「NISAの金融機関、どう選んだらいいの?」

これからNISA(少額投資非課税制度)を始めるという方から、「金融機関はどこが良いですか?」「どのような選び方をしたら良いですか?」と聞かれます。答える前に、私は聞き返します。


「あなたは、どんな運用をしたいのですか?」


株式、ETF、REIT、外国株は証券会社のみ


投資に対する向き合い方や考え方は、人それぞれです。お食事や洋服の好みが一人ひとり違うように、資産作りの方法も各自の考えによります。適した金融機関についても、その人が何を重視し、どのような考えなのかによって異なります。


まずは、あなたがNISA口座を使ってどのような資産形成・資産運用をしたいのかを考えてみましょう。それは、あなたの方針に合ったNISAの使い方が実現できる金融機関を選ぶためです。


たとえば、株式投資をするなら、証券会社でNISA口座を作らなければなりません。銀行や信用金庫などでは上場株式の売買を取り扱っていないからです。ETF(上場投資信託)、J-REIT(上場不動産投資信託)、外国市場上場株式も同様です。


2023年までの一般NISAとつみたてNISAについて、金融商品と金融機関の取扱いの関係を表にまとめました。



つみたてNISAは金融機関によって取扱銘柄数に大きな差


つみたてNISAで株式投信を積み立てる場合、(表)のとおり、どこの金融機関でも扱っています。しかし、つみたてNISAの金融機関選びは難しいと思っています。


つみたてNISAは、対象の投信が決まっており、現在は228銘柄です。各金融機関はその中から取り扱う投信を決めます。取扱い銘柄数は、金融機関によって大きく差があります。10銘柄程度しか扱っていない金融機関もあれば、200銘柄程度のほぼすべてを取り扱う金融機関もあります。


つみたてNISAを検討する入り口は、大きく分けて2つあります。


1つは、先に金融機関を選び、その窓口で取り扱っている投信でつみたてNISAをするパターンです。もう1つは、積み立てたい投信を決めて、それを取り扱う金融機関を選ぶパターンです。


前者は、取引したい金融機関が決まっている人。普通預金や証券総合口座内のMRFなどとの間で出し入れがスムーズ、使い慣れている、ポイント還元や振込手数料無料などの他のサービスも考慮している、といった理由で金融機関を決めるケースが多いようです。ただし、その金融機関で取り扱うつみたてNISAの対象商品が、必ずしも希望に沿う品ぞろえでない可能性もあります。


後者は、購入したい投信が決まっている人。運用の良さや投資方針への共感、低コストなどを理由に、「この投信を積み立てたい」と考えてつみたてNISAを始める人です。投信の詳しい説明が書かれている「目論見書」には、その投信を取り扱っている金融機関名が記されています。目的の投信を取り扱っている金融機関でつみたてNISAの口座を開きましょう。


前者が良いか、後者が良いかはお好みで。ご自身の考えや経験などで、どちらの入り口から入っても良いと思います。


低コストにこだわるなら、ネット専業


NISAに限らず、金融機関選びの判断には、リアル店舗かインターネットか、という問題があります。一般的に、インターネット専業の金融機関で取引をした方が、購入時の手数料や保有期間中にかかる運用管理費用(信託報酬)を低く抑えることができます。


それは銀行や信金などでも、証券会社でも同様です。さらに株式やETFなどの売買もしたいなら、それらの売買手数料も考慮して証券会社を選ぶと良いでしょう。


しかし、ネットを使ってお金の管理をするのは心配、という方もいらっしゃいます。また、金融機関の窓口で説明を聞いたり質問をしたりしながらの取引に安心感を抱く方もいらっしゃいます。


筆者は、必ずしもすべての人に低コストが適しているとは考えていません。「窓口の対応で、手数料を支払うだけのサービスを受ける」というスタンスで、わからないことを納得するまで理解してから投資をする姿勢は、大切だと思っています。


2024年からの新しいNISAを見据えた金融機関選び


NISA口座は、1年単位です。同じ年に複数の金融機関でNISAはできませんが、年を替えれば別の金融機関でNISA口座を開設できます。前年分の買付はA証券会社のNISA口座で、本年分はB銀行のNISA口座で、来年分はC信金のNISA口座で買うことは可能です。各年にNISAで購入した金融商品は、非課税期間が終了するまで、それぞれの金融機関に置いておくことができます。


ただし、上記のように毎年金融機関を変更するためには、毎年NISA口座の変更手続きを踏まなければなりません。管理も複雑になりますので、あまり現実的ではないでしょう。


2024年からは、NISAの制度が大きく変わります。2023年までの一般NISAやつみたてNISAを利用している人は、それぞれの非課税期間終了まで、現在のNISAのルールの下で、現在の金融機関に置いておけます。


とはいえ、2024年からは非課税枠が広がります。また、現在の一般NISAとほぼ同じような「成長投資枠」と、つみたてNISAと同様の「積立投資枠」の両方が使えます。


それによって、これまでつみたてNISAを利用していた人でも、成長投資枠を使って非課税で株式投資ができるようになります。とすると、2024年からの新しいNISAは証券会社で開設した方が幅は広がります。


金融庁によると、2024年のNISA口座は2023年10月以降に開設手続きを始められるとのこと。2023年まで一般NISAかつみたてNISAを利用している人は、同じ金融機関で新しいNISA口座が開設されます。


もし2024年からは別の金融機関で新しいNISAをしたいなら、今年の10月以降にNISA口座の変更手続きをする必要があります。新しいNISAのスタートは、改めて金融機関を見直す機会かもしれません。それまでの間に、新しいNISAをどのように活用したいのかなどの考えをまとめておきましょう。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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