日本証券業協会では、半期ごとにインターネット取引に関する調査を実施し、その結果をまとめています(https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/interan.html)。先日、2023年9月末時点のインターネット取引の状況がまとまり公表されましたので、ポイントをご紹介しましょう。
インターネット取引の証券口座は
2023年9月末時点で調査対象の証券会社は269社。そのうちインターネット取引を取り扱っている証券会社は93社で、全体の34.6%です。2023年3月末の前回調査では90社で、3社増えています。
証券取引をインターネットで行なう「ネット口座」は、2023年9月末時点で4,207 万口座で、半年前の前回調査から2.6%増えました。そのうち1円以上の残高がある口座は2,579 万口座で、総口座数の 61.3%。割合は前回とほぼ同じです。
ネット口座数、残高がある口座数ともに、公表されている2014年3月末以降のデータでは、半期ごとに連続して増加しています。
2023年9月末のネット口座全体4,207万口座のうち、信用取引口座は262万口座。前回調査に比べて5.2%増加です。
どの年代でもネット口座が増えている
個人のネット口座数を年代別に見てみると、最も口座数が多いのは40歳代の885 万口座で、全体の21.1%です。次が50歳代の875 万口座で20.9%、30歳代706万口座(16.9%)、60歳代610万口座(14.6%)と続きます。
ところが、1円以上の残高がある口座となると、年代別の順位が入れ替わります。最も多いのは50歳代で 534 万口座(20.8%)、次が40歳代の508万口座(19.8%)、60歳代の417万口座 (16.2%)、30歳代の391万口座 (15.2%)となっています。
【グラフ1】は、残高がある口座の年代別口座数について、半期ごと(年度上期:4月~9月、下期:10月~翌年3月)の推移を示しています。
どの年代も、まんべんなく増加しているように見えます。しかし丁寧に見ると、2023年度上期は、口座数の少ない年代ほど前期に比べて大きく増えました。20歳未満が81.5%増、20歳代が5.17%増、80歳以上が3.58%増です。2022年度下期までは20歳代から50歳代が口座数を大きく伸ばしていましたが、傾向が変わってきたのでしょうか。
もはや「ネット取引=若者世代」とは言い切れなくなっているように感じます。
増加していた投資信託は横ばいに
2023年度下期にネット口座を通じて売買された株式等の現物取引は81兆2,575億円、信用取引は、202兆8,636億円で、合計284兆1,211億円でした。前回調査に比べて23.9%増という高水準。この金額は、上場投資信託(ETF)及び不動産投資信託(REIT)等を含みます【グラフ2】。
全証券会社を通じた株式等委託取引の売買代金は1,141兆3,655億円で、これに占めるネット取引の売買代金は、24.9%でした。この割合は、25%程度で推移している近年とほぼ同じ水準です。
【グラフ2】では、現物取引と信用取引の売買代金に大きな開きがあります。ネット取引のメリットは、売買手数料などのコストが安いことと、取引にかかる速さ。比較的短期売買で利ザヤを取りに行く信用取引は、低コストとスピードが求められます。店舗の証券会社に足を運んだり電話をしたりする注文に比べて、機動的な取引ができるネット取引は、信用取引との相性が良いといえるでしょう。
増加していた投資信託は横ばいに
次は、上場していない一般の公募投資信託のネット取引について見てみましょう。
【グラフ3】は、半期ごとのネット口座での投信買付額です。2023年度下期は3兆1,828億円となり、前回調査に比べて11.0%増加しました。2022年度上期の3兆1,681億円を上回り、最高額を更新しています(いずれも証券総合口座におけるMRF等の自動買付分を除く)。
ただ、10年間で約4.5倍に増えているものの、足踏みしている感じは否めません。2019年度下期には前期比77.19%、2020年度下期は前期比39.69%の伸びを記録していました。2024年1月からの新しいNISA(少額投資非課税制度)は、ネット口座の投信買付金額にどれだけ貢献するでしょうか。今後に期待したいものです。
【参考】「インターネット取引に関する調査結果(2023 年9月末)について」2023年12月19日(日本証券業協会)