個人株主数が増加 ~2022年度株式分布状況調査から~

東京証券取引所から、2022年度の「株式分布状況調査」が公表されました。この調査では、毎年3月末時点の国内株式市場における株主シェアを集計しています。2022年度は、個人株主の延べ人数が2021年度から8.1%増えました。投資部門別の株式保有金額でも「個人・その他」は前年度より10兆円(+8.3%)増加しました。


海外投資家の保有比率が3年連続3割超


2022年度の株式分布状況調査によると、最も株式保有比率が高い投資部門は外国法人で、30.1%でした【グラフ1】。前年度に比べて0.3ポイント下がりましたが、3年連続で30%を超えています。



ときに海外投資家の売買動向が注目されるのは、このように、株式市場でシェアが高いからです。「海外の投資家が買うから・売るから」というわけではなく、ボリュームの大きな者の売買だからインパクトが強いのです。


過去を振り返ると、保有比率の順位は入れ替わっています。1985年度頃までの株式市場では金融機関による保有が圧倒的。次は事業法人でした。その後2000年度頃までは、生・損保を含む金融機関が全体の約4割を保有し、事業法人は1990年度に約3割のシェアでした。


時代が変わり持ち合い解消が進む中で、金融機関や事業法人のシェアは低下、代わりに台頭したのが外国法人、いわゆる「海外投資家」が、価値の下がった日本株を買い集めたのです。


投信の保有比率がじわり上昇


海外投資家の動向に左右される状況は続いているものの、2022年度の調査結果で注目したいのは、個人投資家と投資信託です。この2つの保有比率の推移を【グラフ2】に示しました。



個人投資家の保有比率は17.6%、投資信託は9.6%と、どちらも海外投資家に比べれば半分や3分の1といった規模です。ところが、全投資部門で前年度から13.9兆円増加したうち、10兆円が「個人・その他」の増加分。保有比率は1.0ポイント増えています。


また、投資信託の保有比率は、直近10年ほどで倍増しています。この統計は、国内4市場(東京、名古屋、福岡、札幌の各証券取引所)の上場会社(調査対象会社数:3,927社)の株主についての集計です。つまり、最近ブームの米国株をはじめとした海外市場に上場する株式は対象外です。


にもかかわらず、投信のシェアがじわじわと上昇しています。2020年度までは、日本銀行によるETF(上場投資信託)購入の影響があったと想像されます。2021年3月にETF購入の政策が見直された後も、以前の水準を保っています。


NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)への関心がますます高まる中で、これらが投信部門の株式保有比率にどのように影響するのか、注視していきたいところです。


個人株主数が年々増加、今後にも期待


「株式分布状況調査」は、株主の人数も調査しています。2022年度は、個人株主数が9年連続増加しました。前年度に比べ521万人の増加で、7,000万人に届こうかという水準です【グラフ3】。



ただし、この調査は集計の関係上、各上場会社の株主数を単純に合算した「延べ人数」を用いています。例えば、ある個人株主が1人で10銘柄を保有していた場合、個人株主数は10名とカウントします。


近年は、証券取引所の尽力で、1単元が100株に統一されるなど個人投資家が取引しやすい投資環境が整ってきています。2022年度は、多くの銘柄で株式分割が行なわれ、株価水準が引き下がり、個人投資家が買いやすくなりました。さらに、今回の集計期間の翌日である2023年4月1日をもって株式分割を行った銘柄もあります。


2024年からの新しいNISAでは、年間の非課税投資枠が拡大されます。今後も、個人株主数の増加傾向は続くのではないかと思われます。


【出典】『2022年度株式分布状況調査』(東京証券取引所)


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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