10月1日からインボイス制度開始
10月1日よりインボイス制度が開始されます。「適格請求書等保存方式」の通称となり、モノやサービスの売り手は請求書に事業者の登録番号や税率ごとに区分した税額を記載することが求められます。
売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額を伝えるために発行します。
消費税が2019年に10%と軽減税率の8%と複数税率となり、納税額の計算が複雑になったことが制度導入の背景にあります。
メリットは税額が明確化される
企業側にとっては、税額が分かりやすくなることに加え、取引先と価格転嫁の交渉がしやすくなるメリットがあります。
一方、仕入れ先からインボイスを受け取らないと税額控除ができなくなるデメリットがあります。
年間売上高1000万円の以下の免税事業者はインボイスを発行できません。
そのため制度が開始されたあと、消費税を控除できなくなることを恐れ、免税事業者は販売先から取引の停止や取引価格の引き下げを求められる可能性が懸念されます。
免税事業者の経営に悪影響が出る可能性あり
実際、東京商工リサーチは9月13日、10月に始まるインボイス(適格請求書)制度について中部企業を対象に実施したアンケート調査の結果を発表しました。
アンケート結果では、インボイス登録をしない免税事業者と「取引をしない」と回答した割合は9.2%となり、「取引価格を引き下げる」と回答した割合は2.9%となりました。
免税事業者との取引に後ろ向きな企業が12%程度にのぼり、制度が導入されてから免税事業者の経営に悪影響が出る可能性が十分にあります。
財務省によると8月末時点で460万程度の免税事業者のうち、インボイス制度に登録を申請したのは103万程度にとどまっています。
課税事業者に登録をすると税負担が増えることから、登録すべきか迷っている免税事業者が多いのが現状のようです。
免税事業者から課税事業者への転換を図るため、中小企業庁は免税事業者を対象に無料で税理士相談の受付を行うなど対応を行っていますが、免税事業者の不安払拭や制度の周知など、さらに取り組みを強化する必要がありそうです。
インボイス制度関連銘柄に注目
インボイス制度関連銘柄に関して、いくつか以下に記載します。
オービックビジネスコンサルタント(4733)はインボイス制度に対応したクラウド会計システム「勘定奉行クラウド」を発売し、クラウドの売上げが増加しています。
ラクス(3923)は電子請求書発行システム「楽楽明細」や経費精算システム「楽楽精算」でインボイス制度に対応しています。俳優の滝藤賢一氏を起用したテレビCMの効果などから、受注の伸びが期待されます。
TKC(9746)はインボイス制度に対応した財務会計システム「FXクラウドシリーズ」を今年6月に発売し、新規に利用する企業が増加しています。
またROBOT PAYMENT(4374)では、請求業務を自動化するクラウドサービスを提供しており、インボイス制度の開始を前に請求・債権管理クラウド「請求管理ロボ」のアカウント数が大幅に増加しています。
さらに2024年1月から、改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)が完全施行となり、電子取引に係る請求書・領収書・契約書・見積所などの紙保存が認められなくなります。
インボイス制度の開始、電帳法の完全施行に伴い、今後こうした制度に対応した製品への需要が高まり、経理業務のデジタル化が一段と進展するとみられます。