2023年の前半は日経平均が歴史的な上昇となりました。中でも、生成AIによる半導体需要の期待から関連銘柄が大きく買われたことは記憶に新しいと思います。
22年10月に上場したばかりのソシオネクスト(6526)は一躍人気株となり、半導体関連の主力株にのし上がりました。半導体株は期待感先行で上昇している側面もあるので、今後はどのような展開となるのか気になりますね。
半導体と言えば、個人投資家に最も人気がある銘柄としてレーザーテック(6920)が挙げられます。売買代金ランキングでは毎日1位~5位をキープしており、その人気は不動の地位を築いています。そのような中でソシオネクストの人気が急上昇しており、時折ランキングが入れ替わる日も出てきました。そのようなことを踏まえ、今回は個人から圧倒的な人気がある2銘柄について比較してみました。
世界シェア100%のレーザーテック
株式市場のニュースではほぼ毎日のように取り上げられるレーザーテックですが、EUV(極端紫外線)向けのマスクブランクス欠陥検査装置で世界シェア100%を持つ唯一無二の会社として有名です。自社工場を持たないファブレス企業であり、装置製造の委託先は公開されていません。
専門用語が出てきて「?」となるかもしれませんが、簡単に言うと半導体回路の原版に微細な傷やホコリがないかを調べるための装置を開発しています。半導体の回路はナノメートル(10億分の1メートル)の世界なので、目に見えない傷・ホコリがあるだけでも回路が正常に機能しません。
イメージとしては、道路に対して巨大なクレーターができた(傷)、高層ビルが倒壊している(ホコリ)みたいなものです。これでは通れないですよね。そのような不具合を見つけるには高度な技術が必要ですし、参入障壁も高い分野です。そこで圧倒的なシェアを築いたのがレーザーテックであり、検査装置は高いもので数十億円と非常に高価です。
電機大手2社の半導体部門が統合したソシオネクスト
富士通(6702)と現パナソニックホールディングス(6752)のロジック半導体事業を統合し、2014年に設立されました。1つのチップで複数の機能をこなせるSoC(システム・オン・チップ)の開発を行っており、レーザーテックと同様に自社工場を持たないファブレス企業です。
半導体集積回路(1C)の一つであるASIC(特定用途向け集積回路)では世界第2位と圧倒的なシェアも有しています。特定用途と言われると難しい印象がありますが、家電製品、産業製品、通信機器、コンピュータなどさまざまな電気製品に搭載されているものです。イメージ的には、いろいろな命令を実行できる高性能な半導体ですね。
業績を比較してみた
両社とも半導体分野の企業ですが、レーザーテックは半導体製造装置、ソシオネクストは半導体チップの開発であり、手がける事業は全く違います。そのような2社の業績を比較してみると・・・
※小数点以下は四捨五入
売上高だけでみるとソシオネクストが2倍以上ですが、利益はレーザーテックの方が稼いでいることがわかります。営業利益率は10%を超えていれば一般的に優良企業と言われるため、ソシオネクストが悪いというわけではありません。レーザーテックの利益率が尋常でないだけです。時価総額では4倍近い差があり、売買代金ランキングが常にほぼ1位という圧倒的な存在感がありますね。
株式市場での状況は?
どちらも非常に人気な銘柄ですが、23年度以降の株価はどのような推移となっているのか比較してみました。
※3月末を100として指数化
株価の推移と売買代金は、上のチャートのようになりました。ソシオネクストは23年に入ってから人気が加速したため、一時2倍にまで上昇した場面もありました。一方で、レーザーテックは半導体株高の波に乗れておらず、パフォーマンスは直近でもマイナスです。売買代金を見るとソシオネクストの商いが5月終盤から急増していることがわかります。
瞬間的には、レーザーテックの売買代金を上回る日もありました。もちろん決算発表などの業績要因や売り出しなどの需給要因も影響しますが、普段はレーザーテックの売買をしていた投資家がソシオネクストに流れていることも考えられそうですね。レーザーテックがチャンピオンベルトを防衛するのか、それとも新星のソシオネクストがその座を奪い取るのか、今後の展開に注目したいところです。