東宝配給先品である『ゴジラ-1.0』が12月1日から北米で公開され、現地時間12月5日に全米における累計興収が1436万ドルを突破。邦画実写作品としてこれまで歴代1位だった『子猫物語』(日本1986年・北米1989年公開)の1329万ドルの記録を塗り替え、34年ぶりに全米歴代方が実写作品興行収入でトップになったことが、12月7日に公式X(旧Twitter)アカウントからアナウンスされました(全米での興行収入はComscore調べ)。
同アカウントによる投稿でば、山崎貴監督やキャストの神木隆之介さんなどからのコメントも載せられており、記録的なヒットに対する感謝などが述べられていました。
ヒットを受けてスクリーンも、もともと北米では邦画実写史上最大規模となる2308館で公開されていましたが、2500館以上に拡大される予定となり、ますます記録を伸ばすことが期待されます。
公開からわずか数日で興収が1436万ドル。ほぼ初動で2000億円(1ドル=140円で計算)を超える規模のヒットとなったわけですから、業績への影響も気になるところです。興行収入がどれだけ業績に寄与するかについては、ケースバイケースでもありますが、一般的には半分が映画館の収入。残り半分のうち、さらにその半分(25%)が配給会社の収入となり、その残りを製作委員会などの出資者で分け合うかたちとなります。実際には広告宣伝費だったりイベントだったりの費用も発生するので、ここまで単純ではありません。
また、海外での上映の場合は、事情が変わってきまして、興行収入に限らず、海外で上映するための権利をその国の配給会社に一定の金額で譲り渡すことが多いようです。『ゴジラ-1.0』の場合もおおよそ営業利益では10億円程度になるのではないか、との試算もあるもようで1作品だけで同社の業績を一気に押し上げるといったことにはならないかもしれません。
ただし、同作のヒットにより、例えば動画配信サービスなどでゴジラの各作品を含めたラインナップが拡充されるなどの可能性があります。その場合は東宝に追加で使用料が支払われることになるでしょうから、やはり期待はしたいところです。
株式市場でも同作のヒットは話題となっており、株価も12月に入ってから50000円前後で推移していた株価は1割近く上昇し12月12日には5470円まで上昇する場面がありました。しかし、その後は下のチャートをご覧いただければわかるとおり、12月18日時点で4700円台まで急落しています。
東宝 日足チャート
作品の大ヒットを受けて株価が上昇というのはとてもわかりやすいですが、その後なぜ一気に下げてしまったのでしょうか。
さまざまな要因があると思われますが、その一つとして考えられるのが同社が12月13日に発表した2024年以降に公開予定の配給作品ラインナップです。
2023年は前述したゴジラに加え、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』で、興行収入は138.3億円と100億円を超えるメガヒットとなりました。また、宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』では86.1億円、『キングダム 運命の炎』が56億円と、ヒット作が続出し、コロナの影響は完全に脱したと言える好調ぶりとなりました。
そこで2024年はというと『名探偵コナン100万ドルの五稜星』が予定されていますが、それ以外に超大型のヒットを期待できる作品はないというのがアナリストなどからは指摘されています。未発表のものもあるはずですが、業績としては減収減益となりそうだ、との懸念から同発表以降、株価は下落基調にあります。
株式市場ではよくみられることですが、今まさに起きている出来事よりも、この先に起こるだろう未来の出来事の方が株価には影響しやすく、いくら今『ゴジラ-1.0』がヒットしていたとしても、来期の業績の方が今期ほど盛り上がらなさそうであれば株を売っておきたい、と考える投資家が多くなります。
わたしたちが普段ニュースで知るようなさまざまな出来事についても、株式市場ではいち早く織り込んでいて、話題になるころには株価はとっくに上昇。むしろ利益確定売りが増えるということは、株式市場のあるあるネタの一つです。
投資をする際には、その出来事が株価にどの程度まで織り込まれているのかについて意識することも重要です。直近のチャートとともに確認してみてください。