信越化学が株式分割した背景とは?今後の影響と急落による株価の見通し

信越化学工業が2023年4月に1:5の株式分割を実施しました。その背景には、東証からの投資単位引き下げ要請と、2024年からスタートする新NISA制度への対応が関係しています。


本記事では株式分割の背景を説明しつつ、株価への影響や直近の業績について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。


信越化学の株式分割実施の2つの背景

信越化学は2023年4月1日付けで1:5の株式分割を実施しました。株式分割を実施した背景としては「東証からの指示」と「新NISAスタートによる影響」の2つが挙げられます。


東証からの指示

東京証券取引所は2022年10月27日付で投資単位が50万円以上の企業に対して、金額の引き下げを検討するよう要請しました。東証の狙いとしては個人投資家でも購入しやすい金額にして、市場の流動性を高める目的があります。


信越化学は分割前の株価が1万7,000円を上回っていたため、1単元(100株)の取得に170万円以上の資金が必要でした。そこで1:5に分割すれば1単元の取得額が30万円台になり、東証の要請をクリアしつつ個人投資家にも手が届きやすい金額に納まります。


新NISAスタートによる影響

2024年1月1日からスタートする新NISA(新しいNISA)を見据えて、個人投資家による資金流入を見込んでの株式分割であったと予想されます。旧NISAと比べて非課税期間が無制限になったため、購入元本1,800万円までの収益に対して税金を支払わずに運用できるお得な制度です。


 

画像引用元:新しいNISA概要|金融庁


新NISAの成長投資枠を利用すれば年間で240万円の買付が可能です。したがって、個人投資家から資金流入を狙って、早いタイミングで株式分割に踏み切ったと予想されます。


信越化学の株式分割が株価に与える影響

株式分割を実施しても企業の価値は変わりませんが、値がさ株(株価水準が高い銘柄のこと)は個人投資家からも手が出しやすくなり、株価は上昇する可能性があります。実際に信越化学が株式分割を発表した直後は、買い注文が殺到し株価は上昇しました。


 

参照:Traging View


その後2023年3月期の決算では売上高と営業利益とも過去最高を記録し、さらに株価は上昇。新NISAが始まった2024年1月以降は6,000円を上回っており、分割後の最高値を更新しました。


信越化学(4063)の事業概要と配当予想

信越化学は素材・製品メーカーとして国内外に材料を販売する化学メーカーです。主要製品は半導体シリコンウェーハーと塩化ビニル樹脂であり、それぞれ世界1位のシェアを誇っています。


売り上げの大半を占めるのは塩化ビニル樹脂(生活環境基盤材料)とシリコンウェーハ(電子材料)の2つの事業です。営業利益の8割以上を上記2つのセグメントが占めています。


世界の化学メーカーのなかでも有数の企業であり、時価総額は4位に位置しています。


配当予想と権利確定日

2024年7月時点での配当金は年間で1株100円の予定です。昨年の実績は株式分割前で500円でしたので、2023年度と同じ金額設定といえます。


株式分割後に修正した直近5年間の配当金推移は、以下のとおりです。


・2020年3月期:44円

・2021年3月期:50円

・2022年3月期:80円

・2023年3月期:100円

・2024年3月期:100円(予定)


昨年までは業績も好調で年間の配当金は増額している傾向でした。配当利回りは株価6,000円台を記録している関係から約1.5%です。


権利確定日は毎年9月30日と3月31日ですので、信越化学を購入する際の目安にしてみてください。


信越化学の今後の株価見通し

信越化学の直近1年間の株価推移は以下のとおりです。

 

参照:Traging View


2023年後半から株価が上昇していますが、2024年4月に下落しました。好調だった2023年3月期決算と比べて、2024年3月期決算があまり振るわなかったのが主な要因です。


以下画像は信越化学の2024年4月期決算短信の結果です。2023年3月期と比較して売上高マイナス14%、営業利益マイナス30%を記録しました。

 

画像引用元:決算短信|信越化学工業株式会社


業績が悪化した背景は、中国市場の停滞が主な要因です。今まで好調だった中国市場ですが、景気減速の影響を受けて住宅の着工件数の減少がありました。それに伴い塩化ビニル樹脂の販売数が減少して、売り上げが伸び悩んでいます。


今後の業績を占ううえで、塩化ビニルの販売数が元に戻るかは先行きが不透明です。中国景気の回復が見込めるか難しい点が挙げられます。また、金利水準の高いアメリカにおいて2023年以降の住宅着工件数は減少しており、営業面で苦戦するかもしれません。


今後はAI関連市場の伸びを期待して、半導体事業がどこまで伸びていくかにも注目する必要があると思います。


ここまで信越化学の株式分割と株価を調査してきましたが、企業の将来性を見越して今後の業績を見てはいかがでしょうか。


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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