2024年1月から改正される「新しいNISA(少額投資非課税制度)」では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同時に利用できるようになります。この点はとても使いやすくなりますが、新しいNISAは、投資商品の選択の幅が狭くなります。
成長投資枠は、現行制度の「一般NISA」を使いやすく進化させたバージョンですが、投資対象の要件が厳しくなっています。長期投資に適した運用商品でなければ成長投資枠の対象となりません。では、対象になるのはどんな運用なのでしょうか?
成長投資枠の対象投信が追加発表
以前の記事『第一弾を公表! 新しいNISA「成長投資枠」の投信』でご紹介したように、新しいNISAの要件を満たす公募株式投信は、まず2023年6月21日に一般社団法人 投資信託協会から約1,000本が公表されました。
次いで7月10日に追加分を公表。追加分を含めて、上場投資信託(ETF)・上場不動産投資信託(J-REIT)が合わせて167本、上場していない公募投信が1,260本、合計1,427本が成長投資枠の対象商品になりました。
投信協会では、今後もほぼ1カ月に1回程度の頻度で対象投信の一覧を更新する予定です。対象の投信は、投信協会のWEBサイトから、最新の一覧表をダウンロードして見ることができます(Excelファイル)。
「NISA成長投資枠の対象商品」(https://www.toushin.or.jp/static/NISA_growth_productsList/)
投信会社別・成長投資枠対象投信の本数
6月の初回公表時には届出が間に合わなかったのか、全く名を連ねていなかった運用会社もありました。2回目の今回は、運用会社がほぼ出そろっています。
成長投資枠対象投信の本数を、運用会社別に集計してみました【グラフ1】。ETF・J-REIT以外の一般的な投信についてまとめました。
大手証券、大手銀行系の運用会社が上位にありますが、そもそも運用している投信の本数が多いためです。投信の数が多すぎて玉石混交と言われることもあるほどです。しかし、成長投資枠の要件を満たす投信に絞り込むと、これでも本数が少なくなっています。
どれほど少ないのかを見るために、各運用会社について、「公募株式投信総本数に対する成長枠対象投信の本数の割合」を計算してみました。なんと、大手の運用会社は軒並み2割を切ってしまいました。
一方、独立系、信託銀行系の運用会社は高い割合です。設定している投信全てが、成長投資枠の要件を満たしている運用会社もあります。運用会社の理念が、そのまま投信の特徴として商品化されていることをうかがわせます。
この割合はとても興味深いので、2024年1月4日時点における成長投資枠の全対象投信が出そろった後に、改めて集計してみたいと思います。
成長投資枠の対象投信の3分の2はアクティブファンド
新しいNISAの成長投資枠の中で購入可能な、ETF・J-REIT以外の一般的な投信は、7月の追加分までで1,260本となりました。このうち、つみたて投資枠でも購入できる投信は191本です。現行のつみたてNISAの対象237本のうち、8割が成長投資枠の対象としても届け出たことになります。
成長投資枠の要件はつみたて投資枠ほど厳しくはないものの、現行の一般NISAに比べ、長期間の資産形成に適した運用に制限されています。投信の場合は、毎月分配型ではない、信託期間が無期限か20年以上、一定のデリバティブ取引などによる運用ではない、という要件を満たすものとされています。
昨今、「長期投資といえば、インデックスファンドの積立」というムードが高まっています。そこで、成長投資枠対象の投信について、インデックス運用かアクティブ運用か、という違いを調べてみました。
成長投資枠の要件として、アクティブファンドは除外されていません。7月までに公表されている成長投資枠対象投信のうち、アクティブファンドは約3分の2にあたる839本です【グラフ2】。
「長期投資向き」という判断基準は、投資家ごとに微妙に異なります。
アクティブファンドは、タイミングを見ながら短期売買に利用する人もいます。また、テーマ型のアクティブファンドを、将来の経済成長を見込んで長期投資する人もいるでしょう。
せっかく非課税枠が広がったのですから、対象の範囲内で、幅広いジャンルの投資をしてみてはいかがでしょうか。ましてや制度が恒久化され、これまでのようにロールオーバーの心配をしなくて済むわけです。急落の場面で慌てて売ることのないような、長い目で将来性のある産業を運用対象にすることも、「成長投資」と言えるのではないでしょうか。
積立投資と併用しながら、成長投資枠をうまく資産形成に活用する方法を、今のうちから考えておきましょう。