株式と債券って、どう違う?

NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型確定拠出年金などをきっかけにして、投資信託について学び始めた人は多いでしょう。投資信託には株式や債券が組み入れられており、資料に「株式は債券よりリスクが高い」などと書かれています。では、株式と債券は、どのような違いがあるのでしょうか。


株式とは? 出資すること


「株式投資は、事業への出資」と説明されるものの、ピンとこないと感じる方は多いようです。多くの人がイメージする株式投資は、株価が上がったり下がったりしている上場株の売買でしょう。じつは、株式投資には2つのステージがあるのです。まずは出資の段階でのステージで、次が流通するステージです。


出資の段階とは、株式会社が株を発行して事業資金を集める場面です。上場株や上場を控えた株の場合、広く大勢の投資家から資金を募る「公募」を行います。購入を希望する投資家は、証券会社を通じて申し込みをします。この資金集めの場を発行市場といいます。


株式の売買とは? 


流通のステージは、既に株式を保有している投資家が、その株を他者に売却する場です。上場株の場合、買い手との取引は証券取引所で行われます。売買の場を、流通市場といいます。証券取引所は株式のオークション会場ですが、投資家は取引所にダイレクトに注文を出すことができません。証券会社が間に入り、顧客の売り注文や買い注文を取引所に取り次ぎます。


証券会社の店頭や、WEBサイト、アプリなどで目にする株価は、その株式が証券取引所で売買された取引価格を表示しています。皆さんが株価を見た瞬間の直前に取引が成立した、投資家同士の取引価格です。それが「現在値」として示されています。


債券とは? 資金を貸すこと


債券も、株式と同じように、資金集めを目的として発行されます。国が発行するのは「国債」、会社が事業資金を集めるのは「社債」です。債券にも発行市場があり、流通市場があります。


国や会社が資金を必要とする場合、発行市場を通じて投資家からの資金を募集します。ここで株式と違うのは、債券の購入は、国や会社に「お金を貸す」という点です。あらかじめ決められた償還日(満期日)には額面金額が投資家に返されます。


また、債券を発行した国や会社は、償還日までの間、投資家に利子を払います。「年利率●%」と割合が決まっている固定金利の債券と、利払いの都度、市場金利の変動に応じて利率を見直す変動金利の債券があります。


債券を購入し、定期的に利子を受け取りながら償還日に額面が返ってくるだけの投資であれば、投資家にとっては定期預金と同じような資産運用となります。


債券の売買とは? 


債券も、株式のように流通市場があります。証券取引所に上場している債券と、非上場の債券があります。


取引所に上場している債券の代表的なものは、10年利付国債です。ほかに2年、5年、20年、30年、40年の利付国債が東京証券取引所と名古屋証券取引所で売買されています。社債を含めると債券の種類は多様で銘柄も多く、取引事務が煩雑なので、多くは非上場で、店頭取引が行なわれています。


債券の取引価格は、投資対象としての魅力に応じて値上がりしたり値下がりしたりします。債券投資は、償還まで保有するほかに、購入時より値上がりした場合に売却し、債券価格の差益を得ることも可能です。


債券と利回りの関係は、過去記事『「金利上昇=債券価格は下落」ってどういうこと?』をご覧ください。債券価格の考え方は、上場債券、非上場債券ともに同じです。利回りと償還の確実性が価格形成に影響します。


株式投資と債券投資の違い


金融商品について、「株式は債券よりリスクが高い」という説明がなされています。これについて説明しましょう。


決定的に違うのは、株式には償還がなく、債券には償還があるということです。株式は事業への出資なので、投資先の事業が継続している限り、資金が投資家の手元に戻って来ることはありません。換金したければ、市場で売却するしかないのです。


一方、債券には償還日があります。債券の発行体(=投資家が資金を貸した相手)の財務内容に問題がなければ、償還日には投資家の手元に額面金額が返されます。この違いが、株式と債券のリスクの差となります。


株式、債券、どちらも流通市場で価格が決まります。この価格は、投資対象としての魅力の度合いによって上下しています。この価格変動リスクは、株式、債券ともに共通です。ただし債券の場合は、償還日に近くなるほど、価格変動の幅は小さくなる傾向があります。償還日には額面金額になるからです。同じ価格変動リスクといえども、変動幅の違いにより、株式より債券の方がリスクの度合いが小さいといえます。


また、株式と債券では、経営への関与の観点や、資金提供の責任の度合いが異なります。株式投資では「提供した資金を使った事業で利益を生み、その分配を受ける」という見返りを期待します。そのためには、資金をどのように使うかといった経営への口出しもします。それが株主総会です。反対に、事業がうまくいかなかった場合の責任の一端も担います。もし投資先が破綻した場合、残った財産を投資家間で分けられるとしても、資金を貸した金融機関や債権者に比べ、株主は財産の分配を受ける順位が劣ります。



 


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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