万が一のアメリカ経済デフォルトの場合、NISA塩漬け勢は大丈夫か

アメリカの経済にデフォルト(債務不履行)の可能性が報じられています。現任のバイデン大統領が外交上の位置づけも高い広島サミットに一時オンライン参加を示唆するなど、アメリカ国内における対応優先度の高さを伺わせます。


アメリカの経済メディアから情報を取り寄せると、事態の深刻さがわかります。万が一デフォルトになると、日本経済にも甚大な影響が懸念されます。


対する日本では資産運用文化の勃興期ということもあり、波を受け止める準備が出来ているとは言い難い部分もあります。際立つのは自分が何の資産を有しているかを自覚できていない、NISA塩漬け勢です。


アメリカ債務不履行とは?


アメリカにおけるデフォルトは、支払義務のある法人税や社会保障費の期日が到来するのに対し、政府が十分な支払原資を確保できていないとされる状況です。


アメリカ経済紙によると、6月頭から中旬にかけて最大の山場を迎えると予測され、「Xデー」とも称されています。経済領域の問題というよりも、政治的な駆け引きの結果、経済界が被る可能性のある甚大なリスクといった言葉が適切かもしれません。


想定される現金枯渇に対し、2023年現在政権与党の民主党が債務上限の引き上げを模索しています。この方針に対して野党である共和党が支出見直しなどを求め、両者の交渉は平行線を辿っています。


これまで何度もアメリカはデフォルトの危機があったものの、都度直前になって回避してきましたが、今回は政府の様子からも危機感が段違いに高いことが読み取れます。


経済相場への影響としてはデフォルトが決定的になってからは当然ですが、回避できないという第一報が流れたときにインパクトのある影響が流れるのではと警鐘を鳴らされています。


日本においてもアメリカの単元株や投資信託を購入している方は多く、状況の推移を固唾を呑んで見守っています。アメリカ寄りの資産を一時売却してリスクを軽減するのか、底値の購入チャンスとみて息を潜めているのか。各々の投資家によりスタンスは様々です。


NISAやっていますが何を購入しているかわからない層


アメリカの相場急変に対して、リスクが高いのは危機感をあらわにしている個人投資家だけではありません。


つみたてNISAがスタートして以降、配当非課税のメリットも手伝いNISAの利用者は大きく増加しました。そのなかには資産形成においてNISAを効率的に活用している一方で、なんとなくママ友がやっているから、Youtubeで良いと言われているからという理由で資金を拠出している方も多くいます。


たとえばS&Pがアメリカの株価指数だと理解している方はまだ良い方で、それすらも〇〇が良いと言っているから、それが投資行動に繋がっているケースも目立ちます。


これらの投資信託は、当然ながらデフォルトの際に大きな影響を受けます。NISAで構成銘柄を把握していない方々にも、容赦なく評価損の懸念があります。それを理解していない場合、つみたての過程で認識している自分の資産額と、実際の資産額に乖離が生まれます。


インデックスファンドの本筋から考えると、今回暴落が起こったとしても長期的な視点で見れば回復可能性は高いものです。インデックスはそういうものだ!と理解してつみたてNISAを続けることができれば、実害はさほど大きくはないでしょう。


怖いのは評価損を目にして、「やはり投資って怖いんだ」と軽いパニックに陥り、有価証券を売却してしまうことです。評価損を確定損にすることで、実際の資産形成にも大きな損失が発生します。


SNSの声に動く前に一旦の落ち着きを


専門家として声を大にして伝えたいのは、SNS(Youtubeを含む)がデフォルトをやんやと取り上げて不安感をあおられたときに、いったん落ち着いて専門家に相談すべきということです。客観的なIFAやFPが理想ですが、証券会社に相談するのも選択肢のひとつです。


総じて今回のデフォルトがどのような背景で発生して、個人投資家がどう動けばいいのかは理解できています。また相談を受けた投資家が荒波に向かって売買を仕掛けるべきタイプなのか、それとも長期運用を是としたリスク許容度の高くはないタイプなのか、有価証券以外の資産ポートフォリオも確認しながらアドバイスすることができます。


インターネットなどで門戸を開いているIFAも多いので、まずは一度お気軽に相談して人間関係を築いておきながら、相場急変に備えるようにしましょう。


2024年から新NISAが始まります。2023年10月から新制度の購入が開始されるとの情報ですので、更なる投資ブームが到来することでしょう。我々としては相談してくれた方にフラットな情報を提供するとともに、相談に二の足を踏む方々のリスク回避にも動いていきたいと考えています。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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