住宅ローン金利の上昇が続いています。メガバンクと言われる三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行は、9月29日、10月から固定型の住宅ローン金利を引き上げると発表しました。
三菱UFJ銀行では、0.06%幅引き上げの3.72%(最優遇金利は0.94%)、三井住友銀行は同0.05%幅引き上げの3.79%(同1.14%)、みずほ銀行は0.10%幅引き上げの3.55%(同1.45%)となっています。
一般にこうした引き上げについては、各行横並びで、どこの銀行でも差はないのでは、というイメージがあると思いますが、実際には一番上げ幅の大きかったみずほと、小さかった三井住友では、倍の開きがあります(修正後の金利は三井住友の方が高いわけですが)。
この住宅ローン金利上昇の背景には、日銀の金融緩和策の修正が影響しています。日銀は7月の28日の金融政策決定会合で、大規模緩和策の柱としてきた「イールドカーブ・コントロール(YCC)」について運用の柔軟化を決めました。これは、長期金利の上限は「0.5%程度」としていますが、事実上は1.0%程度までの上昇を認めるとも受け止められる内容でした。
日銀のYCCに関する政策は複雑でわかりにくい面も多いため、正確さよりもわかりやすさを重視して簡潔に説明すると、それまで0.5%以上の上昇は認めないとしていた長期金利について、0.5%くらいから1.0%の間であればOKという方針に変更した、と市場は受け止めたということです。
これを受けて、長期金利は上昇。連動する住宅ローン金利についても、前述したように上昇傾向にあり、3行そろっての引き上げは、これで3か月連続となりました。また、長期固定型の住宅ローン「フラット35」の金利も引き上げられています。
住宅ローン金利が上昇すると、家を買うときの負担が増えるわけですから、気になる方も多いのではないでしょうか。では、住宅そのものの価格はどうなっているのでしょうか。
不動産経済研究所発表数値よりDZHFR作成(単位 万円)
不動産経済研究所が9月20日に発表した2023年8月の首都圏 新築分譲マンション市場動向によれば、平均価格は7195万円となり、前年同月比では1093万円(17.9%)の上昇となりました。1平方メートル当たりの価格は114.9万円となり、こちらも同18.6万円(19.3%)の上昇。ともに前年同月比では6カ月連続の上昇となっています。
ちなみに2023年3月の価格が突出して高くなっているのは、同月に「三田ガーデンヒルズ」の第1期販売が開始されたためです。同月の平均発売価格は1億4360万円で、単月では初めて1億円を突破。過去最高を記録しました。
同研究所によれば、このときの三田ガーデンヒルズの販売価格は平均価格で4億円台となっており、にも関わらず、即完売したとのこと。
また、7月もわずかに1億円には届かなかったものの、9940万円と高額になっており、こちらは東京オリンピック選手村の跡地を再開発した「晴海フラッグ」の第1期販売があったことが影響しています。ちなみに、こちらも即完売。
こうした特殊な要因もありますが、総じてマンション価格は上昇傾向にあります。特に2023年は上昇幅が大きいようです。
一つには足もとで進んでいる為替の円安が影響していると考えられます。外国人にとって円安が進むほど日本の不動産は割安になるため、円で見た場合に値上がりしていても、安く感じられるという面があるのでしょう。
もう一つはインフレです。欧州や米国でも、このインフレが大きな問題となりましたが、日本も消費者物価指数は3%超が当たり前の水準となっており、物価の上昇が問題とされる場面が増えています。
一般には金利の上昇は住宅価格を抑える方向に働く、と説明されますが、上記のような要因があるため、今後もマンション価格の上昇は続くかもしれません。その時は、ローン負担が増え、かつ価格も上昇を続けることになるため、マンション取得が遠のいてしまうと感じてしまう人も増えるかもしれません。
普段はあまり、為替や金利のことは気にすることは少ないかもしれませんが、実は私たちの生活と結びついているものでもあります。ぜひ、チェックしてみましょう。