「シンTOPIX」への改革案を公表 東証は新たなステージへ

採用銘柄数を大幅絞り込み


日本取引所グループ(JPX)は6月19日、「東証株価指数(TOPIX)等の見直しについて」を公表しました。


公表された資料によると、TOPIX採用銘柄の時価総額基準を従来よりも大幅に厳しくし、2028年には現在より4割強少ない約1200銘柄に絞り込むとしています。


もともとTOPIXは東証1部上場全銘柄で構成される指数でした。しかし、2022年4月の市場区分変更で東証1部がなくなったことで、その構成銘柄をどうするのか議論がなされてきた経緯があります。


これまでもプライム市場の上場銘柄を対象としつつ、プライム市場の上場維持基準を従来の東証1部よりも厳しくすることで、TOPIXの採用銘柄を削減する取り組みは実施されてきました。第一段階として、浮動株比率の算定方法に政策保有株を除外する見直しを加えたうえで、プライム市場の上場基準である流通株式時価総額100億円未満の銘柄を段階的にウェイトを低減。第一段階の見直しが完了する2025年1月にはTOPIX構成銘柄数は約1700となる予定です。


今回の見直しはそれをさらに一歩押し進めた第二段階といえるもので、採用の基準そのものも大きく変わることになります。単純な銘柄の追加、削除だけではなく、指数の構成ルールそのものが変わることになり、市場にも大きなインパクトを与えることになるでしょう。


では新TOPIXはどのように変わるのでしょうか。資料によれば、新TOPIXはプライム市場だけでなく、全上場銘柄を対象とし、流動性基準による選定を実施。売買回転率は年間20%以上、浮動株時価総額は上位96%以内の銘柄が構成銘柄となります。


毎年10月末に銘柄入れ替えが行われるほか、新規上場銘柄についても、市場区分とは関係なく、上位95%に含まれる最低の浮動株時価総額を上回った場合に追加されることになります。


具体的なスケジュールとしては、2024年6月から8月にかけて指数コンサルテーションを実施。24年9月末ごろにルールを公表します。周知期間を経て、2026年10月から2028年7月に次期TOPIXに段階的に移行する予定です。



スタンダート、グロース市場銘柄も組み入れ対象に


この新ルールのもとで前述したようにTOPIX銘柄は1200銘柄程度まで絞られることになる見込みです。一部証券会社の試算によると、35銘柄が新規にTOPIXに追加され、1032銘柄が削除される(流通時価総額の基準により現在段階的削除中の銘柄を含む)もようです。


これまではいったんTOPIXに採用されれば、パッシブファンドによる一定の買いが入ることになりました。しかし、新ルールでは採用後も時価総額や流動性により削除される可能性があることになり、企業側は株価に対しこれまで以上に配慮する必要が出てきます。


また、プライムに上場していなくとも基準以上の時価総額と流動性があればスタンダード市場やグロース市場の銘柄でもTOPIXに採用されることになるため、それぞれの市場の流動性向上にも期待できるでしょう。なにより「TOPIXに採用されるためにもプライムに移行しなければ」という企業側の意識がかわることで、スタンダードやグロースの市場に残りつつ成長を目指す企業が、今後は増えてくるかもしれません。そうなれば、プライム上場への通過点としての市場という捉えられ方をされることなく、市場ごとに独自性をもって発展していける可能性もありそうです。


発表翌日の6月20日の東京市場では、さっそくスタンダード市場やグロース市場のなかで、新たなTOPIXへの採用が期待される時価総額上位の銘柄が買われる場面がありました。スタンダード市場では、日本マクドナルドホールディングス<2702.T>、ワークマン<7564.T>、ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324.T>、住信SBIネット銀行<7163.T>、東映アニメーション<4816.T>など。グロース市場ではジーエヌアイグループ<2160.T>、トライアルホールディングス<141A.T>、カバー<5253.T>、ウェルスナビ<7342.T>などが上昇し、投資家からの期待も大きかったようです。



今後も市場の質を高め、企業価値向上につながるような東証改革が進展するよう注目していきましょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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