資産運用で知っておきたい考え方の1つに「アセットアロケーション」があります。「運用する資産の配分」を意味する言葉ですが、ポートフォリオとはどのような違いがあるのでしょうか?
本記事ではアセットアロケーションとは何か、ポートフォリオとの違い、SAAやTAAなどアセットアロケーションの種類を解説していきます。
アセットアロケーションって何?ポートフォリオとの違いは?
アセットアロケーションとはアセット(資産)とアロケーション(配分)を組み合わせた言葉で、「運用資産の配分」を意味します。
運用する資産を株式・債券・不動産などのジャンルに分け、どのくらいの割合で配分し運用するかを決めます。アセットアロケーションに似た言葉として「ポートフォリオ」があります。ポートフォリオは「運用する資産の組み合わせ」で、アセットアロケーションのようにジャンルではなく「具体的な商品の組み合わせ」を意味します。
例えばポートフォリオが「国債40%、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)30%、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」30%」の場合、アセットアロケーションは「国内債券40%:外国株式60%」と表現します。
運用していく中で「リスクを低くしたい」と感じた方は債券比率を多く、「値動きの幅が大きくなってもいいからリターンを多くしたい」という方は株式の比率を多くします。
実際に資産を運用し、自分に適した比率を見つけていくことがアセットアロケーションでは重要な考えとなります。
個人事業主などが加入できる「国民年金基金」を運用する国民年金基金連合会では、資産運用に関する投資原則で「ポートフォリオのリターンを決定づける最も大きな意思決定はアセットアロケーションであると考え、基本ポートフォリオ及び実践ポートフォリオの策定を重視する」と明記し、アセットアロケーションを重視した意思決定を行っています。
アセットアロケーションの種類:「TAA」と「SAA」とは?
アセットアロケーションには、主に戦略的資産配分(SAA :StrategicAssetAllocation)と戦術的資産配分(TAA :TacticalAssetAllocation)があります。SAAは中・長期的な分析から資産運用の配分を決定し、維持するアセットアロケーションの基本的な考えです。
「アセットアロケーション」と言えばSAAを指す事もあります。SAAでは一度アセットアロケーションを決定すると、決定した資産配分比率に基づき運用を続けていきます。比率が崩れた場合のリバランス(再調整)は一定の基準を決め外れた場合に行う方法と6カ月・1年など定期的に行う方法などがあります。リバランスを一切行わない「バイアンドホールド」という方法も存在します。
TAAはSAAよりも多くのリターンを得るために、短期的な相場の分析に基づきアセットアロケーションを戦術的に変化させます。SAAより上級者向けの手法と言えるでしょう。
その他に政策を重視する「PAA(Policy Asset Allocation)」、マーケットの均衡を前提とした短期のアセットアロケーション戦略「DAA(Dynamic Asset Allocation)」などもあります。
長期の資産運用を目的とした個人投資家にとっては、基本のアセットアロケーション「SAA」が重要となります。
「アセットアロケーション」を決める上で知っておきたいこと
具体的にどうやってアセットアロケーションを決めるのでしょうか?
最低点の知識として「個人の属性」「資産運用のリターン・リスク・相関係数」の2つをおさえておきましょう。
1.個人の属性
個人投資家は運用の目的や保有資産額・年収・リスク許容度(損失に耐えられる度合い)、世帯の人数やライフプランなどに応じた運用の比率を考慮し投資方針を決定します。
例えば単身世帯で20代、年収300万円のAさんの場合はまだ20代で損失を出しても取り戻せる可能性が高いです。よってリスク許容度が高く保有資産額が多ければ外国株式などを中心とした「攻め」の投資で高いリターンを狙う資産運用ができます。
一方で夫婦2人と子ども2人家族の40歳、住宅ローンを返済しているBさんの場合は子どもがいる、住宅ローンの返済がある事からある程度国内債券などを組み込んだ「守りの投資」で低リスクの運用を行っていきます。
2.資産運用のリターン・リスク・相関係数
基本的にリスクとリターンは比例し、例えば債券は低リスク・低リターンで株式は高リスク・高リターンと言われています。
資産運用で期待できる利益(リターン)とリスクもアセットアロケーションを決定する上で重要な判断材料です。加えて他の資産との「相関係数」も重要です。相関係数とはそれぞれの資産の値動きの連動性を示す指標で、1に近づくと資産の連動性が強くなり同じ価額に動きやすくなります。マイナスは逆の方向に動く可能性が高くなります。
GPIFが公表した国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の相関係数は以下のとおりです。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「分散投資の意義」
例えば国内債券と国内株式または外国株式を組み合わせると、相関係数は低くなり分散投資が可能となります。上記2つの他にも運用期間や運用の目的などを考慮し、アセットアロケーションを決定します。
まとめ
個人投資家がリスク分散をするために、アセットアロケーションは重要な考えとなります。投資初心者はアセットアロケーションの基本「SAA」で長期的な戦略を立てていきましょう。
資産の配分に加え、リバランス(再調整)を行うか、行う場合の頻度も重要となります。まずは個人の属性・資産運用のリターン・リスク・相関係数を考慮し、資産配分を決めシミュレーションしてみましょう。