個別株は、少額でも買えますよ


「株式投資は、まとまった資金がないとできない」と思っていませんか? いえいえ。最近は、株式投資も少額でできるようになっています。


例えば「株式分割」。売買の最低金額が引き下がり、個人投資家が取引しやすくなっています。また、1株から株式取引ができるインターネット証券もあります。


まとまった資金がないと、株式取引ができない?


新しいNISA(少額投資非課税制度)を機に証券投資を始めた方の多くは、投資信託の積立が第一歩だったかもしれませんね。投資信託は、少額でも分散投資ができる点が特徴の1つ。あまり余裕資金がない世帯や若い世代でも、気軽に始められます。


では、個別の株式を買うとなると、どうでしょうか。株式投資への関心は投信より高いのですが、資金面でハードルが高いと思われているようです。


日本証券業協会が全国の20歳以上の7,000人を対象に行なった「証券投資に関する全国調査(2021年度)」では、「興味を持っている金融商品」として、株式が18.1 %。投信(14.5 %)を上回っています。


ところが、株式投資をしたことがない理由としては、24.6%の人が「株式投資をするほどの資金がなかったから」と答えています【グラフ1】。



「株式投資をするほどの資金」というのはいくらぐらいを指すのか、それは人それぞれなので何とも言えません。しかし最近では、取引の最低金額を引き下げる動きが進んでいます。


株式分割をすると、株価が低くなる


その1つが「株式分割」です。


株式分割を行なうと、株式全体の実質的な価値を変えないまま、発行済株式数が増えます。その会社の資本の規模が変わらないまま、既存株主に、持株数に応じて増加分の株式を無償で分配します。


例えば、1株を4株に分割すると、会社の発行済株式数は4倍になります。その株式を100株持っている株主は持ち株が400株になり、200株の株主は800株になります。


このとき、100株が400株になる株主に対し、増加する300株分の資金は求めません。では、株主は資産が4倍になるのかというと、そう甘くはありません。この場合、株式数が4倍になると同時に、株価は4分の1に調整されます。一人ひとりの株主が持つ資産価値は変わらないのです。会社全体の時価総額も理論上は変わりません。


この例を、具体的な株価を当てはめて【図】で説明しましょう。



1株20,000円の「いまからコーポレーション」が1:4の株式分割を行うと、理論上、分割後は1株5,000円になります。分割前に100株を保有していた株主は400株の株主になり、5,000円×400株=200万円で、分割前と資産価値は同じです。


分割直後の1株5,000円の時点で「いまからコーポレーション」株を買う投資家は、5,000円×100株=50万円が最低購入金額になります。1銘柄を少ない金額で買うことができれば、他の銘柄に投資予算を回しやすくなり、分散投資も容易になるでしょう。


最低取引金額50万円未満が努力義務


東京証券取引所(日本取引所グループ)は、上場会社に対し、取引できる金額を引き下げる要請を行なってきました。個人投資家が株式を買いやすい水準にするためです。


近年、株式分割を実施する上場会社が増えました。そのおかげで、2024年3月末時点で上場3,573社の93.3%が、50万円未満で買えるようになっています【グラフ2】。



現在、東証は、投資単位50万円未満を上場会社の努力義務としています。将来的には、欧米の市場のように、1株単位での売買ができるようになるかもしれません。


1株からできる株式投資もある


それでも50万円というのは、そう簡単に投資できる額ではありませんよね。


では、もっと気軽に株式投資ができる制度をご紹介しましょう。インターネット専業の証券会社の多くが取り扱っている、単元未満株の取引サービスです。証券会社のNISA口座なら、成長投資枠の中で利用できます。


本来、証券取引所を通じた株式取引は、原則として、100株単位です。100株を「1単元」といい、100株の株式を「単元株」と呼びます。


株価は銘柄によってまちまちなので、1単元の買付金額には幅があります。例えば、株価が200円の1単元は2万円(100株×200円)です。一方、株価が2万円なら1単元は200万円(100株×2万円)になります。取引の最低金額が200万円ともなると、なかなか手を出しにくいものです。


そこで、単元未満株を利用すれば、ハードルが下がります。証券会社によっては、最低取引単位を1株や10株で取引できる独自の取引サービスを提供しています。その際、「ミニ株(株式ミニ投資)」など、親しみやすい名前をつけている場合もあります。


単元未満株取引は、刻々と変わる株価は用いられません。証券会社が注文の締切時刻を設定し、それまでに集まった単元未満株の売買注文をまとめて、翌営業日の寄付(始値)や午後の寄付(後場寄り)の値段で約定させます。このような取引ルールや取扱銘柄は、各証券会社が定めており、会社によって多少異なります。


同じ銘柄の単元未満株を買い増して1単元にまとまると、通常の単元株と同じ扱いになります。単元株主として株主総会の案内が届きますし、単元株と同様の売注文を出すことができます。


単元未満株取引は、少ない金額で株式取引をしたい人や、投資を試してみたいというビギナー、少額ずつ様々な金融商品や銘柄に分散投資をしたい人に適していると思います。


ただし、少額といえども、株価の変動で資産価値が上下します。放ったらかしにせず、投資している銘柄の業績や経営者の発言に関心を寄せるようにしましょう。消費者として、その企業の商品やサービスを利用し、親しみながら確かめるのも良いかもしれませんね。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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