新NISAが追い風? ネット証券口座の利用が増えています

日本証券業協会では、インターネット取引に関する調査を半期ごとに実施し、その結果をまとめています。先日、2025年3月末時点のインターネット取引の状況が公表されましたので、ポイントをご紹介しましょう。


「インターネットの証券口座、作ったけど利用しない」は徐々に減少


2025年3月末時点で、調査対象の証券会社は263社。そのうちインターネット取引を取り扱っている証券会社は94社で、全体の35.7%です。


証券取引をインターネットで行なう「ネット証券口座」は、2025年3月末時点においては4,898 万口座で、半年前の前回調査に比べて215 万口座(4.6%)増加し、2024年3月末からは1年間で7.7%増えました。


そのうち1円以上の残高がある口座は3,134万口座で、総口座数の64.4%。前回調査時は62.6%で、1年前は61.0%でしたので、口座だけ作って取引していないという人の割合は、少しずつ減ってきているといえます。とはいえ、まだ3分の1の人の口座には残高がない状態です。


どの年代でもネットの証券口座が増えている


個人のネット証券口座数を年代別に見ると、最も口座数が多いのは50歳代の1,040万口座で、全体の21.3%。次が40歳代で1,005万口座(20.6%)。次いで30歳代が820万口座(16.8%)、60歳代が716万口座(14.7%)となっています。


1円以上の残高がある口座でも、最も口座数が多いのは50歳代で663万口座。続いて40歳代の614万口座、60歳代の497万口座、30歳代の490万口座の順です。


【グラフ1】は、半期ごと(年度上期:4月~9月、下期:10月~翌年3月)に、残高がある年代別口座数の増減率の推移を示しています。



2020年度下期は、新型コロナウィルスの感染が拡大した時期でした。70歳代では残高のある口座が前回調査比28%減、60歳代は1.8%増だった一方で、30歳代は11.8%増、40歳代と50歳代でも5%台の増加率となりました。コロナ禍で、年代によってネット取引への向き合い方に特徴が表れた時期でもあります。


2023年度に20歳未満の口座が急増した背景は、ジュニアNISAの最終年という特殊事情です。2024年度に入ると、18歳未満は利用できない新NISAが始まり、4.5%減となっています。


2023年度上期以降は、4期連続で20歳代の増加率が年代別でトップを保っています。特に2023年度下期以降は、3期連続で11%台の増加。30歳代も2024年度下期は9.48%増となり、若い世代のネット取引利用が増えていることがわかります。


ネット取引の背景に新NISA?


口座数が増えれば取引額も増えるのが自然です。2024年度は、上期・下期を通じて、インターネットによる証券取引額が大きく増加しました。


2024年度下期は、ネット証券口座を通じた株式等の現物取引は221兆9,368億円、信用取引は302兆2,794億円で、合計486兆161億円でした。この金額は、上場投資信託(ETF)及び不動産投資信託(REIT)等を含みます【グラフ2】。



2024年度下期における、全証券会社を通じた株式等委託取引の売買代金は1,428兆8,241億円で、これに占めるネット取引の売買代金は、36.7%でした。2023年度上期以前は25%程度で推移していましたが、直近3期は30%台半ばとなり、2024年からの新NISA(少額投資非課税制度)が追い風となっていると推測されます。


ネット証券口座の投信買付額も増加が続く


次は、一般の公募投資信託のネット取引について見てみましょう。


【グラフ3】は、ネット証券口座での投信買付額を半期ごとに集計したものです。2024年度下期は5兆9,572億円となり、6兆円が目前です(証券総合口座におけるMRF等の自動買付分を除く)。特に、2023年度下期、2024年度上期の前回調査比の伸び率が高く、こちらも新NISAが貢献したといえるでしょう。



2024年度下期は、世界的にマーケットが荒れたところからのスタートとなりました。米国ではトランプ大統領が再度就任し、関税問題が不安視された時期です。にもかかわらず、ネット証券を通じた投資信託の購入は高水準を保った結果となっています。


【参考】「インターネット取引に関する調査結果(2025 年3月末)について」2025年 6月19日(日本証券業協会)

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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