iDeCoの手数料をわかりやすく解説します

iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)の加入者が、2023年7月末時点で300万人を突破したと報じられました。iDeCoは2017年1月に加入者の範囲が拡大して以来、毎年2~3割の加入者増というペースが続いています。


iDeCoは税制優遇のメリットが全面的にクローズアップされますが、マイナス面として、手数料に関する知識も大切です。iDeCoにはどのような目的の手数料がかかり、具体的にいくらなのか、簡単に解説しましょう。


金融商品やiDeCoの手数料


金融商品には、さまざまな手数料がかかります。


投資信託の場合は、銀行や証券会社などに販売手数料を支払い、保有中には運用資産から運用管理費用(信託報酬)が差し引かれます。


預貯金の場合は、経費にあたる金額相当分が差し引かれて金利が設定されています。生命保険や個人年金も同様で、保険会社がこれらの運用資金からコストを引いて保険金や給付金が支払われるよう、予定利率が設定されています。


では、iDeCoにかかる手数料にはどのようなものがあるのでしょうか。


iDeCoには、いくつかの機関がかかわっています。まずは取扱窓口になっている「運営管理機関」。銀行や信用金庫、証券会社、保険会社などです。一般的な金融機関が窓口となっていますが、通常の預貯金や証券口座、保険契約などとは別に、iDeCo専用口座を開設します。また、iDeCoという制度を実施している機関として、国民年金基金連合会があります。さらにその先に、加入者の資産を保管する信託銀行も関与しています。


iDeCoにかかる手数料としては、窓口の「運営管理機関」と実施主体の「国民年金基金連合会」、さらに資産管理の「信託銀行」に支払うものが主になっています。さらに細かいことを言えば、iDeCoの加入者が選んだ金融商品それぞれにもコストがかかります。これらは、先に述べた投資信託の運用管理費用(信託報酬)や、預貯金・保険に内在するコストのことです。


iDeCoの手数料をさらに詳しく


次は、iDeCoの手数料がどのような場面でかかるのか、解説しましょう。手数料の全体像は【表1】のようになっています。



それでは、以下で詳しく見ていきましょう。


iDeCoに新規加入する場合や、企業型確定拠出年金から個人型(iDeCo)に移換するとき


国民年金基金連合会に対して、初回のみ、「加入時・移換時手数料」が2,829円かかります。

● 初めて確定拠出年金に加入する人は、初回の掛金から差し引かれます。

● 企業型確定拠出年金から移換され、加入を続ける人は、個人別管理資産から差し引かれます。

● 企業型確定拠出年金から個人別管理資産を移して運用指図者となる人は、移換された個人別管理資産から差し引かれます。


いずれの場合も、国民年金基金連合会に対して支払う手数料なので、どの運営管理機関を選んでも一律2,829円です。また、資産額に関わらず同額です。


加入者が掛金を拠出する都度、かかる手数料は3種類


確定拠出年金では、掛金を払うことを「拠出」といいます。「加入者」は、掛金を拠出している人で、拠出の都度、かかる手数料は3種類です【表2】。



ここでよく話題に上るのが、「運営管理手数料」です。運営管理機関によって金額が異なるため、マネー情報サイトなどで無料の運営管理機関の一覧が掲載されています。また、手数料を無料化する傾向や、無料化の条件を撤廃する傾向が続いており、話題に事欠きません。


運用指図者に係る手数料:資産管理手数料と運営管理手数料


運用指図者とは、新たな資金での掛金拠出を行わず、積み立てた年金資産を運用している人です。例えば、企業型確定拠出年金の加入者が会社を退職して年金資産をiDeCoに移管し、新たな掛金を支払わずに運用を続けている人などです。


運用指図者は、上記【表1】の「資産管理手数料」(年間792円)と「運営管理手数料」(金融機関ごとに異なる)がかかります。年金資産として保有する金融商品の一部を、毎年1回売却して手数料に充当されるしくみです。


将来、給付を受けるときの手数料


将来、iDeCoの給付金を受け取る際には、信託銀行が給付に係る事務手数料として、「給付事務手数料」を差し引きます。老齢給付金や障害給付金を受け取る都度、1回につき440円です。


なお、給付金の受け取り方法は、一時金(全額を一括で受け取る)または年金(分割で受け取る)、これらの併用を選択できるケース、の3パターン。給付事務手数料は、給付の都度、毎回差し引かれます。年金で受け取ると負担が大きくなるのでご注意下さい。


また、給付金の送金手数料を差し引く運営管理機関もあるようです。


給付時まで長い年数がある人は、それまでに金融機関の規定が変わる可能性もあるでしょうから、最新情報を入手するようにしてください。


うっかりに注意「還付事務手数料」


気をつけたいのは「還付事務手数料」です。稀なケースかとは思いますが、国民年金保険料の未納などの場合です。


その月はiDeCoの掛金を拠出できませんが、自動引き落としされてしまうことなどもあるでしょう。その掛金を加入者に返す必要が生じた場合、手数料として、国民年金基金連合会が還付金から1,048円を差し引きます。


掛金を拠出できないうえに還付金が取られてしまう、なんてことにならないよう、国民年金保険料の未納には気をつけなければなりません。


以上、iDeCoにかかる手数料について解説しました。iDeCoの運営管理機関を選ぶ際には、手数料だけにとらわれず、運用対象の金融商品のラインナップを見て、運用したいと思う品ぞろえの運営管理機関を選択するようにしましょう。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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