宿泊旅行統計調査4月が発表 中国人宿泊者数が回復傾向

日本人延べ宿泊者数は減少 物価高が影響か


観光庁は5月31日、2024年4月の宿泊旅行統計調査を発表しました。同調査によると、同月の延べ宿泊者数は5096万人泊(前月は5511万人泊)、前年同月比では11.9%増(前月は8.7%増)となったもようです。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、0.5%増(前月は7.7%%増)でした。


テレビや新聞などではインバウンド増により、外国人旅行者のホテル需要が増加。ホテルの客室単価も高騰していると報じられていますので、4月の延べ宿泊者数が前月から415万人も減少したといわれると意外に思われるかもしれません。



延べ宿泊者数の推移(単位 百万人)


観光庁公表資料よりDZHFR作成


4月の延べ宿泊者数のうち日本人のみの数を見てみると、3781万人泊(前月は4213万人泊)と大幅に減少しています。前年同月比では5.0%増(前月は2.3%減)とプラスにはなったものの、2019年同月比では4.1%減(前月は1.2%増)とコロナ禍前の水準を下回っています。これが述べ宿泊者数が減少した大きな要因です。


旅行需要に関してはコロナの影響から回復し、業界はどこも人手不足。ホテルの宿泊代金も高騰しているといわれますが、この価格高騰に加え、物価高の影響が日本人の日本人延べ宿泊者数減少につながっている可能性があります。インフレは普段の生活だけでなく旅行需要にも影響を与えているわけですね。


一方で、外国人の延べ宿泊者数は増加が続いています。同月は1315万人泊(前月は1298万人泊)となりました。2019年同月比では16.5%増(前月は36.4%%増)と伸びは前月から鈍化したものの引き続き高水準と言えるでしょう。


外国人の延べ宿泊者数が伸び続けている背景には、中国人旅行客数の回復があります。外国人宿泊者数のうち、国別のデータがわかる従業員数10人以上の施設の数値を見ると、4月の中国人延べ宿泊者数は2019年比で22.3%減(前月は29.4%減)と、緩やかではありますが回復してきています。


処理水放出の問題や、中国不動産市場の低迷による景気下押しの悪影響などから、海外旅行へ行く中国人が減少しているという指摘もありますが、足もとの円安なども追い風に中国人旅行客の回復基調は今後も続くと予想します。


一方で、日本人の延べ宿泊者数は横ばいあるいは減少傾向が続くかもしれません。前述した物価高の影響や、実質賃金の減少が続いていることなどから、一般的な家庭が余暇に回せる可処分所得は決して多くないと言えます。


ゴールデンウィークのある5月はもちろん旅行者数が増える傾向にはありますが、前年同月で見た場合には劇的な増加は望みにくいかもしれません。また、能登半島地震を受けて、被災地での旅行需要喚起のために実施された北陸応援割は4月で終了。新潟県、石川県では第二弾がゴールデンウイーク以降にも実施されていますが、大幅な押し上げにはつながらないでしょう。


地域別では特に三大都市圏での外国人のべ宿泊者数が伸びており、ビジネスホテルなどの稼働率が高くなっている傾向から、今後も東京などでは客室単価の高止まり傾向が続きそうです。旅行を検討されている方は、いまなら地方が狙い目と言えるかもしれません。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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