老後の心配のタネに「物価上昇」

みなさんは、お金の面で老後の心配をしていますか?


老後の生活資金づくりとして、少額投資非課税制度(NISA)を始める方が増えています。本コラムでは、調査結果から老後資金に対する人々の意識を見てみましょう。


低位ながらも、老後の生活を心配していない人がジワリ増加


金融広報中央委員会(事務局:日本銀行)では、毎年全国 5,000世帯に対して、「家計の金融行動に関する世論調査」をインターネットで行ない、集計結果をWEBサイトで公表しています。


この調査では、家計の収支や残高などの数値にとどまらず、金融に関する行動や意識などを調べています。2023年に行なった二人以上の世帯が対象の調査で、経済面で老後の生活をどのように考えているかを尋ねたところ、世帯主が60歳未満の世帯の84.0%が「多少心配」「非常に心配」と答えました。


特に「非常に心配」については、全世帯では38.9%でしたが、世帯主60歳未満の世帯では45.4%で、6.5ポイントもの開きがあります。経済的に心配だと考えている人が圧倒的。これを時系列で見てみましょう【グラフ1】。



2019年以降、わずかではありますが「それほど心配していない」が増えています。その一方で、「非常に心配」が増加傾向である点が気がかりです。「多少心配」な人が「それほど心配しない」にシフトしているものの、深刻な人はむしろ増えています。


では、心配の有無となる理由を【グラフ2】【グラフ3】で見てみましょう。




心配の有無の理由を、「年金(公的年金・企業年金を含み、個人年金は除く)や保険」「金融資産」「退職一時金」「資金準備」、そして「物価上昇」というカテゴリで考えてみます。


カギになっているのは、金融資産といえそうです。ほぼ一貫して、十分な金融資産がないことが老後を心配する最多の理由となっています。一方で、十分な金融資産があるので心配していないという人が、2020年から2021年にかけて急増しています。これは、2019年に話題に上った「老後資金2,000万円問題」が影響しているのではないでしょうか。


以前は「老後の生活資金は、いくらあれば良いか」とよく聞かれたものでした。「見当がつかないけれど、何となくお金がかかりそう」と思っていた人にとっては、公的年金のほかに自己資金が「約2,000万円」と具体的に示されたことで、心配が和らいだと考えられます。


物価上昇が心配のタネに


興味深いのは、心配している人の理由として、「生活の見通しが立たないほど物価が上昇することがあり得ると考えられるから」が2022年に大きく増えている点です。以前は「価格変動リスクのある投資はイヤだ」とおっしゃる方が多かったものですが、インフレに負けない老後の生活準備資金として、NISAを活用した資産形成に関心が向いているのもうなずけます。


年金や保険は、「あるから心配していない」人、「十分ではないから心配」という人のどちらも減少傾向です。公的年金をあてにしないようなムードが反映しているように感じます。退職一時金についても似たような傾向です。


同調査では、「年金で老後の必要資金をまかなえると思うか」とも尋ねています。「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答した人は9.9%、「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる」という人は52.0%、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」は38.1%でした。


「ゆとりはない」「日常生活費も難しい」と回答した人の理由で最も多かったのは(2つまでの複数回答)、「物価上昇等により費用が増えていくとみているから」で54.4%でした。2022年以降に急増しており、老後の生活が心配な理由と同様、物価に起因した意識の変化が感じられます【グラフ4】。



「老後資金2,000万円問題」が、不透明だった老後の生活資金を具体的な数字にしたおかげで、金融資産額についての心配を和らげたとすると、次の「不透明」は物価といえそうです。どこまで上昇するか、また、いつまで続くのかが見えななければ、生活資金がどれだけ増えるのかがわからずに心配になるのかもしれません。


幸い、NISAを活用して資産形成を始める人が増えてきました。証券投資はインフレへの備えに適しています。長期的な視野で、老後の生活資金準備に役立てましょう。


【出典】「家計の金融行動に関する世論調査」〔二人以上世帯〕(金融広報中央委員会)



ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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