【米国株かんたんナビ】コミュニケーション・サービスセクター(後編):娯楽や通信の世界的な大手も構成銘柄の上位

S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄の採用には時価総額や株式の流動性だけでなく業績も考慮されるため、優良銘柄が多いことも特徴の1つです。


構成銘柄は情報技術(IT)、ヘルスケア、金融、コミュニケーション・サービス、一般消費財、資本財、生活必需品、エネルギー、公益、不動産、素材の11セクターに分類され、各々セクター指数も算出されています。


11に分類されるセクターのうち、このコラムでは前回に続きコミュニケーション・サービスセクターをご紹介します。構成銘柄は24で、種類株式を除くと21銘柄にすぎませんが、S&P500に占めるウエートは8.1%に達しています。


時価総額のベスト10はアルファベット(GOOGL、GOOG)、メタ・プラットフォームズ(META)、ウォルト・ディズニー(DIS)、TモバイルUS(TMUS)、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、コムキャスト(CMCSA)、ネットフリックス(NFLX)、AT&T(T)、アクティビジョン・ブリザード(ATVI)、チャーター・コミュニケーションズ(CHTR)となります。



前回は首位のアルファベット(GOOGL、GOOG)を紹介しましたので、今回は2位から5位の銘柄を取り上げます。


メタ・プラットフォームズ、旧社名はSNSの代名詞

時価総額の2位はメタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)です。2021年10月に社名を変えたことは日本でも大きな話題になりました。メタバース(インターネット上の仮想世界)に事業の重点を置く方針を打ち出し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の代名詞ともいえる社名をあっさり変えてしまったのです。


「フェイスブック」の利用者数は膨大で、2022年12月の月間アクティブユーザー(MAU)は29億6000万人に達しています。毎日使う人の数を示す1日当たりのアクティブユーザー(DAU)は20億人です。


「フェイスブック」のほかにもチャットアプリの「ワッツアップ」やメッセージアプリの「メッセンジャー」、画像共有アプリの「インスタグラム」など強力なSNSツールがあり、4種類のツールのうち1種類以上を利用する人の数を示す月間アクティブピープル(MAP)は2022年12月に37億4000万人に達しています。1日当たりのアクティブピープル(DAP)は29億6000万人です。


圧倒的なSNSツールの力は業績にも反映されています。2022年12月期の売上高は前年比1.1%減の1166億900万ドルです。売上高全体に占めるSNS事業の割合は約98%に上り、そのほとんどが広告収入です。



一方、社名を変更してまで傾注するメタバース事業はあまり成果が出ていません。この事業を中核とするリアリティ・ラボ部門の売上高は5.1%減の21億5900万ドルで、売上比率は約2%です。メタバースに没入するために装着する仮想現実(VR)ゴーグルの販売などで収入を得ています。


メタバース事業の先行きは不透明です。特にコロナ禍から解放された多くの人がいったんリアルな世界での活動を求めるのは自然な流れで、メタバースへの注目度は一時に比べて薄れている印象です。


メタ・プラットフォームズはメタバースへの投資を継続する方針を示していますが、同時にAIの分野への投資に力点を置く姿勢を打ち出しています。株価は2021年9月のピークから2022年11月まで下降線をたどりましたが、その後は回復基調が続いています。


ウォルト・ディズニー、米国を代表するエンターテインメント企業

時価総額の3位はエンターテインメントの分野で世界を代表するウォルト・ディズニーです。事業分野はメディア&エンターテインメント部門とテーマパーク&プロダクト部門に分かれています。


メディア&エンターテインメント部門は、テレビネットワーク事業、動画配信事業、コンテンツ・ライセンス事業に分けられ、2022年9月期の売上高全体に対する比率はそれぞれ34%、23%、10%です。


テレビネットワーク事業は、米国の3大テレビネットワークの一角である「ABCテレビネットワーク」をはじめ、娯楽の「ディズニー」、スポーツの「ESPN」、若い層向けの「フリーフォーム」、ドキュメンタリーの「ナショナル・ジオグラフィック」といったテレビチャンネルで構成されます。


ケーブルテレビなどの有料テレビにこうしたチャンネルを提供した見返りに受け取るアフィリエイト料(売上高全体の22%)と広告(同11%)が主な収入源です。


動画配信事業は「ディズニー・プラス」や「ESPNプラス」「Hulu」「スター・プラス」などで構成され、サブスクリプション料(売上高全体の18%)と広告(同4%)で大半の売り上げを立てています。



コンテンツ・ライセンス事業は映画・テレビコンテンツの販売、映画配給、家庭向けのブルーレイディスクなどの販売、音楽配信などで収益を上げています。


テーマパーク&プロダクト部門は、ディズニーのテーマパークの入園やグッズ、飲食、ディズニーリゾートの宿泊代金、ライセンス料などが収入源で、売上高全体の34%を占めています。


TモバイルUS、5Gで国内最大級の通信網

時価総額の4位は通信会社のTモバイルUSです。モバイルキャリアとして長きにわたり4番手の座に甘んじていましたが、2015年に3位に浮上。2020年には4位のスプリントを吸収合併し、さらに存在感を高めています。


特に携帯電話の第5世代(5G)通信サービスでは国内最大級のネットワークを持ちます。2022年末時点の通信サービス加入数は後払い式と前払い式を合わせ、1億1360万件に達しています。


2022年12月期決算は売上高が前年比0.7%減の795億7100万ドル、純利益が同14.4%減の25億9000万ドルでした。売上高に占めるサービスの比率は77%、携帯端末などの機器の販売が22%です。



時価総額の5位も通信会社のベライゾン・コミュニケーションズです。売上高を着実に伸ばし、最大手のAT&T(T)に肩を並べる規模に成長しています。


2022年12月期決算は売上高が前年比2.4%増の1368億3500万ドル、純利益が同3.7%減の212億5600万ドルでした。売上高はAT&Tの1207億4100万ドルを上回っています。









中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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