企業群好きな株式相場の新勢力「マグニフィセント・セブン」とは

2024年7月に入り、アメリカにおける半導体各社の決算が悪く、個別銘柄が影響を受けています。この下落基調は一時的な推移とは考えられますが、同時に考えたいのが、よく耳にするようになったのが「マグニフィセント・セブン(マグ7)」という言葉です。GAFAしかり、株式相場は企業群をまとめるのが得意です。2024年になって数多く耳にするようになったマグ7も同様に、特定の企業群を総称する言葉です。マグ7が聞かれるようになった背景を考察します。


マグニフィセント・セブンとは?

もともとの「マグニフィセント・セブン」は2017年に公開された米国映画です。主演のデンゼル・ワシントン率いる賞金稼ぎが悪漢に支払いされた街にて復讐を志します。まさにアメリカの好きな勧善懲悪の映画といえるでしょうか(アメリカ映画ファンはご容赦のほどを)。


米国株のマグニフィセント・セブンとは、映画にて主人公が7人の仲間を引き連れることから、主要ハイテク株や成長株を指します。


具体的にはアップル、Microsoft、アルファベット(Google)、アマゾン、エヌビディア、テスラ、メタ(Facebook)の7社です。出所はパソコンやインターネット、SNSと様々ですが、数年来これらの銘柄は人口知能(AI)の進歩が追い風となって、投資家の関心を惹きつけました。


特に生成AIの雄というべきOpenAIにおいてデータセンターの役割を担うエヌビディア社の時価総額急騰に裏付けされています。



プラス用途ばかりではないマグニフィセント・セブン

この言葉が使われる用途は、企業群を評価するプラスの場面だけではありません。7月29日のロイターは、国債利回りの高騰で動揺するアメリカ相場において、次に値を崩すのは割高感の強いこれらの株ではないかという懸念を紹介しています。つまり、7社まとめて厳しめの評価をされているという状況です。


誉めそやすときは各社まとめてならば、「割高感がある」と評価するのも7社まとめてという評価は、当事者にとって納得のいかないものでしょう。。それぞれの会社が米国のみならず、世界を代表する実力を持つ企業であるため、「自社だけで評価して欲しい」という本音が隠れているのかもしれません。


ふと考えると、数年前はGAFA(Google、アルファベット、Facebook、アマゾン)がありました。マグニフィセント・セブンの半数はGAFAと変わらないことに気がつきます。なぜGAFAではダメなのでしょうか。


GAFAに満腹感を覚える投資家と生成AI

株式相場は新しいものが好きです。公開会社として自信を持って決算を出していても、次は何をやってくれるんだ、どのような形で世界の先頭を走り続けるのかという期待に追いかけられます。そう考えると、充分に世界を席巻したGAFAは既に満腹感(=充分に世界の投資を集めきった)なのでしょう。これらの企業における稼ぎ頭のビジネスモデルが常にアップデートされていることも関係します。


とはいえGAFAの4社が世界における産業の中心であることは現在も、今後数年もまず間違いありません。投資信託においても変わらずインデックスの構成銘柄の主力を担っています。ならば2024年に入り、タイムリーな生成AIというバズワードを含めて生まれたのが、「マグニフィセント・セブン」という新たな企業群と考えられます。



懸念される生成AIと社会インフラ

生成AIには無限の可能性があります。ただ一方で、現在の社会インフラにどれだけ早く浸透し、共存していくかは懸念される部分もあります。インターネットの黎明期とよく比較されますが、生成AIが実装される過程では「人の手を必要としなくなる」ことがインターネットと比べ、圧倒的に多いです。それまでその仕事や仕組みで生活をしていた人が、生成AIの方がスピードが早いからとイノベーションを受け入れるか。国や産業による違いもあるとは思いますが、何度か寄り戻しを経てあらたな仕組みが整備されていくのではと筆者は考えています。


株式相場における注目度は先行指数のため、実産業の何年も前から枠組みができることは、何も違和感のあるものではありません。ただ、こうやって企業群を作る思惑に気がつかずに、「これからは貯蓄ではなく投資だ」という義務感のようなものに背中を押され、リスクを可視化せず投資を進めることには、一抹の懸念を覚えるニュースです。どうしても埋められない、私たちと(機関)投資家のあいだにある「情報量の差」に抗わずに進むこともまた、投資におけるひとつのスタンスと考えられるでしょう。


ともすれば個別株に元気が無い日本株も、まとめて「七人の侍」あたりの名づけがされるような存在感に期待したいものです。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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