中長期的な視点で「ダイワ・US・REIT・オープン」への投資はあり!?

2023年上半期(1月~6月)までの投資信託の資金流入額ランキングでは株式型が上位を占めました。

そのようななか、第7位には不動産投信の「ダイワ・US・REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)」がランクインしました。



個人的には、同ファンドに資金が流入していたのは意外との印象を受けました。

その理由としては、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ継続に伴う景気悪化懸念や、3月に発生した銀行破綻による信用不安の警戒感が根強いことから、米国のリート市場を巡る環境は決して良好とは言えない状況が続いていたからです。


同ファンドの基準価額は2298円(7/13時点)と2000円台での推移が続いております。

2004年7月に運用開始時の1万円と比べ、大きく下落しています。

運用開始以来、定期的に分配金を支払っておりますが、それを考慮しても基準価額は低いと言えます。



比較的好調な産業施設やデータセンターに投資

2023年の上半期の状況を振り返ると、3月上旬にシリコンバレーバンク(SVB)など米国の金融機関が破綻しました。

銀行からの預金流出や規制強化が警戒され、銀行が融資を厳格化し商業用不動産市場などに悪影響を及ぼすとの見方がリート市場全体の重荷となりました。


ただ実際は、米国の上場リートのファンダメンタルズに関して、いまのところ軟調なのは、オフィスなど一部のセクターにとどまっています。


住宅データセンター産業施設などは2022年に続き比較的好調であり、ヘルスケアは新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだあと業績は回復しています。

住宅では戸建住宅が堅調な賃料成長が続いており、データセンターでは生成AI(人工知能)関連需要が高まっていることが業績を支えているとみられています。

そのため全体の上場リートをみると、ファンダメンタルズは比較的安定しています。


同ファンドの用途別の組み入れ比率を確認すると、比較的好調な産業施設集合住宅ヘルスケアデータセンターの4業種が50%程度を占めています。



同ファンドでは、今後も成長性とバリューエーションの観点から魅力的なセクターや銘柄に注目していく方針を示しています。

中でも、「構造的に需要増加が見込める分野(データセンター)」「リート側の賃料決定力の高い分野(戸建住宅)」「景気感応度が低く業績を見通しやすい分野(ヘルスケア)」に注目しているとのことです。


今後の見通しについて、データセンターではデータ需要が構造的に増加傾向にあることに加え、冷却に使う電力の供給不安などからタイトな需給環境が続くとみています。

また戸建住宅では、ローン金利の上昇や物件の高騰に伴い購入ではなく、賃貸にとどまる層が増えていることから、良好な需給環境が続くことを見込んでいます。

ヘルスケアでは空室率が改善傾向にある高齢者住宅を中心に上昇が期待できるとの見方を示しています。


「投資信託10年/北米REIT部門 最優秀ファンド賞」受賞

同ファンドは「R&Iファンド大賞2023」において、投資信託10年/北米REIT部門 最優秀ファンド賞」を受賞しました。

過去10年間のシャープレシオなどに基に選考されました(評価基準日は2023年3月31日)。

最優秀ファンド賞を受賞したことが資金流入の一因につながったかもしれません。


目先は米国リート市場への不安は残るものの、同ファンドはデータセンターを始め堅調なファンダメンタルズの分野を中心に投資していることから、成長余地は高いとみています。

またFRBによる利上げは最終局面に入っており、米長期金利が低下基調に転じれば、米国リート市場にとっても追い風となりそうです。


中長期的には、安定的な分配金の支払いに加え、基準価額の持ち直しが期待できる同ファンドに投資を行うのは有効な資産運用方法と考えています。


日本株情報部 アナリスト

角屋 昌範

2005年に国内証券会社へ入社後、投資情報部や調査部に在籍。投資情報部では、米国や香港株式市場見通しの作成など海外金融市場に関する調査業務に携わる。調査部では、ネット関連セクターを中心に国内個別企業のアナリストレポートを執筆した。 国内証券会社などを経て2019年に入社。主に先物市場見通しなど「デリバティブコンテンツ」を担当。 CFP DCプランナー

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