失われた30年を取り戻すような日本株の好調・その要因とは?

「失われた30年」という言葉を耳にしたことはありますか。日経平均はバブル期につけた最高値を更新できず、経済全体が停滞を続けてきた側面があります。


しかし、2024年が開始してから日本株がバブル期以来の高値を更新して話題を集めました。そこで本記事では「失われた30年」について注目し、起きた理由や日本株が好調な要因について解説します。ぜひ参考にしてみてください。


失われた30年とは?

「失われた30年」とはバブル崩壊が始まった1990年代初頭から現在までの期間のことを指します。バブル期に日経平均が史上最高値である3万8,915円をつけたのは、遠い過去の記憶です。


バブル崩壊後に株価は低迷し、高度経済成長期のような株価の上昇はなく、長らく経済の停滞が続いてきました。


その実態を俯瞰的に見るために、バブル期と2021年の時価総額を比較してみます。時価総額とは発行済み株数に株価をかけて計算する、企業価値をはかる指標のことです。


日本取引所グループが公開している東証一部上場企業の時価総額をみると、1989年の最大月が約591兆円に対して、2021年は745兆円でした。アメリカや中国など海外の先進国と比べると成長率は低いものの、下落と微増を繰り返しながら少しずつ上昇しています。


ただし、失われた30年の期間で私たち国民の給与(実質賃金)は増えておらず、以前より減っている状況です。

 

画像引用元:図表1-8-2平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)|厚生労働省


国民の給与が増えない原因の1つに、根強いデフレの影響があります。消費者物価指数はバブル崩壊後から2021年までほとんど0%台で推移して、経済の停滞と国民の所得の減少という非常に苦しい状況が続いてきました。


失われた30年が起きた理由は?

バブル崩壊をきっかけに「失われた30年」が起きた理由について、以下のとおりさまざまな要因が考えられます。


・少子高齢化による労働人口の減少

・高度経済成長期と比べるとデフレにより企業の売上も伸び悩む

・企業の売上が伸び悩むから労働者の給与もあがらない

・高齢化人口の増加により社会保障の負担が増える


複数の要素が重なり経済成長が滞った結果、デフレから抜け出せなくなったのが大きな要因だと考えられます。


失われた30年を取り戻すような日本株好調の要因

アベノミクスによる経済対策もあわせて、失われた30年を取り戻すように2010年以降の日経平均株価は徐々に上昇しています。


2024年1月にはバブル後の最高値を更新して、一時は36,000円を上回りました。


 

出典:TradingView


日本株が好調な要因はいくつかありますが、そのなかでも強いのが外国人投資家による大幅な資金流入があります。


2024年1月の投資部門別株式売買状況を確認すると、個人や法人の購入は思ったよりも伸びず、外国人投資家が日本株を大きく買い越していました。


為替をみると2023年末は円高にふれていましたが、年初に入ってからはマイナス金利解除の見通しは先送りになり再び円安へ動いています。円安と日本株への期待の高さから、大幅な買い注文につながったのかもしれません。


もう少し長期的な視点でみると、NISA制度が開始されてから10年が経過し、2024年には新しいNISAがスタートしました。新しいNISAの成長投資枠では個別株を購入できるため、今後は日本の大手企業株への投資が期待できます。


また2023年から東京証券取引所がPBR1倍の改善要請を出しており、日本企業が数値の向上に動き始めました。PBRとは、株価と純資産の比率を示す指標であり、1倍を超えている企業は資金から価値を生み出している状態です。反対にPBR1倍を割る状態は解散価値ともよばれ、厳しい見方をすると企業を売却して残った資産を株主へ還元したほうがいい状況ともみられます。


PBR1倍を割る企業は上場企業のなかでも一定数存在し、今後は自社株買いや新規事業への投資などによって株主に向けて企業価値を高める努力が続くと予想されます。企業価値が高まれば日本株が買われ、さらなる株価の上昇が期待できるでしょう。



失われた30年を経験して今後の日本の見通しはどうなるか?

日本株が好調な反面、依然として国民の給与(実質賃金)の伸び悩みは深刻なものがあります。給与が伸び悩んでいる状況にもかかわらず、消費税の増税や社会保険料の増額などにより、手取り収入が減少しているのが現状です。


2月から春闘が開始されるので、どこまで給与の上昇が期待できるか大変興味深いものがあります。日本企業の株価と国民の給与上昇が達成されたとき、本当の意味で「失われた30年」を取り戻せるのではないでしょうか。


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

藤崎 竜也の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております