7月の上昇・下落株ランキング

7月に市場で注目を集めた銘柄


8月がスタートしましたが、今回は7月の株式市場で値上がりした銘柄、値下がりした銘柄について、その値動きや材料をおさらいしていきましょう。以下は東証プライム市場に上場している企業の7月最終日(7月29日)と6月29日時点の終値を比較した値上がり・値下がり銘柄のランキング(DZHフィナンシャルリサーチ作成)です。



まず、上昇率トップとなったのがオーバル。オーバルについては、一般的な知名度は高いとは言えませんが、7月の株式市場では大いに話題となった企業です。上昇の理由はAnton Paar社による買収期待。Anton Paar社は研究および産業用に高品質な物性測定および分析機器を製造している企業で、同社に対し経営権の取得を前提とした事業提携を提案するとともに、同社株式を買い集めていました。それに対し、オーバル側が買収防衛策の導入などを示唆したことで敵対的株式公開買い付け(TOB)への発展などが意識され、株価が急騰。上記期間では値上がり率78%となっていますが、今年一番高いところと安いところの比較では、4倍近くまで上昇する場面もありました。Anton Paar社側から、オーバル社の同意なしに株式を買い進めることはしないとの意向が示されたことで期待が剥落し、そのあとは逆に売られることになりましたが、7月相場を大いに盛り上げました。


2位のSansanは、株式市場では、いわゆるグロース銘柄と言われる位置付けの企業です。グロース銘柄とは、今の企業規模は決して大きいとは言えなくとも、売上高などが非常に高水準のペースで成長しているような銘柄を指します。同社はそのグロース銘柄のなかでも代表格と言えます。しかし、このグロース銘柄は今年は大苦戦しています。ロシアのウクライナへの侵攻などを受けて、原油や食料など、世界中の資源・素材などが高騰。インフレが意識されたことで、資源などを取り扱う企業の株が買われ、グロース銘柄は反対に売られたことで、今年のパフォーマンスはかなり悪いものでした。ただし、株式市場ではパフォーマンスが悪かった株ほど、買い直されるときの上昇幅も大きいという傾向があります。7月はグロース市場という新興市場の上昇が目立っていました。同様にプライム市場においても、グロース企業のSansanの株式が買われる流れとなりました。





反対に下落した銘柄にはどのようなものがあったのでしょうか。下落率トップとなったのはKlabで19%の下落となりました。Klabの株式はスマホ向けゲーム「東方アルカディアレコード」のリリース期待から6月に大きく上昇していました。しかし、7月に入り、新株予約権の発行を発表したことが嫌気され、一転売りが優勢の展開となりました。新株予約権については、また別の機会に詳しく取り上げたいと思いますが、大まかにいうと企業側が新しく株を取得する権利を売ることで資金を調達することができる一方、権利行使時に株主が増えることで1株当たりの価値が希薄化するイメージです。そのため、7月は大きく売られる展開となりました。


下落率3位にはアパレル企業のユナイテッドアローズがランクインしました。ユナイテッドアローズに限らず、アパレル各社の多くは、今2022年度に入り、コロナ影響から回復しつつあったことで株価は上昇基調にありました。もちろんユナイテッドアローズも5月ごろにかけて株価が堅調に推移していましたが、足もとで再びコロナ感染者が増加してきてしまったこともあり、先行きを懸念した売りが優勢に。7月は大きく売られることになりました。


今回株価ランキングを取り上げましたが、7月の上昇銘柄については6月以前の下落銘柄にランクインしていたものもありますし、逆に7月の下落銘柄については6月以前に大きく上昇していた銘柄もあります。一方的に上がり続ける、もしくは下がり続ける銘柄というのはほとんどありません。上昇・下落ランキングを確認し、8月以降、これから動く銘柄を予想してみるのもおもしろいですよ。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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