「理論株価の基本を知ろう」

理論株価とは

理論株価とは、財務指標や業績予測などから計算された理論上の株価です。今回はもっとも簡単な理論株価の計算方法をみていきます。簡単といっても基本となる重要なものといえます。



PER×予想EPS




この計算方法は理論株価の最も簡単なものですが、実際にこの理論株価の計算方法で目標株価を設定している証券会社もあります。

PER20倍、予想EPS150円だとすれば


PER 20倍×EPS150円=理論株価3000円


と計算することができます。


この算出方法で重要なことは予想EPSをいくらにするかと、PERを何倍にするかです。予想EPSについては、会社予想のEPSやアナリスト予想のEPSなどを参考にすることが多いです。PERについては、業種平均のPERやその銘柄の過去のPERなどを参考にすることが多いといえます。


業種平均のPERは、東京証券取引所の開示している規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧で確認することができます。今回は建設業の3社の理論株価を算出し、比較してみたいと思います。



大成建設 (1801):株価5022円(2023年10月18日終値)

同社の24.3期の会社予想のEPSは241.03円、アナリスト予想(コンセンサス)のEPSは247.54円です(2023年10月19日時点)。この予想EPSに建設業の平均PER15.0倍を乗じると、以下のように理論株価が計算できます。


会社予想EPS 241.03円×建設業の平均PER15.0倍=3615.5円

アナリスト予想EPS 247.54円×建設業の平均PER15.0倍=3713.1円


10月18日時点での大成建設の株価は5022円ですので、計算した理論株価を大きく上回っています。



大林組 (1802):株価1296.0円(2023年10月18日終値)

同社の24.3期の会社予想のEPSは76.72円、アナリスト予想(コンセンサス)のEPSは85.31円です(2023年10月19日時点)。この予想EPSに建設業の平均PER15.0倍(東証開示:2023年9月末現在単純PER)を乗じると、以下のように理論株価が計算できます。


会社予想EPS 76.72円×建設業の平均PER15.0倍=1150.8円

アナリスト予想EPS85.31円×建設業の平均PER15.0倍=1279.7円


10月18日時点での大林組の株価は1296.0円ですので、計算した理論株価とほぼ同水準といえます。



鹿島建設 (1812):株価2430.5円(2023年10月18日終値)

同社の24.3期の会社予想のEPSは217.94円、アナリスト予想(コンセンサス)のEPSは233.90円です(2023年10月19日時点)。この予想EPSに建設業の平均PER15.0倍を乗じると、以下のように理論株価が計算できます。


会社予想 EPS 217.94円×建設業の平均PER15.0倍=3269.1円

アナリスト予想 EPS 233.90円×建設業の平均PER15.0倍=3508.5円


10月18日時点での鹿島建設の株価は2430.5円ですので、計算した理論株価を大きく下回っています。



結果考察

シンプルに考えれば、理論株価を大きく下回る鹿島建設は割安、理論株価を大きく上回る大成建設は割高となります。もちろんこの見方も間違いとはいえませんが、ここから分析を進めていくことが重要です。


3社について、来期(25.3期)の市場コンセンサスのEPSの伸びを比較(24.3期の市場コンセンサスEPSとの比較:2023年10月19日時点)してみると、大成建設は41%増、大林組15%増、鹿島建設7%増という結果となりました。


つまり、3社のなかで来期にもっともEPSが伸びるとアナリストたちが予想しているのが大成建設であり、この利益成長率の高さが市場平均を上回るPERが許容される要因ではないかと考えることができます。逆に利益成長率が3社の中でもっとも低いので、それが鹿島建設の株価が理論株価を大きく下回っている要因ではないかと考えることができます。



最後に

今回は、「PER×予想EPS」で理論株価を求める方法をみてきました。簡易的な方法ではありますが、中身は奥深いものとなります。


PER、EPSとも高く見積もれば計算上は理論株価は高くなります。ただ、その数値が現実的なものではなかった場合、理論株価も絵に描いた餅となります。

高いPERが許容されるには、その企業が属する業種の成長性が高い状態が続くことが求められます。

高いEPSが許容されるには、四半期ごとに出てくる決算で成長が続いている、もしくは業績が急拡大する要素がある必要があります。


理論株価を活用する上で大事なことは、「どのような数値を当てはめるかを試行錯誤すること」、「仮説検証しながらしっかりと考えること」です。まずは「PER×予想EPS」でそれに慣れてください。そして、徐々に他の理論株価の計算方法に手を広げるようにしてください。



日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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