2023年12月は15社が上場しましたが、新興市場の低迷もあり、そのうち8社の初値が公開価格を下回りました。
足もとは年度末のIPOラッシュとなっていますが、3月上場15社のうち3月28日時点で初値が形成された11社すべての初値が公開価格を上回っています。IPOを取り巻く環境が改善したことで12月IPO銘柄が見直されたかどうかを確認したいと思います。
具体的には、「2023年12月IPOは公開価格割れ続出 買いのチャンスだった?」で注目した銘柄のその後を確認します。
2024年1月10日時点の状況
以下は12月IPO(15社)を表にしたもので、「公開価格」と「初値」に対する「現値(1月10日時点の終値)」の関係を色づけして見やすくしています。
まとめると、以下のとおりでした。
・公募値も初値も両方上回っている:7社
・公募値は上回っているが、初値は下回っている:2社
・公募値も初値も両方下回っている:4社
・初値は上回っているが、公募値は下回っている:2社
現状を確認
では、12月IPO(15社)について2024年3月27日時点の状況を確認します。
まとめると、以下のとおりでした。
・公募値も初値も両方上回っている:7社(1月10日時点:7社)
・公募値は上回っているが、初値は下回っている:2社(1月10日時点:2社)
・公募値も初値も両方下回っている:6社(1月10日時点:4社)
・初値は上回っているが、公募値は下回っている:0社(1月10日時点:2社)
では個別に注目した銘柄についてみていきます。
「公募値も初値も両方上回っている7社」で注目したQPS研究所(5595)ですが、株価は1月10日時点の1211円から4280円に上昇しました。3カ月程度で株価が3.5倍という非常に好調な結果となっています。
この期間には、防衛省から新たに宇宙領域の活用に必要な共通キー技術の先行実証に向けた衛星の試作を受注するなどの好材料があり、株価上昇を後押ししました。
「公募値は上回っているが、初値は下回っている2社」で注目したドローンベンチャーのブルーイノベーション(5597)は、3月27日時点では公募値も初値も両方下回っています。
株価下落の要因は、2月に発表した今期(24.12期)の会社予想で営業赤字が継続する予想だったことが嫌気されたと考えられます。
ただ、4800万円の赤字(前期は2.9億円の赤字)と赤字幅は大幅に縮小する見込みです。この程度の赤字であれば、黒字転換になる可能性はありますので、今後の業績推移に注目したいと思います。
「公募値も初値も両方下回っている4社」で注目したのはサイバーセキュリティー事業を行うS&J(5599)は、3月27日時点でも公募値も初値も両方下回る状況となっています。
ただし、3月6日に1462円まで上昇しており、上場来高値を更新しました。足もとは2月14日に付けた上場来安値1051円をやや上回る水準となっていますが、サイバーセキュリティー関連として、再度注目が集まる可能性は十分あると考えますので、引き続き注目したいと思います。
「初値は上回っているが公募値は下回っている2社」で注目した、ITアウトソーシング・BPO(業務外部委託)サービスを行うロココ(5868)ですが、公募値も初値も両方上回っている状況になっています。ロココもS&Jに近い動きとなっており、2月16日に上場来安値911円をつけましたが、3月12日に1488円の上場来高値をつけています。上場来高値からはやや水準を切り下げたものの、S&Jほどは下げておらず、公募値も初値も両方上回る状況となっています。
最後に
今回、公開価格および初値の現値との比較では想定したほど改善せず、逆に公募値も初値も両方下回っている銘柄が増えるという結果になりました。ただし、QPS研究所やユトリのように株価が数倍になった銘柄が出ています。人気の銘柄にはさらに資金が入り、そうでない銘柄は放置という状況になっているようです。
足もとでは年度末のIPOラッシュですが、公開価格割れは出ておらず、堅調な初値形成となっています。3月IPO銘柄についても人気の銘柄にはさらに資金が入るかどうか今後注目していきたいと思います。