NTTが1株を25株にする大型株式分割を発表 投資家のメリットは?

NTT社は5月12日、23.3期決算と24.3期の業績見通しを発表しました。終わった期である23.3期の純利益は増益。そして今期も増益見込みと好調な会社予想を示しましたが、株式市場では決算とは別のことが大きな話題となりました。


それは上記決算を同時に発表した株式分割です。NTTは6月30日を基準日として普通株式を1株につき25株の割合で分割することを発表しました。


同社では、これまでにも株式分割を何度か実施してきました。直近では2019年12月31日を基準日として1株を2株に分割。さらに前には2015年6月30日にも1株を2株に分割しています。ですが、25分割というのは最近では珍しい大規模な分割です。


分割の規模だけでいえば、同社は2009年1月3日を基準日に1株を100株に分割すると発表しましたが、その当時の同社株価は10万円を超える水準でしたので、分割して最低購入金額を引き下げることが、流動性の向上につながるとの狙いがあったためと思われます。


NTT日足チャート



今の同社株価は発表のあった12日の終値でも4000円台でしたから、最低購入金額となる1単元(100株)は40万円台。東京証券取引所が明示している望ましい投資単位の水準(5万円以上50万円未満)におさまっています。


ですが、25分割を実施した場合、最低投資額は前述した40万円を基準にした場合、1万6000円にまで小さくなります。望ましい投資単位の水準を下回ってしまいますが、同社ではそれを承知であえて今回の分割を行うとのことです。一体なぜでしょうか。


同社によれば、それは「2024年から新しいNISA制度が導入されることも踏まえ、株式分割を行い、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、当社グループの持続的な成長に共感していただける投資家層を幅広い世代において拡大することを目的としている」とのことです。


メディアなどの報道によれば、同社の島田明社長は今回の分割について、「小学生の間で金融リテラシーが高まっているがその主な投資対象は米国企業だとし、分割により投資に必要な最低額を米アマゾン・ドット・コムやグーグルの親会社米アルファベット並みにすることでNTT株を取得しやすくなる」と語ったもようです。


小学生が投資をする時代を見据えているというのも驚きですが、同社がこれほど個人投資家を重視し、若年層からの投資を増やしたいと考えていることについても個人的には新しい発見でした。島田社長によれば、同社の個人株主の過半が70歳台とのことですが、来るべき新NISA時代に向けて、若い投資家層を拡大しようとする動きは、今後、同社以外の他の企業にも広がっていくかもしれません


新NISAでは、年間の投資上限額が1人あたり最大360万円まで拡大されるとともに、全体の枠も1800万円に拡大されます。同制度をきっかけに投資を新しく始めてみよう、という人も出てくるでしょう。そんなとき、NTTという日本を代表する企業の株を1万円台で購入できるのはありがたいですよね。


米国ではアマゾンや、グーグルの親会社であるアルファベットなどの企業が1株当たり1万円台、アップルやマイクロソフトといった企業の株価も2万円から4万円ほどで購入することができます。米国で投資が国民に広く浸透しているのは、こうした手軽な金額で株を購入できることも影響しているとすれば、今後日本でも投資層の拡大に期待できるかもしれません。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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