日本トップクラス キーエンスの給与はなぜ高いのか

平均給与は433万円 1000万円以上の高所得者は4.6%


6月の日本経済新聞の記事で、日本企業のキーエンスの年収が2100万円を超え、過去最高の水準となったと報じられました。報道を見て、非常に高い給与額に驚かれた人もいるのではないでしょうか。


国税庁が発表している「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、平均給与所得は433万円(前年比0.8%減、3万3000円の減少)となっています。富裕層の一種の目安と言われる年間1000万円以上稼ぐ人は全体でわずか4.6%(男性7.1%、女性1.1%)に過ぎません。1000万円でも十分にすごいですが、2000万円台となるとさらに0.5%(男性0.8%、女性0.2%)にまで限られます。キーエンスの給与額がどれほど高いか、改めてわかりますね。


給与の高い企業のイメージと言われると、一般的には総合商社などが頭に浮かぶと思われます。伊藤忠商事、三菱商事、三井物産など日本を代表する商社は、まさに給与水準も日本トップクラスで、毎年、各メディアが行う給与が高い企業ランキングでの上位の常連ですよね。それに比べるとキーエンスという会社は一般的な認知度はそこまで高くはないかもしれません。主にFAセンサーや検出・計測制御機器の開発・販売をてがけるBtoBの企業であり、一般消費者向けのビジネスを行っていないためかもしれません。しかし、株式市場ではその名を知らない人はいないと言っても過言ではないくらい、超優良企業として知られています。


高い給与水準とその要因

 

 下の表とグラフは同社のここ数年の平均給与などの推移をあらわしたものです。高い給与だったのは2022年3月期だけではなく、2018年3月期、2019年3月期も2000万円超の水準となっています。新型コロナの影響があった2020年3月期、2021年3月期についても高水準の給与を維持していることがわかります。


 

左棒 平均給与(万円) 右折れ線 平均年齢(歳)

同社有価証券よりDZHフィナンシャルリサーチ作成


 なぜここまで高い給与が可能になるのでしょうか。儲かっているから給料が高い、というのはもちろんあります。ですが、同社の場合はその儲け方が非常に効率的なのです。同社のビジネスモデルは顧客の抱えている課題をヒアリングし、それを解決する製品を開発・販売するものです。いわゆるコンサルティングセールスですね。ソリューション提供型とか・付加価値提供型とか、いろいろと言い方はあると思いますが、がセールスと言っても単純にカタログをもって商品を売って回っているわけではなく、企業が求めているものを自ら開発し、それを売るというのがキーエンスの手法なわけです。買う側からすれば、キーエンスが独自に開発するものなので、ほかでは売っていないし、困っていることが解決するということで多少高値でも欲しくなります。これが利益率の高さにつながってきます。




上記表にある同社の業績ならびに営業利益率と従業員1人当たりの売上高を見ると、営業利益率は50%超の水準が当たり前で、社員1人当たり2億円以上を売り上げています。限られた社員で利益率の高い仕事をこなしているため、その分給与に還元されやすい仕組みとなっているのが高給与につながっているようですね。

日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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