新しいNISAを機に、投資信託の購入や積立投資をする人が増えました。ファイナンシャル・プランナーである筆者は、資産設計などの個人相談やセミナーなどを通じて、個人投資家の意識が数年前と大きく違ってきていると感じています。
一般社団法人 投資信託協会では、毎月、投資信託の残高や資金の流出入などについて集計し、さまざまなデータを公表しています。投資信託協会がまとめた2024年3月末時点の「投資信託概況」をもとに、国内の投資信託市場の最近の状況をご紹介しましょう。
純資産の残高は全体で227兆円を超え、過去最高額を更新
2024年3月末時点において、国内で販売されている公募投信の純資産総額は、単位型(当初募集期間に設定した後、追加設定ができないタイプの投信)と追加型(募集期間の後、原則としていつでも購入可能なタイプの投信)の合計で227兆411億円。過去最高額の残高を更新しました。そのうち、株式投信は211兆476億円で、こちらも過去最高。公社債投信は15兆9,935億円でした。
公募投信全ての本数は5,917本で、内訳は、株式投信が5,832本、公社債投信が85本となっています。
公募株式投信のうち、単位型の純資産は6,488億円、追加型は210兆3,989億円。国内の投信市場は、圧倒的に追加型の残高が多くなっています。ETF(上場株式投信)は89兆5,697億円、ETFを除く公募株式投信は121兆4,779億円です。
また、公募株式投信のうち、インデックス型投信の純資産総額は127兆7,529億円で株式投信の純資産の約6割を占めています。インデックス型投信の本数は1,287本でした。
【グラフ1】は、国内で販売されている公募投信の純資産総額について、投資対象に分けて示しました。
投資対象が国内のみの投信と、海外を含む投信(投資対象が海外+内外の合計)とでおおよそ半々といったところです。なお、この集計にはETFを含んでいるため、国内株式を投資対象にする投信の純資産が100兆1,352億円にのぼります。株式投信全体の残高に占める、国内株を対象にする投信残高の割合は、47.4%となっています。
純資産の残高を増やしているのはインデックス型投信
冒頭で、2024年3月末は、投信全体と株式投信の純資産総額がそれぞれ過去最高額を更新したと述べました。次は、そのうちの株式投信について、もう少し詳しく見ていきましょう。
【グラフ2】は、過去10年間の公募株式投信の純資産総額の推移を示しています(ETFを含むベース)。
青い棒グラフの高さが示しているインデックス型投信の純資産総額の推移が、緑色の折れ線グラフが示す公募投信全体の純資産残高の推移と並行していることが読み取れます。つまり、近年における投信の純資産の伸びは、インデックス型投信の純資産の増加が引っ張っているといえそうです。
投信に資金が集まったのは、新しいNISAのおかげか
次は、投信の設定額から解約金額や償還金額を差し引いた「資金フロー」について見てみましょう。
2023年度(2023年4月~2024年3月)の資金フローは、公募投信全体で13兆2,920億円の純流入、そのうちの株式投信については、11兆2,282億円の純流入でした。特に2024年1~3月は株式投信への資金流入が目立ち、この3カ月間で5兆1,881億円の純流入になりました。2023年度の1年間に占めるこの3カ月間の純流入額の割合は、46.2%です。
さらに、インデックス型投信に絞って2023年度の資金フローを集計すると、8兆1,267億円の純流入でした。同様に、2023年度1年間の純流入額に占める2024年1~3月の純流入額の割合を求めてみると、49.6%にのぼります。
2024年からNISAが新しい制度になったことを機に、多くの資金を集めたと考えてよいでしょう。NISAを利用した積立投資に関心が寄せられ、投信に資金が集まったと感じている筆者の肌感覚を裏付けるデータとなりました。
【参考サイト】
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