スパチャ4割減 それでも成長続くVtuber市場の実態

みなさんはスーパーチャットをご存じですか。いわゆるスパチャ、投げ銭とも呼ばれるもので、YouTubeなどで動画を配信する配信者に視聴者がお金を送ることができる機能のことです。


YouTubeで動画などを配信するYouTuberは人気のある方も多く広く知られていますが、それだけでなくCGなどのキャラクターを通じたバーチャルユーチューバー、Vtuberも昨今では非常に人気をあつめているようです。


YouTubeのさまざまなデータを収集・公開している「Playboard」(韓国のDIFFが運営)が発表したランキング(集計期間1月1日~12月10日)によると、2023年に最もスーパーチャットを集めたVTuberは、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」に所属する「博衣こより」さんで、金額は7818万円でした。


続いて2位となったのは、Vtuberグループ「にじさんじ」の海外事務所「NIJISANJI EN」に所属する「ヴォックス・アクマ」さんで6647万円。


ホロライブは東証グロース市場に上場するカバー<5253.T>が運営しており、にじさんじは東証プライム市場に上場するANYCOLOR<5032.T>が運営していることもあり、Vtuberのことはあまり知らなくても、企業としては知っているという投資家の方もいらっしゃるかもしれません。


さて、前述したこのスパチャランキングなのですが、1位の博衣こよりさんも、2位のヴォックス・アクマさんも、実は2022年よりもスパチャの金額がかなり減少しています。


「Playboard」のランキングを引用するかたちでニュースサイト「ITmediaNEWS」が報じたところによると、博衣こよりさんは2022年に約9750万円のスパチャを集めていましたが、ことしそれから約1900万円の減少。ヴォックス・アクマさんは2022年の1億3790万円を集めていましたから、約7140万円も減少しています。


この傾向は前述した2者だけではありません。ランキングトップ10までのVTuberのスパチャ総額では、2022年に8億500万円だったのが、2023年には総額5億1100万円と約4割減となりました。


スパチャは配信者と運営会社にとって重要な収益源の1つですから、これが減少するというのは事業の収益性にも影響が出る、と考えることもできるかもしれません。ですが、実際にはこれでVtuber事務所を運営するカバーやANYCOLORの成長が鈍化するという見方は早計です。


スパチャ額の減少は、ビジネスモデルを変革させている途中、いわゆる過渡期における変化の一つであると考えます。このことは2社の決算を見てもわかります。両社ともセグメント別の売上高の推移を見ると、YouTubeなどのプラットフォームを経由し、スパチャなどにより稼ぐビジネスモデルから、グッズ販売やイベント開催などで稼ぐように変化しています。


これにより、スパチャの額が減少したとしても、それ以外の収入が伸び、プラットフォームに間接的に支払うことになる手数料も減ることで、利益率も改善が見込めます。決算の数字を見る限り、2社そろって業績は好調で増収増益を続けていますから、スパチャの減少=業績悪化とはなっていません。


株式市場では、さまざまなニュースを受けて、企業の業績に良い影響、悪い影響がありそうだ、との見方から株が買われたり売られたりすることは日常茶飯事です。とはいえ、そのニュースが実際にどれだけの影響があるかはニュースだけではわからないこともあります。そのためにも決算書などを見て、会社の変化を確認しておくことが大切です。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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