一般社団法人 投資信託協会は、毎月、国内籍の投資信託の残高や資金の流出入などのさまざまなデータを集計し、公表しています。先日公表された2025年3月末時点の「統計データ」や「投資信託概況」から、投資信託の現状をまとめました。
2024年度末の投信残高は約236兆円、うち株式投信は約221兆円
2025年3月末時点の公募証券投信全体の純資産総額は、公社債投信やETF(上場投資信託)を含む全体で236兆3,101億円、前月比0.9%減少となりました。過去最高額の247兆2,328億円を記録した同年1月から、2カ月連続で前月比マイナスとなっています。
投信の純資産総額が増減する要因は、主に2つあります。1つは投資している証券などの値動きや為替相場の変動による時価の増減です。もう1つは、投資家が投信を購入したり解約・償還したりする資金の出入りによるものです。
3月の純資産減少に大きな影響を与えたのは、時価の減少によるマイナスでした。
全体から公社債投信を除いた株式投信の純資産総額は221兆4,835億円で、さらにETF(上場投資信託)を除くベースでは135兆6,425億円でした。
なお、ここで集計している「国内籍の投資信託」とは、日本国内で設定されている投資信託のことで、投資対象は国内に限りません。
国内株式だけの運用と、海外株式を含む運用で半々
国内籍の公募株式投信(ETFを含む)を投資対象地域で分けた残高は、国内が47.4%、海外が27.5%、国内と海外のミックス(内外)が25.1%となっています。つまり、投資対象地域が国内のみの投信と、海外を含む投信(投資対象が海外+内外の合計)とでおおよそ半々ということです【グラフ1】。
次は、国内籍公募株式投信(ETFを含む)の純資産総額を、インデックス型投信とアクティブ型投信に分けてみます。2025年3月末時点では、残高の約6割がインデックス型投信でした。【グラフ2】は、公募株式投信全体の純資産総額を100として、インデックス型投信とアクティブ型投信の残高割合の推移を示したものです。
2016年3月末はインデックス型投信が3割でした。おおよそ半々になったのは2020年3月末のこと。以降、徐々にインデックス型投信の割合が高まっています。
ただしETFを除くベースでは、2025年3月末の株式投信の純資産総額135億6,425億円に対してインデックス型投信は49兆4,460億円で、割合は36.5%に低下します。
コロナ前とはケタ違いの規模で資金がなだれ込んだ
次は、資金フローを見ていきましょう。資金フローとは、投信の設定額から解約金額や償還金額を差し引いて求めた、投資信託への資金の出入りのこと。プラスの年は、購入額が解約・償還の金額を上回っています。
2024年4月から2025年3月までの2024年度は、ETFを含む公募株式投信に18兆円を超える純流入となりました。ETFを除いても、16兆6,832億円の純流入です。
過去10年度分の資金フローは、一度も純流出になっていません【グラフ3】。
2024年度は純流入額が急増しています。増加が目覚ましい近年と比較しても2倍近く、新型コロナウィルス発生直前と比べると10~30倍の規模です。新NISAをきっかけとした投資家層の拡大や、つみたて投資枠で定期的に投信を購入するしくみが背景にあると考えてよいでしょう。
2024年度は、2025年3月単月でも純流入額の規模は大きく、ETFを除く公募株式投信に1兆5,899億円の資金が純流入し、22カ月連続純流入となりました。公社債投信とETFを含めた全体の純流入額は2兆2302億円、2007年6月以来の高水準となりました。また、ETFを含むベースで投資対象が海外株式のカテゴリには、2019年12月から64カ月連続の純流入となっています。
足元では米トランプ政権の関税政策に翻弄される相場が続いていますが、資産形成は長期的な視点で行いましょう。積立投資をしている期間は、市場が低迷している方が安い基準価額で購入できるので、むしろ喜ばしいといえます。投資環境に「山あり谷あり」は当然のこと。長い年月をかけて資産を積み上げ、資金を夢の実現に役立ててください。
【参考サイト】
●一般社団法人 投資信託協会「統計データ」