上場廃止となります。
これまで、経過措置の期間は「当分の間」とされていたため、明確な期限の設定を望む声も市場で多く聞かれましたが、ようやくこの期間がはっきりしたことになります。
2022年12月末時点における新市場の上場企業数は、プライム市場が1838社、スタンダード市場が1451社、グロース市場が516社となっています。東証の資料(https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/fi1l5r0000000tcd.pdf)によれば、同時点において、新市場の上場維持基準に適合せず、経過措置を適用している企業数は、全体で510社(プライム市場269社、スタンダード市場が200社、グロース市場が41社)です。これらの企業は上場維持に向けた経営改革が急務となります。
なお、今回の案では、経過措置を適用してプライム市場に上場している企業については、新市場移行前、市場第一部に所属していた場合については、審査なしで改めてスタンダード市場を選択する機会が設けられているため、かりにプライム市場の上場基準を充たさなかった企業の多くはスタンダード市場に移行することになるでしょう。
企業価値向上に向けた動機付け
また、東証は経過措置の終了時期を明確化したことに加え、中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付けについても発表しました。具体的には継続的にPBRが1倍を割りこんでいる企業には、改善策などを開示を強く要請するなどの方針を掲げています。
東証プライム企業のうち、約半数の企業がPBRが1倍を割り込んでいると言われます。PBRが1倍以下ということは、簡単に言えば解散価値を下回っている状況であり、会社を継続するよりもそのまま解散して資本を株主に分配した方がリターンが高いという状況ですから、魅力ある株式市場であるとは言えません。
時期は2023年春から順次実施する予定とされており、対象はプライム市場ならびにスタンダード市場となっています。より成長性が意識されるグロース市場上場会社については、その特性を踏まえて今後議論するとしていますが、改善につながる取り組みですから、ぜひグロース市場にも広げてもらいたいところです。
上記が一番大きなものですが、それ以外にも、上場会社におけるコーポレート・ガバナンスの「質」の向上に向けた取組を促進、英文開示のさらなる拡充、投資者との対話の実効性向上についても、実施を企業に呼びかけています。投資社との対話については、個人投資家と経営陣とがコミュニケーションの場を持つきっかけにもつながるかもしれません。そのためには投資家側も対話に必要なさまざまな知識を持つ必要があるでしょう。企業側と投資家側がともに対話を通じて、理解を深め合うことにつながれば、新たな投資機会も生まれてくることが期待できます。
新市場への移行直後は、投資家から良い評判はあまり聞こえてきませんでした。経過措置などの問題もあり、プライム市場といってもほとんどの1部企業がそのまま移っただけで何も変わらないという指摘も聞こえてきたものです。しかし、いまはまだ段階的な改善が行われている最中です。経過措置の終了とともにプライム市場に上場する企業は絞り込まれることになりますし、企業側も価値を高める取り組みを本格化させていくことでしょう。これらの取り組みを通じて、新市場の改革がより一層進むことを望みます。