【米国株インサイト】食品(後編):モンスター、急成長のエナジードリンクブランド

米国の食品セクターでは長い歴史を持つ企業やブランドが目立ちます。19世紀に誕生し、いまに至る食品メーカーも多く、親から子に続く営みが歴史あるブランドを生み出しているようです。


もちろん大前提となるのは品質と安全性です。厳しい競争という淘汰の波に洗われ、歳月に磨かれた製品やブランドだけが19世紀から今に至るまで消費者の信頼を得ているのだと思います。


前編では多彩なブランドを持つモンデリーズ・インターナショナル(MDLZ)に加え、ケチャップとチーズに強みを持つクラフト・ハインツ(KHC)を取り上げました。今回はエナジードリンクのモンスター・ビバレッジ(MNST)、おやつやシリアルを生産するゼネラル・ミルズ(GIS)、そして1869年に創業したキャンベル・スープ(CPB)をご紹介します。


モンスター・ビバレッジ、ブランド力で若者に人気

モンスター・ビバレッジはエナジードリンクの生産・販売を手掛けています。主力製品は「モンスターエナジー」で、ベーシックなデザインの製品は黒い缶に植物の根を連想させるような怪しい「m」の黄緑色のロゴがあしらわれています。また、「MONSTER」のデザインもややおどろおどろしいイメージです。


爽快感のあるテイストに加え、カフェインを多く含むため眠気覚ましに摂取する人も多く、特に若い層に支持されているようです。セグメントは、エナジードリンク、戦略ブランド、アルコール、その他の4つに分かれていますが、エナジードリンクが売上高の92%を占めています(2023年12月期)。


モンスターエナジーが米国で発売されたのは2002年です。それから20数年が過ぎ、今では158カ国・地域で販売されています。売上高と利益は右肩上がりで、特に売上高は2001年以来、23年連続で前年実績を上回っています。


ブランド力やファッション性などは高く評価されてきましたが、業容の急拡大にはコカ・コーラ(KO)が大きな役割を果たしたようです。両社は2014年に資本・業務提携に乗り出すと発表し、コカ・コーラがモンスター・ビバレッジの発行済み株式の16.7%を取得しています。



資本・業務提携を通じてコカ・コーラが持つボトリングのネットワークを活用したことが急成長につながったようです。今ではコカ・コーラの持ち株比率は19%を超えており、もちろん筆頭株主です。


モンスター・ビバレッジは、広告戦略も独特です。若者というコアターゲットに訴求するためにスケボーやBMXといったアクションスポーツの国際競技会「エックスゲームズ」をサポートしています。


また、自動車レースの最高峰「F1」では、F1チームの「メルセデス」のスポンサーとして長期にわたりサポートし、「メルセデス」はチームとしての年間王者に何度も輝いています。ただ、エナジードリンクの世界最大手レッドブルもF1に参戦しており、エナジードリンクの争いはF1の舞台にも持ち込まれているといえそうです。


しかも最近はホンダからエンジンの提供を受ける「レッドブル・レーシング」が好調で、2022年、2023年と2年連続で年間王者に輝きました。モンスター・ビバレッジが支援する「メルセデス」は2022年が3位、2023年が2位と善戦しましたが、F1でもレッドブルの後塵を拝する結果に終わっています。


契約のタイミングもあるとは思いますが、モンスター・ビバレッジは2024年のシーズンから支援するチームをF1の名門「マクラーレン」に鞍替えし、王者のレッドブルを追走しています。


ゼネラル・ミルズ、食品メーカーとして150年超の歴史

ゼネラル・ミルズは150年超の歴史を持つ食品メーカーです。おやつやシリアル、冷凍食品、パン、ヨーグルト、アイスクリームなどの開発、生産、販売を手掛けています。


北米を中心に100カ国以上で製品を販売しています。高級アイスクリームの「ハーゲンダッツ」や冷凍野菜の「グリーンジャイアント」など国際的にも知名度が高いブランドを持ちます。


製品別ではクッキーや栄養バーなどを含むスナック部門の2024年5月期の売上高が43億2700万ドルで、全体の21.8%を占めています。シリアルは31億8800万ドルで、売上比率は16.1%です。ピザ、スープ、サイドディッシュなどを含むコンビニエントミール部門は売上高が29億700万ドル、売上比率が14.6%。ペットフード部門は売上高が23億8300万ドルで、売上比率が12.0%です。



このほかにもパン生地やヨーグルトなどの部門があり、売上比率はそれぞれ10.1%、7.5%です。高級アイスクリーム部門は売上高が7億2900万ドルで、売上比率は3.7%にとどまっています。


実は「ハーゲンダッツ」の米国・カナダ事業はスイスの食品大手ネスレに売却しており、ゼネラル・ミルズにとってのハーゲンダッツ事業は日本での合弁会社など海外が中心となっているためです。日本法人のハーゲンダッツジャパンにはゼネラル・ミルズがオランダの子会社を通じて50%、サントリーホールディングスが40%、タカナシ乳業が10%を出資しています。


ネスレとは提携関係にあり、北米地域を除くシリアル事業は折半出資の合弁会社シリアル・パートナーズ・ワールドワイド(CPW)を通じて展開しています。2003年以来、すべての製品で精白前の全粒穀物を主原料に使う健康志向が特色を生み出しています。世界全体で15の工場を持ち、130カ国・地域で製品を販売しています。


キャンベル・スープ、19世紀末に凝縮トマトスープを発売

キャンベル・スープの創業は1869年で、やはり150年以上の歴史があります。19世紀末には缶入りの凝縮トマトスープを発売しており、現在に至る缶入りスープの礎を築いています。


現在の事業は食事・飲料部門とスナック部門に分かれています。食事・飲料部門の主要製品は、「キャンベル」ブランドの濃縮スープやトマトジュース、「スワンソン」「パシフィック・フーズ」のブイヨン、「プレゴ」のパスタソース、「V8」のジュースなどです。2023年7月期の売上高は49億700万ドル、売上比率は52.4%です。



スナック部門は、「ペパリッジファーム」ブランドのクッキーやクラッカー、「スナックファクトリー」のプレッツェル、「ケープコッド」「ケトルブランド」のポテトチップス、「ポップシークレット」のポップコーンなどが主力製品です。スナック部門の売上高は44億5000万ドル、売上比率は47.6%です。


有力なブランドや製品の買収には積極的で、2024年3月には食品メーカーのソボス・ブランズの買収を完了しました。買収額は約27億ドル。ソボス・ブランズはパスタソース、ドライパスタ、スープ、冷凍ピザ、ヨーグルトなどを生産しており、食事・飲料部門に組み込んで増強を図る計画のようです。

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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