日本銀行では、全国の20歳以上の個人4,000人を対象に、年4回、生活意識に関するアンケート調査を行なっています。2025年8月上旬から9月上旬にかけて実施した最新の調査から、人々が経済や生活をどのようにとらえているかをご紹介します。
「生活意識に関するアンケート調査」とは
「生活意識に関するアンケート調査」は、個人を対象に、暮らし向き、物価の動きなどの生活実感や消費行動について尋ね、人々の意識や行動を把握する一種の世論調査です。
例えば、「世の中の景気は良くなっているか」「暮し向きは、ゆとりが出てきたか」「収入や支出は増えているか」「物価は上がっているか」「雇用に不安はないか」などの質問があります。
日銀は、「生活意識に関するアンケート調査」を政策・業務運営の参考にしています。この調査は、投資家にとっても参考になるでしょう。企業業績や株式市場の需給を見る上で、人々の景況感は重要だからです。景気指標と個人の肌感覚との間にずれを感じることは、少なくありません。改めて、消費者が抱いている景況感を確認してみましょう。
景気は「悪い」「悪くなる」という人が多いものの、やや改善
景況感については、「1年前と比べた現在」と「現在から1年後」のどちらも、改善しました。全体の景況感は、「良くなった(良くなる)」と回答した人の割合から「悪くなった(悪くなる)」と回答した人の割合を引いた値である「景況感D.I.」を使って判断されます。プラスであれば「景気が良い」と感じている人が多いことを表し、マイナスであれば「景気が悪い」と感じている人が多いことを表します。
1年前から現在までの景況感D.I.はマイナス58.7で、2025年6月の前回調査から8.3ポイント改善しました。現在から1年後の景況感D.I.はマイナス40.2で、前回調査から3.7ポイントの改善です。
じつは、1年前と比べた現在の景況感D.I.は、現在の調査方法になった2006年6月調査以降、マイナスが19年余り続いています。第二次安倍政権の2012年12月から2018年10月までの約6年もの間は、「いざなみ景気」に次ぐ戦後2番目の長さとされた景気拡大局面でしたが、この期間も人々は景気の良さを実感していませんでした。
なお、1年後の景況感については、直近では2021年12月調査と、その前は2013年3月調査・6月調査で瞬間的にプラスになったことがありました。
収入増で暮らしのゆとりを感じ、物価高がゆとりを無くす
自身の暮らし向きについては、1年前と比べて「ゆとりが出てきた」と回答した割合から「ゆとりがなくなってきた」と回答した割合を引いた「暮らし向きD.I.」が、マイナス51.6で5.6ポイント改善しました。
暮らし向きについて「ゆとりが出てきた」と回答した人の理由は、「給与や事業などの収入が増えたから」が63.3%(複数回答)と最も多く、反対に「ゆとりがなくなってきた」と答えた人は「物価が上がったから」(91.2%)がダントツでした。
「金利が低すぎる」と「適当な水準」が拮抗
金利については、どのように感じているでしょうか。2025年9月調査の回答時期は、2025年8月1日~9月3日。「景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのように考えますか」という質問です。
最も多かったのは「金利が低すぎる」で39.8%。37.4%の「適当な水準である」をやや上回りました。金利の見方についての推移を見ると、「金利が高すぎる」と感じる人が少しずつ増えている様子が伺えます【グラフ1】。

物価が気になるものの、変化の兆しも
世帯の収入と支出の変化について、1年前から現在までと、1年後はどうなるかを尋ねました。
収入については、1年前に比べて増えた人が増加し、減った人が減少して、現在の収入D.I.は改善しました。1年後の収入は「増える」「減る」のどちらも増加し、1年後の収入D.I.は小幅に悪化しました。
一方、支出については、1年前より増えた人が減少して現在の支出D.I.はプラス幅が縮小。1年後の支出は、「増やす」と答えた人が増え、「減らす」と回答した人が減少しました。
1年前に比べて支出額を増やしたもの(3つまでの複数回答)は、食料品(61.8%)、日用品(38.1%)が特に多く、減らしたもの(3つまでの複数回答)は、外食(36.4%)、衣服、履物類(32.4%)、旅行(29.0%)が目立ちました。
今後1年間の支出で特に重視することとしては、約7割の人が「今後の物価の動向」と回答。物価の動向は2022年6月調査で「収入の増減」を抜いてトップになり、以後高水準で推移しています【グラフ2】。

また、今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安いこと」が57.4%(複数回答)で最も多いものの、前回調査の63.1%からは減少。一方、2番目に多い「安全性が高い」(46.4%)、3番目の「信頼性が高い」(45.8%)が前回より増えています。
収入増を背景に、価格一辺倒から変化していくのでしょうか。
【参考サイト】
「生活意識に関するアンケート調査」(日本銀行)



