投資ビギナーのための株主総会入門

新しいNISA(少額投資非課税制度)を機に、株式投資を始めた方もいらっしゃるかと思います。3月期決算企業の多くが6月に株主総会を実施します。そろそろお手元に「定時株主総会招集通知書」が届いていることでしょう。


株主総会の基本


株主総会は、株主全員で構成される会議で、会社の最高の意思決定機関です。株式会社に関する重要な事柄を決める場であり、すべての株式会社が開催しなければなりません。


株主は事業資金を出資し、日常の業務は経営陣に任せています。資金を出すからには、会社の経営の様子や事業の結果報告を受ける機会が必要です。また、よりよい経営を行なうため、株主が経営陣に意見を述べたり議論が行なわれたりもします。そのための機関が株主総会です。


株主総会では、普通決議として主に財務諸表などの承認、取締役・監査役の選任など決められます。定款変更や会社の解散・合併などの特に重要な事項は、特別決議で決めることになっています。


株主総会には、年に1回の定時株主総会のほか、必要に応じて開催される臨時株主総会があります。定時株主総会は、会社法で基準日(ほとんどの会社では決算日)後3ヵ月以内に開催しなければならないと定められています。日本の多くの会社は決算期が3月ですから、6月中旬から下旬に株主総会が多く開催されています。


議決権とは?


株主宛に送られる「定時株主総会招集通知書」の封筒には、株主総会の案内のほか、冊子になっている議案書と「議決権行使書」が入っています。議案書には、株主総会で決議する議案や、終了した年度の事業報告、会社の現況などが記載されています。


議案書に記載されているいくつかの議案について、株主が賛否の表明をすることを「議決権行使」といいます。


株主総会の議決権は、基準日に株主名簿に記載されている、単元株(100株)以上の株主が保有します。「議決権行使書」には、議決権の個数が記載されています。


議決権とは、株主総会に参加して議決に加わる権利です。1単元に対して行使できる権利は1つ。200株保有している株主は、議決権が2個、1,000株保有する株主の議決権は10個です。議決権を多く保有している大株主の賛否は、多数決に影響を及ぼします。


議決権の基準日は、前述の通り、ほとんどの会社が決算日です。決算日時点で株主であれば、その後にその株式を売却していても、株主総会の招集通知が届きます。反対に、決算日を過ぎてから株式を買った人は基準日時点の株主ではありませんから、株主総会の時点でその株式を保有していても議決権はありません。


議決権を行使するには?


議決権を行使するには、株主総会に出席する、郵送、インターネット等による方法があります。


株主総会は、その株式会社の本社や、本社近くのホテルの宴会場やイベントホールの会議場などで開催されます。議案書に会場案内図が記載されており、開催日時に「議決権行使書」を持参すれば参加できます。


日本では、株主総会での書面投票制度が設けられています。総会に出席できない株主でも議決権を行使することができるしくみです。この場合は、「議決権行使書」を郵送で提出します。「議決権行使書」に議案に対する賛否に〇をつけ、期日までに到着するように投函すればOKです。


また、近年はインターネットで議決権を行使できる会社が増えてきました。2024年4月に東京証券取引所が東証に上場する2024年3月期の会社に実施した調査(回答社数2,268社)よると、個人投資家向けにインターネットによる議決権行使を可能とする上場会社は88.9%。昨年に比べて6.0ポイント増加する見込みです。


インターネットの場合は、議案書に記載された「議決権行使サイト」にログインして賛否を入力すれば議決権を行使できます。


なお、郵便による書面とインターネットの両方で行使した場合、二重には取り扱われません。インターネットによる行使を有効にする会社が多いようです。また、インターネットで複数回の賛否を入力した場合も、複数回としては取り扱われず、最後の入力が議決権行使として有効になります。


バーチャル株主総会


また、近年は「バーチャル株主総会」を開催する会社が増えてきました。株主総会の会場に足を運ばなくとも、株主が総会を傍聴したり出席したりできるしくみです。


「バーチャル株主総会」は、2つのタイプがあります。


1つは「バーチャルオンリー型株主総会」です。リアルの株主総会を開催せず、取締役や株主等がインターネットなどを通じて参加する株主総会です。


もう1つは「ハイブリッド型バーチャル株主総会」です。リアルの株主総会を開催し、その様子がインターネットなどでも配信される株主総会です。「ハイブリッド型」にはさらに「参加型」と「出席型」の2種類があります。「ハイブリッド参加型」は、リアル会場にいない株主がネットで株主総会を傍聴するタイプ。会社法上の出席扱いにはなりません。一方、「ハイブリッド出席型」は、リアルの株主総会の会場に足を運ばずにインターネットなどを使って会社法上の「出席」の扱いになる株主総会です。


東京証券取引所が3月期決算の上場会社に対して調査した資料によると、2024年6月3日までに有効回答が得られた2,170社のうち、バーチャル株主総会を開催すると回答した会社は18.5%の401社でした【グラフ】。



まだ2割弱と少数派ではありますが、ITの発展によって、遠隔地の株主でも株主総会を傍聴したり、総会に出席できたりするシステムが導入されるようになりました。


株主総会は、平日の昼間に開催する会社が多く、日中に仕事をしている個人投資家はなかなか参加が難しいのが現状です。しかしインターネットで株主総会を傍聴したり参加したりできるのであれば、仕事を数時間休む程度で済む人もいるでしょう。大切な虎の子を託している投資先の株主総会です。環境が整っているならば、ぜひ参加・出席してみると良いでしょう。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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