業績好調でストップ高 良品計画の決算を読み解く

7月10日の株式市場では、無印良品を運営する良品計画が大きな話題となりました。同社は7日に23.8期第3四半期(3Q)の決算を発表。この内容が好感され、10日にはストップ高まで上昇しました。


同社の時価訴額は約4700億円と上場企業のなかでも上位に入る規模であり、これほどの大型株がストップ高まで上昇することはまれです。ここまで同社株が買いを集めたの理由はなんだったのでしょうか。決算書を読み解くことで、その要因を探ってみたいと思います。


まず、同社のビジネスをおさらいしてみたいと思います。といっても、この点は簡単です。皆さんご存じ、衣服、雑貨、食品などを取り扱う小売店「無印良品」の運営が主力事業ですね。


前述した直近の決算である23.8期3Q累計(9-5月)時点では、連結売上高が4358億円(前年同期比17.5%増)、同営業利映画227億円(同8.7%減)、同経常利益が241億円(同15.5%減)、同純利益が187億円(同6.6%減)となりました。


この数字だけを見ると、売上高こそ増えているものの、営業利益以下、各利益では減益となっています。それなのになぜ株価が上昇するのか?と疑問に思われるかもしれません。しかし、これを1-3Qまでの累計の数値ではなく、各四半期ごとに分解してみると違った印象になります。


4つの項目のうち、特に営業利益についてみてみたいと思います。同社の営業利益は1Q(9-11月)時点では50億円にとどまっていました。2Q(12-2月)には52億円とわずかに増加。そして直近の3Q(3-5月)はこれが125億円と大幅に増加しています。この点が市場ではポジティブに受けとめられたとみられます。



ここからは同社の利益がなぜ改善したのかについて、さらに詳しく見ていきたいと思います。同社は国内だけでなく、中国をはじめとした東アジア、東南アジア・オセアニア、欧米などの海外にも積極的に店舗を展開しており、国内の営業収益(売上高に相当)2619億円に対し、海外は同1739億円となっており、海外売上高比率は約4割に達しています。


さらに、同期時点の営業利益で見た場合では、国内事業50億円に対し、海外は同176億円となっており、利益の4分の3を海外で稼ぎ出している状況です。


直近の3Q業績が改善したのは、この海外事業、とくに中国での業績が回復したことが非常に大きな要因です。前年の上海などでのロックダウンによる業績低迷から復調したこともあり、同四半期の売上高は427億円(前年同期比52.7%増)、グローバル販管費を除いたセグメント営業利益は227億円(同2.6倍)と非常に好調でした。


また、国内事業も既存店売上高はマイナス(同5.5%減)でしたが、値上げ効果から利益率は改善。国内事業における同四半期のグローバル販管費を除いたセグメント営業利益は121億円(14.9%増)と、5四半期ぶりに増益となりました。


ちなみに、会社側では23.8期通期の売上高予想を5850億円、同営業益予想を300億円としていますが、足もとのペースで進めば、会社予想を上振れて着地する可能性もあると思います。


こうして決算の中身を細かく見てみると、短信の1枚目に書いてある数字だけではわからない、その企業の実力が見えてくるような気がしますよね。「企業分析」や「ファンダメンタルズ」と聞くと、なにやら難しそうな印象になってしまいますが、その企業が今どんな分野が伸びているのか、何に苦戦しているのか、といった個別の事情を確認することで、単純に増益か減益か、ではない「良い決算」に対する理解が深まると思います。ぜひ決算書を読んでみてください。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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