S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄の採用には時価総額や株式の流動性だけでなく業績も考慮されるため、優良銘柄が多いことも特徴の1つです。
構成銘柄は情報技術(IT)、ヘルスケア、金融、コミュニケーション・サービス、一般消費財、資本財、生活必需品、エネルギー、公益、不動産、素材の11セクターに分類され、各々セクター指数も算出されています。
時価総額1000億ドル超が6銘柄
11に分類されるセクターのうち、今回ご紹介するのは生活必需品セクターです。構成するのは37銘柄で、S&P500に占めるウエートは6.9%に達しています。
時価総額のベスト10はウォルマート(WMT)、プロクター&ギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)、ペプシコ(PEP)、コストコ・ホールセール(COST)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、モンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)、アルトリア・グループ(MO)、エスティローダー(EL)、コルゲート・パルモリーブ(CL)となります。
生活必需品セクターだけに米国での生活に密着したサービスや商品を提供する企業が並んでいます。食品・飲料メーカーや日用品メーカーが組み込まれているため、主力商品が米国を代表するナショナルブランドとなっているケースが圧倒的に多い印象です。
時価総額で上位5社が持つブランドについては後ほど触れるとして、6位以下でも有力ブランドは目白押しです。フィリップ・モリス・インターナショナルは加熱式たばこの「アイコス」、モンデリーズ・インターナショナルはチョコレートの「キャドバリー」、キャンディーの「ホールズ」、ガムの「クロレッツ」、ビスケットの「オレオ」「リッツ」などのブランドで知られています。
エスティローダーは化粧品の「エスティローダー」「クリニーク」「ボビイブラウン」、コルゲート・パルモリーブは歯磨き粉の「コルゲート」、モンスター・ビバレッジ(MNST)はエナジードリンクの「モンスターエナジー」、ハーシー(HSY)はチョコレートの「ハーシーズ」が主力ブランドです。
さらにキューリグ・ドクター・ペッパー(KDP)は炭酸飲料の「ドクター・ペッパー」やジンジャーエールの「カナダ・ドライ」、クラフト・ハインツ(KHC)はチーズ製品の「クラフト」やケチャップの「ハインツ」といったブランドが有名です。
こうしたブランドの製品は日本のスーパーマーケットでも普通に売られているものばかりで、世界市場でも確固たる地位を築いていると言えそうです。
ブランドは業界の合従連衡や度重なる再編劇の中で売買の対象となり、現在に至っています。現状では生活必需品セクターの時価総額で上位の企業が保有していますが、逆からみればこうしたブランドを持つがゆえにその企業が上位にランクされていると言えるのかもしれません。
生活必需品セクターを構成する37銘柄の中で2023年5月30日時点の時価総額が1000億ドル(約13兆9800億円)を超えるのは6銘柄に上ります。
ウォルマート、世界最大の小売事業者
資本財セクターの時価総額で首位に立つのは小売事業で世界最大のウォルマートです。売上高の世界企業ランキングとして知られる「フォーチューン・グローバル500社」では2022年版まで9年連続で首位。小売分野に限らず世界最大の企業と言っても過言ではないと思います。
ウォルマートを象徴する言葉は「エブリデー・ロープライス(毎日安い)」です。「Everyday low prices」の頭文字である「EDLP」は流通業界の用語集にはまず掲載されているほど浸透しています。
目玉商品の特売で集客するのではなく、常に低価格で商品を販売することで「いつ行っても安い」という顧客の信頼感を勝ち取る戦略と言えます。実現するには「エブリデー・ローコスト(毎日コストを抑える)」を実践する必要があり、サプライチェーンの効率化が不可欠です。
安定した大量仕入れが可能な小売大手ゆえに実現できる販売価格で競争力を高めています。「エブリデー・ロープライス」は単なるキャッチフレーズではなく、ウォルマートの企業哲学にまで昇華されていると言えそうです。
事業分野は3つに分かれています。中核事業の米国部門は2023年1月期の売上高に占める割合が69%です。巨大な総合スーパーマーケットの「スーパーセンター」、比較的小規模の「ネイバーフッド・マーケッツ」、安売りの「ディスカウント・ストア」に加え、モバイルアプリを通じたオンライン販売を手掛けています。
2023年1月末時点の米国内の店舗数は「スーパーセンター」が3572店、「ネイバーフッド・マーケッツ」などが781店、「ディスカウント・ストア」が364店です。プライベートブランドでは「グレート・バリュー」や「イクエイト」などを展開しています。
国際部門は売上比率が約17%です。メキシコやカナダ、中国、インド、ケニアなど合わせて19カ国で事業を手掛けています。英国と日本にも進出していましたが、2022年1月期に事業を売却し、撤退しました。
2023年1月末時点の店舗数は小売りが4968店、卸売りが338店です。メキシコの事業規模が大きく、店舗の半数以上を占めています。また、インドでは傘下の電子商取引(EC)大手、フリップカートを通じてネット通販と店舗販売を融合させるオムニチャネルにも力を入れています。
サムズクラブ部門では米国で会員制のホールセールスーパーの運営を手掛けています。店舗数は600店で、売上比率は14%に上っています。