豊かさを実感していますか？

皆さんは、「豊か」という言葉から、どのような連想をなさいますか。お金持ち？　便利な物に囲まれた生活？　それとも、幸せに包まれた気持ち？　お金があれば、豊かだといえるのでしょうか。それとも、豊かさとは、精神的な充足感をいうのでしょうか。

“経済的な豊かさ”と“心の豊かさ”を実感していますか

金融広報中央委員会（事務局：日本銀行）では、毎年「家計の金融行動に関する世論調査」〔二人以上世帯〕を集計し、WEBサイト「知るぽると」で公表しています。この調査では、「あなたは、生活感覚として“経済的な豊かさ”と“心の豊かさ”について、どのように実感していますか」と質問しています。

2022年の結果では、“経済的な豊かさ”を少しでも実感しているという人は38.0％（「実感している（3.0％）」「ある程度実感している（35.0％）」）でした。一方、 “心の豊かさ”を少しでも実感している人は55.6％（「実感している（6.4％）」「ある程度実感している（49.2％）」に上っています【グラフ1】。

つまり、“経済的な豊かさ”を実感できていなくても、“心の豊かさ”はいくらかでも実感できている人もいるのです。身の丈に合った生活を送り、前向きに暮らす姿が目に浮かびますね。

“心の豊かさ”を実感する人が減少

ところが時期を隔てて見てみると、受け止め方が少し変わります。あまり楽観視できない状況だと感じます。同じ質問について、データをさかのぼることができる2007年と比較してみました【グラフ2】。

2022年は、【グラフ1】で見てきたように、“心の豊かさ”を少しでも実感している人が55.6％と、過半数を占めていました。しかし2007年は、“心の豊かさ”を感じていた人はもっと多く、62.0％だったのです。“経済的な豊かさ”を実感できていない人（60.6％）より多いことに驚きました。

2022年だけを見て、単純に「お金がなくても豊かだと感じられて、いいね」というものではなさそうです。 “心の豊かさ”を実感していない人は、20007年の35.4％から9ポイント上昇しました。

“経済的な豊かさ”の格差がほとんど埋まっていない状況下で、人々が“心の豊かさ”さえも感じられなくなっている点が気がかりです。

“心の豊かさ”と“経済的な豊かさ”の関係

“心の豊かさ”は、何をもって感じることができるのでしょうか。“心の豊かさ”を実感する条件について、実感している/いない世帯に分けて見てみましょう【グラフ3】。

“心の豊かさ”を実感していない世帯が、豊かさを感じる条件として上位に挙げたのは、「経済的な豊かさ」「健康」「時間的な余裕」です。“心の豊かさ”を実感している世帯では「健康」が最も多くなっています。

両者の違いとして興味深いのは、“心の豊かさ”を実感している世帯は、条件に「家族とのきずな」「趣味の充実」を比較的多く挙げている点です。“心の豊かさ”が感じられる人は、ベースにある経済的な安定をあまり意識していないのかもしれません。

これらの結果から、“心の豊かさ”が感じられない人は、感じられる人に比べて“経済的な豊かさ”を重視していると推測できます。まずは経済的な不安をなくすことが先決だといえるでしょう。では、どうしたら“経済的な豊かさ”が感じられるのでしょうか。

「“経済的な豊かさ”を実感するためには、何が大切だと思うか」という設問では、「ある程度の額の金融資産の保有（54.9％）」「ある程度の額の年収の実現（52.0％）」が上位に挙がりました（2つまでの複数回答、2022年）。おそらく皆さんのご想像通りではないでしょうか。

「国民の幸せ」を測るものさしとして知られる、国際連合の「世界幸福度報告　2023」では、日本は137か国中47位です。前年の54位より上昇したことが、せめてもの救いかもしれません。岸田政権の「新しい資本主義」の実現に期待が高まります。

【出典】

「家計の金融行動に関する世論調査」〔二人以上世帯〕（金融広報中央委員会）

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