気になるテーマ解説

持ち合い解消の流れが一段と加速

これまでにも政策保有株式の解消に関する記事を挙げてきましたが、最近はその流れがいっそう強まっています。毎日何かしらの売り出しが発表される週もありましたので、顔ぶれはどのようなものか見ていきたいと思います。


最近の売り出し発表

政策保有株式についてのおさらいですが、とある企業が業務上の関係で他社の株式を保有していることを指します。株を保有するとその会社に対して発言権を持つことができますので、お互いがウィンウィンになるような経営方針、他社からの買収阻止など色々なメリットがあります。


ただ、昨今のグローバル化に伴って、政策保有(保ち合い)は時代遅れの慣習とみなされることが多くなりました。経営腐敗や効率悪化などを招く可能性もあるため、現在において日本企業は政策保有株式を解消する方向で動いています。


そのような中で、2024年秋以降は株式の売り出しが活発化しています。試しに9月ごろから直近までの発表事例を並べてみると以下のようになりました。公募増資や、市場変更のため、オーナーの売り出しなど、政策保有株式の解消をメインとしない売り出しは除いています。


※DZHフィナンシャルグループリサーチ作成 2024年12月10日時点


上の表を見てみると、東証プライムの大手企業が中心であることが分かります。日産自動車のディーラーである日産東京販売ホールディングスのみ東証スタンダードですが、大株主には損保各社が名を連ねていました。


このごろ、大手損保各社が2030年3月から31年3月にかけて政策保有株の残高をゼロにする目標を掲げたと伝わっています。上の表にある企業の開示資料を見てみると銀行、損保による売り出しがほとんどであり、政策保有株縮減の取り組みがすでに始まっていることが分かります。


今後の展開は?

損保をはじめとした大株主の保有数量を見ると、一気にすべてを売り出しているわけではないケースが少なくありません。すべてを一度にすべて処分してしまうとマーケットへの影響が大きくなりかねないため、それに配慮して段階的に売り出しを行うとみられます。


とはいっても、売り出しが行われると市場に出回る株式数が増えます。需給が悪くなるとの懸念から、条件反射的に株価が大きく売られがち。すぐに株価が回復する場合もあれば、そのまま下がっていくケースもしばしばです。自分が持っている銘柄の売り出しが発表されると、株価下落によって気分もよくありません。


売り出しを発表した後の会社なら買いやすい気もしますが、上述の通り段階的に売り出しが行われるとみられます。近い将来、同じ会社から再度売り出しが発表される可能性も十分にあり得ますので、売り出しが1度行われたから今後は心配ない!と思ってしまうと危険です。


政策保有株式を解消する流れは今後も続きますので、こればかりは避けて通ることができません。大株主に金融機関が多くある場合、いずれは売り出しが発表されるかもしれないと認識しておくことが大切です。


政策保有株式が解消されると、資本的な意味で守られていた立ち位置から外れることとなります。株価が低迷すれば他社に買収される可能性もあるため、経営陣はより業績と株価を意識した運営を行う必要があります。


既存株主にとって、売り出しの発表は短期的に見ると嬉しい話ではありません。ただ、業績が拡大し、株価が上昇する。儲けた分を積極的に株主へ還元してくれるといったサイクルが実現すれば、売り出しで下げた以上の利益が期待できます。長期的に見れば株主のためになりますので、売り出しが行われた後にどのような展開を見せるのか要注目です。


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日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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