10月14日は「投資の日」です。だからといって、その日の相場が必ず良いというわけではありませんが、この時期になると業界では投資への啓蒙活動が活発になってきます。証券会社の各支店にも投資の日のリーフレットが大量に届き、新規開拓などに使われます。
こういった啓蒙活動や時代の変化などにより、投資家層も広がりつつあります。なかでも若年層が特に重視するのは「コスパ」で、より効率よくお金を増やしたいといった意識が強いと感じます。年齢的に資金が有り余っているというわけでもないので、じゃあインデックスファンドの積み立て投資から始めようという人は多いでしょう。
時代の流れに乗って、投資信託のコスト(信託報酬)も低下傾向にあります。国内純資産総額1位の「eMAXIS Slim 米国株S&P500」は実質信託報酬が0.09372%(10月16日時点)であり、1年間、ファンドの純資産が変わらない前提で計算すると、100万円に対するコストは年間937円と破格。足元の純資産2兆6863億円に対する信託報酬は年25億円ほどです。
余談ですが、税抜きだと「eMAXIS Slim 米国株S&P500」の信託報酬は0.0852%です。このうち、委託会社(運用会社)は0.0326%、販売会社(証券会社や銀行)が0.0326%、受託会社(信託銀行)が0.02%なので、足元の純資産2兆6863億円に対する取り分は、それぞれ8.7億円、8.7億円、5.3億円くらいになります。運用会社は1社なのでまだしも、販売会社は多数存在するので、8.7億円をそれぞれで分けるとこのファンド1本だけでは大した利益にはならなさそうですね。
それはさておき、10月17日付けの日本経済新聞朝刊で、投信業界を騒がせそうなニュースがありました。なんと、大手運用会社のニッセイアセットマネジメントが、S&P500に高い相関性があるインデックスファンドを発売するとのこと。信託報酬は驚異の0.057%。王者のeMAXISを4割近く下回るコスト水準です。ファンド名は「ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」とのことですが、10月17日時点で公式からはまだ発表されていません。報道ベースなので、今後の詳細が気になるところです。
インデックスファンドの四天王
積み立て投資によるインデックスファンドへの資金流入はすさまじく、残高トップの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は直近の月で800億円の流入です。インターネットで検索すればすぐに確認できますが、投資信託の純資産ランキング10位を並べると以下のようになります。
※各データを基に弊社作成 網掛けはインデックス型、白地はアクティブ型
このように上位5本のうち4本がインデックス型ファンドであり、メディアやSNSなどでも人気のファンドです。インデックス型ファンドは星の数ほどありますが、買い付けは一部に集中していることが分かります。
2位のAB(アライアンス・バーンスタイン)はアクティブ型ファンドですが、野村證券などの大手が販売に注力していたことから残高は非常に多いです。片やインデックスファンドは勝手にお金が入ってくるので、近い将来2~4位との順位逆転もありそうですね。
ニッセイが猛追するか
24年から新NISAが始まります。つみたてNISA・一般NISAの投資分とは別枠で設定されるため、24年以降も今までと同じ商品を積み立てる、または別の商品を新たに積み立てし始めることもできます。報道内容からして「ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」は厳密にはS&P500連動ではないですが、それに近いパフォーマンスが期待できるもようです。ほぼ同じなら、24年以降は乗り換えた方がお得だよねという人は多いでしょう。
簡単に比較してみた結果
※年率5%の上昇が20年間続くと仮定し弊社作成 24年初を10000とする。
それぞれの信託報酬による上昇幅の差は、パーセンテージに直すと20年後で200ほどとなりました。この数字を大きいとみるか否かは人それぞれですが、仮定通りにいくと当初100万円だったものに対して2万円程度の差が出てくる感じになりそうですね。ただ、両ファンドともインデックス型とはいえ、運用の仕組み上、騰落率は微妙に差が出てきます。日々の誤差でパフォーマンスが逆転する可能性もあるので、個人的な意見ですがどちらでも大差はないでしょう。
ちなみに「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、23年4月25日に信託報酬を0.0968%から0.09372%へ引き下げました。「他社類似ファンドの運用コストに注意を払い、業界最低水準の運用コストをめざすファンド」と公言しているため、ニッセイの新ファンド並みに下がるかどうかは分かりませんが、何かしらのアクションを起こす可能性は高いです。
ニッセイの新ファンドは今のインデックスファンド四天王にとって脅威的な存在ですが、強力なライバル出現を傍観するだけというわけにもいきませんよね。シェアを奪われないよう、今後信託報酬の引き下げられる可能性もあるので、今年もあとわずかですがしっかりと情報を集めたいところです。