5月としては記録的な猛暑
全国各地で最高気温が30度以上の真夏日を観測するなど、5月としては記録的な猛暑となっています。
東京都心で5月中旬までに真夏日を観測したのは2004年以来19年ぶりとのことです。
今年は、例年以上に猛暑で寝苦しい日々が続くのではないかと懸念しています。
経済協力開発機構(OECD)の2021年版調査によりますと、日本人の平均睡眠時間は7時間22分とOECD加盟国の平均睡眠時間(8時間24分)と比べ1時間以上少なく、加盟国で最低レベルとなります。
「ヤクルト1000」は爆発的なヒット
睡眠不足は職場でのミスを誘発するほか、専門家からは睡眠不足の状態が続くと、うつ病や心臓発作、脳卒中など心身の健康を損なうとの指摘がなされています。
近年では、睡眠の質を改善する商品やサービスを指す「スリープテック」への注目度が高まっています。
睡眠の質を高める機能性表示食品や家電などへの需要増加に伴い、矢野経済研究所では国内のスリープテック市場規模は2025年に105億円と2020年(30億円)の3倍強と予測しています。
まず代表的な機能性表示食品として、ヤクルト本社(2267)が販売する乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」が挙げられます。
「Yakult1000」には乳酸菌シロタ株が1000億個含まれており、シロタ株には(1)ストレスをやわらげる機能、(2)睡眠の質を高める機能があることが報告されています。
「ストレス緩和」「睡眠の質向上」に着目した消費者が購入し、SNSなどを通じた口コミの広がりなどから売り上げが急増。2022年には、宅配用の「Yakult1000」、同じ中身となる店頭用の「Y1000」ともに一時品薄状態に陥るなど、現在も好調な売り上げが続いています。
エオリアスリープでは温度制御が可能
また家電分野では、パナソニックホールディングス(6752)傘下のパナソニックがエアコン「エオリアスリープ」を販売しています。
ベッドセンサーと連動した温度制御が特徴となります。
具体的には、枕元にベッドサイドセンサーを設置し、入眠を検知したあと自動で快眠環境運転を開始。ベッドサイドセンサーが頭部付近の温室を計測し、設定温度を適した温度に調整します。
さらにエオリアスリープアプリでは、睡眠時間、枕元の温度・湿度、寝返りの大きさ・頻度などから算出した「おやすみスコア」を表示し、眠りの質を数値で表すことができます。
不眠症治療用アプリで治療の選択肢が増加
機能性表示食品や寝具、ウエアブル端末など「モノ」の売り上げは伸びていますが、専門家からは「モノだけで睡眠不足問題を解消するのは難しい」との見方がなされています。
そのようななか、「睡眠を支援するスマホアプリ」や「不眠治療用のアプリ開発」に取り組む企業への注目度が高まりつつあります。
治療アプリの開発を手掛けるサスメド(4263)は不眠症を治療するスマートフォンアプリを開発し、2023年2月に厚生労働省より医療機器製造販売の承認を取得しました。
医師が患者に処方する「治療用アプリ」としての承認取得は国内3例目となり、不眠症向けでは初となるもようです。同社は2023年内の提供をめざすほか、保険適用に向けて準備を進めるとしています。
同アプリでは、今後医療現場においてスマートフォンアプリの形で不眠症に対する認知行動療法「CBT-I」が処方可能となります。
不眠障害の治療選択肢が増え、薬物依存度を減らすことが期待されています。
睡眠時間の確保を心がけよう
睡眠の質を高めるために、「モノ」や「デジタル・サービス」を活用することは重要ですが、まずは「睡眠時間をきちんと確保すること」、「心身ともに健康を維持すること」を心がけることがより大切だと考えています。
そうした上で「モノ」や「デジタル・サービス」を活用し、心地良い睡眠を得られるように取り組んでいきましょう。