「預金から投資へ」「預金から資産形成へ」と、個人投資家のすそ野は広がってきました。しかし投資家といえども、すべての資産を投資に回しているわけではないでしょう。また、いまだに投資を敬遠する人も多い状況です。銀行などでは、そのようなニーズに応じて、通常より高めの金利でキャンペーン預金を提供する場合があります。
2023年8月時点の一般的な金利
執筆時点の2023年8月下旬、メガバンクや地方銀行、信用金庫などの店舗における定期預金の金利は、金額の多寡、期間にかかわらず、ほとんどが年利0.002%(税引前)です。100万円を1年間預けても、利息は20円。利息から税金を引くと、手取り額は16円弱です。
通常、銀行や信用金庫などの預貯金は、店舗での取り扱いよりインターネットやアプリの方が高金利です。これは、オンラインなら人件費など店舗の経費などがかからず、低コストで運営できるからです。同じ金融機関でリアル店舗とインターネットバンキングの両方がある場合は、リアル店舗の支店扱いよりもインターネットバンク支店の方が高金利になっているのが通常です。
2023年8月、インターネットバンクの中でトップクラスの高金利を出している銀行では、1年物定期預金で年0.3%前後です。しかし、それもキャンペーン金利の適用や預入金額が100万円以上などの条件下で、ほんの一握り。0.1%程度でも比較的高めの金利といえます。0.3%ならリアル店舗の150倍。0.1%なら50倍で、100万円を1年間預けて手取り利息は800円弱です。
高金利定期預金の注意点
高い金利が提示されるとつい飛びつきそうになりますが、注意点があります。定期預金の金利が他の金融機関より高いとしても、普通預金は逆に低い場合もあります。また、送金料やATM取扱手数料が高めのケースもあります。
頻繁に出し入れする預金は、金利よりもATMの利便性を重視する方が現実的。商品やサービスの購入代金の決済に使っている預金なら、金利より送金手数料を優先して選択した方が良いでしょう。
また、仕組み預金や投資信託とセットで申し込むと預金金利が高くなるというキャンペーンは、よく見かけます。仕組み預金は、カラクリが分からない人には危険な商品です。投資信託はリスクや手数料に注意をする必要があります。このように、高金利と引き換えになっている条件に気をつけましょう。
ほかにも「退職金キャンペーン」「年金受取口座指定プラン」といったリタイア世代をターゲットにしたキャンペーンで、極端に高い金利を提示するケースがあります。
高金利のキャンペーンは、多くのケースで1年に満たない期間に限定されています。預貯金の金利は年利で表示されていますので、利息の受取金額は、預入期間に応じて日割り計算をする必要があります。さらに、期間満了後は自動継続で通常の定期預金になる設定がほとんど。例えば、キャンペーン金利の適用期間が3ヵ月なら、キャンペーン終了後は通常の定期預金に自動継続され、通常の金利になる、というものです。
キャンペーン預金の利息計算
では、キャンペーン金利の事例を使って、利息の受取金額を計算してみましょう。退職日や退職金の受取日などから一定期間以内の人などに限定されたキャンペーンを例にします。3ヵ月定期預金金利が年1.00%だとすると、金利の計算は、【図表1】のようになります。
年1.00%は非常に高い金利で、条件を満たした人なら飛びつきそうです。しかし、このようなキャンペーンは、終了後は通常の定期預金へ自動継続されるのが一般的。3カ月なんて意外とあっという間です。「キャンペーンが終わってすぐに預金を下ろしてしまうのも気が引けるので、そのまま自動継続にしておこう」という方は少なくないでしょう。
では、通常の金利が0.05%と仮定して(これでも比較的高めです)、キャンペーン終了後に3ヵ月定期の自動継続になった場合の利息の計算をしてみましょう。
キャンペーン金利適用中の3ヵ月は、手取りの利息額は約19,867円でした。しかし次の3ヵ月は、【図表2】の通り約993円です。
キャンペーンで「年利1%」と大きく記載されていると、1,000万円の1%である10万円の利息が受け取れると勘違いしてしまいがちです。しかし、キャンペーン金利の適用は3ヵ月で、利息は日割り計算です。さらに、利息の20.315%が課税されます。
仮に、キャンペーン後も自動継続をし、都合1年間、この金融機関に預けていた場合の手取り利息は、「19,867円+993円×3回=22,846円」となります。
このように、キャンペーン金利などは注意が必要です。キャンペーン期間にいくらの利息が受け取れるのか、預け入れた金額に対して具体的に計算をし、判断するようにしましょう。