楽天の株価はなぜ安い?3つの要因と今後の将来性について解説

楽天の株価が安くて、今買うべきか、売るべきかは判断に困るのではないでしょうか。業績の不振から一部の投資家からは倒産の危機にあるのではとの声が上がっています。株安の原因を紐解くとモバイル事業での赤字が大きな要因であるとわかりました。


そこで「楽天の株価がなぜ安いのか?」について3つの要因と今後の将来性について解説します。ぜひ参考にしてみてください。


楽天の事業概要と業績推移

楽天は楽天通販をはじめとするEC事業を立ち上げ1997年に設立されました。その後は通信や金融、不動産、スポーツ、モバイルなど国内外に様々な事業を展開しています。


楽天の主な事業領域は、以下3つのとおりです。


・インターネットセグメント

・フィンテックセグメント

・モバイルセグメント


インターネットセグメントは主にEC事業の収益です。お馴染みの楽天市場を中心にデジタルコンテンツや広告、メディア事業も手がけています。2024年1Qの決算を見たとき、楽天市場が広く浸透したことで業績の伸び率は鈍化しています。しかし、前年同月比で売上と利益も増加しており、利益は136億円を記録しました。


フィンテックセグメントは、主に楽天カード・楽天銀行・楽天証券などの金融事業のことです。特に楽天証券の伸び率は目覚ましく、個人投資家向けの国内口座開設数はトップを記録しています。また、楽天カードを入り口にしたポイント付与による経済圏ビジネスは業績に大きく貢献しており、2024年1Qの決算でも利益は393億円を記録しました。


最後にモバイルセグメントは、楽天モバイルを中心としたスマホ事業のことです。モバイル事業に関してはネット回線がつながりやすいプラチナバンド帯の割り当てに時間がかかった影響もあり、新規顧客の獲得に苦戦。さらに通信設備の構築に巨額の資産を投じる必要があり、2024年1Qの決算では719億円の赤字を記録しています。


楽天の過去5年間における業績は、以下のとおりです。


売上高は順調に伸びているものの、ここ数年は数千億円単位の赤字を記録しています。



楽天株価なぜ安いのか?3つの理由を解説

楽天の過去5年間の株価推移は、以下の画像を参考にしてください。


 

参照:Traging View


2023年に株価は低迷し500円台を記録しました。楽天の株価が安い理由には、以下の3点が考えられます。


・楽天モバイル事業の赤字垂れ流し

・大型増資による株式の希薄化

・大規模な社債償還スケジュール


楽天モバイル事業の赤字垂れ流し

インターネットやフィンテック事業は好調な楽天ですが、モバイル事業の業績が大きく足を引っ張り、全体として大きな赤字を記録しています。


2019年に参入したモバイル事業ですが赤字を重ね続けており、業績低迷最大の要因です。決算期ごとのモバイル事業の赤字額は、以下のとおりです。


・2019年12月:-765億円

・2020年12月:-2,269億円

・2021年12月:-4,211億円

・2022年12月:-4,923億円

・2023年12月:-3,375億円


モバイル事業の赤字の多くは通信基地局の設置にかかる設備投資が大半を占めます。


大型増資による株式の希薄化

楽天は2023年5月に公募増資で約3,000億円を調達しました。このときに発行済み株式を16億株から21億株へと増加した結果、株価の値下がりを招き、一時は500円台を記録しています。


自社株買いは1株あたりの価値を引き上げるのに対して、資金調達のための新規株式発行は既存株の価格を下げてしまいます。


大規模な社債償還スケジュール

楽天は事業全体の赤字を補うため、社債を発行して資金調達しました。社債による資金調達は満期日に投資家への支払い義務があり、2024年に3,200億円と2025年に4,760億円の償還を控えています。


この借金を返済できないとデフォルトしてしまい、倒産する訳です。一部の投資家からは倒産するのではないかと噂されていますが、2025年までの社債返還の目処が立っていると公式に発表がありました。


資金調達の実態を調べると、より高い金利で社債を発行している状態であるため、本業の赤字が解消されない限り苦しい経営は続くと予想されます。



楽天の将来性はモバイル事業次第・投資判断のポイントや今後の株価は?

楽天の将来性は、モバイル事業次第というのが正直なところです。


基本的には新規加入者数が今より増加して、設備投資額が抑えられればモバイル事業だけでの黒字化が達成できます。しかし、四半期決算資料では年内におけるモバイル事業の単月黒字化が記載されておらず、先行きはもう少し見守る必要がありそうです。


楽天はスマホの通信がつながりやすくなるプラチナバンドの取得により、サービスの提供開始を2024年6月として新規顧客獲得に乗り出そうとしてます。現在700万回線が契約しており、堅調に利用者数を増やしているのは好材料です。


一方で、2024年の設備投資額は1,000億円以下にすると最新の決算で発表しております。年内におけるモバイル事業の赤字脱却は難しいかもしれませんが、数年後の単月黒字化が目指せるかもしれません。


将来的にモバイル事業のV字回復が実現すれば、株価が急上昇する可能性が高いです。2015年に記録した最高値の2,395円を超えるかはわかりませんが、今後の楽天のモバイル事業がどのように進展するか注目してみてはいかがでしょうか。


最後に楽天の全期間における株価推移の画像データを添付します。


 

参照:Traging View


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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