花火大会 「7割」有料席導入 30万円の席も

花火を見るのも有料に?


夏本番。今年は行動制限もなく4年ぶりに各地で夏祭りや花火大会が開催されています。久しぶりに祭りや花火を堪能したという方も少なくないことでしょう。しかし、長い間、開催が見送られていただけあって、今年はどのお祭りでも特に多くの人でにぎわっていたように感じられます。楽しい反面、体のほうが疲れてしまうこともありますよね。


「もっと疲れず、快適に楽しみたい」というニーズに合わせて、最近は花火大会などで優良席を導入するケースが増えているようです。帝国データバンクが8月4日に公表した調査によると、全国の主要な106の花火大会(動員客数が10万人以上(平年)の106大会が対象。有料席の範囲は「個人席」「グループ席」)のうち、なんと約7割が有料席を導入しているもようです。


なおかつ、コロナ前から有料席を導入している72大会のうち61大会で値上げが実施されたもようです。実に85%の大会で有料席が値上げされたことになります。価格帯としては、有料席の「最安値」平均価格では、コロナ前の2019年に3676円だったのが、同4768円と約3割の値上がり。一方、最も高額な有料席の価格「最高値」の平均では、3万2791円と3万円を突破し、2019年の2万1609円から約5割上昇しました。


もちろん、ただ値上げされただけでなく、コロナ前に比べ、「各花火大会で最前席や区画当たりの面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、多様な種類の観覧席が導入され、プレミアム化が進んでいる」(帝国データバンク調べ)とのことです。


ちなみに最も高額な有料席は「小田原酒匂川花火大会」(神奈川県)で販売された「Sタイプ/ベット席」の30万円(大人2名)でした。ちなみに5組限定の発売で完売したとのことです。


こうした無料イベント、特に花火大会の「一部有料化」には、輸入花火や運営コストの増加があるようです。帝国データバンクの調査では、2023年1-6月の打ち上げ花火の輸入価格は、過去15年の平均価格より、なんと5割も高い1キログラムあたり1700円となったようです。ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、原料となる火薬類が大幅に値上がりした2022年の同2200円よりは低下したものの、依然として高止まりが続いています。


また、観覧客の安全確保や違法駐車の監視、安全対策や大会後の清掃、仮設トイレといった設備費など、円滑な運営に必要なコストも人手不足や物価高で増加しています。こうしたコストアップが各花火大会の運営費を圧迫していることも、新たな収益源としての「有料席」導入や価格の引き上げにつながる要因となっていると同調査では指摘されています。


花火大会の多くは必要な予算を企業の協賛金などで賄っていると思われますが、なかには実施に必要な資金を確保できなかったとして、今年の開催を見送ったケースもあり、費用増は深刻です。


加えて、こうした費用面だけでなく、警備面でもメリットがあり、観覧者の位置や人数を事前に把握しやすいといったことも、有料席の導入や拡充が相次ぐ要因となっているようです。


昨年からさまざまな「モノ」が相次いで値上げされており、今なおこうした動きは続いています。花火大会の有料化はこうした値上げの波が「サービス」へと波及しており、テーマパークやイベントなどコト消費においても「有料化」や「高額化」の動きが急速に広がりつつあることの証左と言えるかもしれませんね。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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