金融経済教育推進機構(J-FLEC)とは

いまの学校教育では、金融経済に関する授業が取り入れられています。以前からも、小学校から大学まで、それぞれの学齢に応じた内容で、独自に金融の特別授業などに取り組んできた学校もありました。


また、2024年は少額投資非課税制度(NISA)が大幅に改正され、高齢化に伴う将来不安も手伝ってか、あらゆる年代で資産形成に関心が寄せられました。ところが、です。


証券投資教育を受けたことがない人が8割超


日本証券業協会が3年に1度、全国の18歳以上の7,000人に実施している「証券投資に関する全国調査」によると、2024年度は、証券投資教育を「受けていない」と答えた人が83.4%に上りました。前回調査の80.8%より増えているのです。


ただし年代別では、20歳代、30歳代で証券投資教育を受けたという人が増加しました。また、退職年齢前後の60歳代でも増えています【グラフ】。



金融経済教育推進機構(J-FLEC)の誕生


2024年4月、官民一体の出資で、金融経済教育を推進する「金融経済教育推進機構(J-FLEC:Japan Financial Literacy and Education Corporation)」(https://www.j-flec.go.jp/)が設立されました。J-FLECは金融経済教育を提供する組織で、幅広い年代の人が金融の知識を持ち、その知識を適切に使えるようになることを目指します。


金融や経済に関する知識や判断力を、「金融リテラシー」といいます。具体的には、生活設計や家計管理、資産形成、人生のリスクへの備えなどの知識を持ち、適切に使うことができる能力です。


金融リテラシーが高ければ、経済的に自立し、よりよい生活が送れます。お金を計画的に使えれば暮らしは充実しますし、やりたいことを実現しやすくなります。将来の予期せぬ出来事にも備えられます。金融トラブルに遭う可能性も低いでしょう。


従来、金融庁や日本銀行、全国銀行協会、日本証券業協会などは、イベントの主催や講師派遣、小冊子やパンフレットなどの発行を通じて、国民の金融リテラシー向上に努めてきました。しかしこれらの取組みは、各機関がそれぞれのカリキュラムで実施していたため、互いに重複し、効率の悪さも否めませんでした。


そこで、各機関が出資してJ-FLECを設立し、金融経済教育を提供する機関として1つになったのです。J-FLECは、ホームページで「私たちは、金融リテラシーの向上を図るプラットフォーマーとして、時代の移り変わりと個人の多様性に即した金融経済教育を提供し、いまと未来の暮らしをより良くする金融サービスの活用や資産の形成と活用を支援します。」というビジョンを掲げています。


J-FLECの講師派遣(出張授業)


2024年4月に設立されたJ-FLECは、準備期間を経て、8月から講師派遣(出張授業)を行なっています。全国の企業や学校・公民館等に講師を派遣し、金融経済に関する様々なテーマの出張授業を実施しています。


講義時間は45分~120分が目安で、J-FLECの設立に携わった各機関で活動実績のある講師や、J-FLECの基準を満たして認定された講師が派遣されます。対面・オンラインどちらも対応可能です。


内容は金融経済に関するテーマの中から希望に応じて選ぶことができます。受講者の年齢層に応じて、最低限身に付けるべき金融リテラシーが習得できる授業が揃っています。


たとえば小学生なら、おこづかいの使い方、貯め方、お金の流れやトラブルについて。中学生・高校生なら「大人になる前に知っておきたいお金の話」として、収支管理やお金の貯め方のコツ、資産形成と経済活動の関係性、 クレジット・奨学金の仕組みと注意点、金融トラブルの防止などです。


大学生や若手社会人向けには、家計管理や給与明細の見方、「長期・積立・分散」といった資産形成の基本やNISAなどのほか、社会保険と民間保険、クレジット、奨学金、金融トラブルの防止などを学べます。


さらに、受講者の年齢層に応じて、家計管理や各種ローン、民間保険や老後の生活資金設計、税金などについても講義が用意されています。派遣講師は、実施する側が希望する講義テーマに応じて内容等の調整を行ない、要望に合う内容で講義をします。


申込は、J-FLECのホームページに「講師派遣(出張授業)申込フォーム」から行ないます。


「J-FLECはじめてのマネープラン」と認定アドバイザーによる相談


J-FLECでは、家計管理や生活設計、NISAやiDeCoなどの金融経済全般について、個人がそれぞれの状況に応じたアドバイスが受けられる「J-FLECはじめてのマネープラン」を実施しています。


「J-FLECはじめてのマネープラン」には2種類あり、1つは対面またはオンラインで行なわれる個別相談の無料体験です。対面相談の場所は、東京の日本橋にあるJ-FLECの事務所。ライフプランの立て方や、教育資金、住宅ローンの借入方法などについて、最大1時間、相談できます。利用は1人1回です。予約が必要なので、詳しくはJ-FLECのホームページをご覧ください。


もう1つは、家計管理やNISA・iDeCoなどの制度、金融商品・サービスなどについて質問できる電話相談です。最大30分間で事前予約は不要、相談料は無料で電話料金がかかります。こちらも1人1回までの利用です。電話番号や利用の注意点など、詳しくはJ-FLECのホームページをご覧ください。


「J-FLECはじめてのマネープラン」割引クーポン


ほかに、J-FLECでは、3,000名限定で「J-FLECはじめてのマネープラン」割引クーポンの発行を行なっています。


割引クーポンは、J-FLECが認定したアドバイザーが各自提供している有料相談を初めて利用する個人に配られます。この電子クーポンを利用すると、相談料が最大で8割引になります。


相談したい人は、J-FLECホームページ内の「J-FLEC認定アドバイザー検索」から自分の相談内容に合ったJ-FLEC認定アドバイザーを検索します。指定されている連絡先に事前に連絡し、J-FLECにクーポン申請を行なって利用します。


相談料と割引クーポンの計算例や、割引クーポンの利用規約など、詳細はJ-FLECのホームページでご確認ください。


【参考リンク】

●J-FLECホームページ:https://www.j-flec.go.jp/

●J-FLEC講師派遣(出張授業):https://www.j-flec.go.jp/business/lectures/

●「J-FLECはじめてのマネープラン」:https://www.j-flec.go.jp/public/consult/


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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