好決算でも下げてしまうケースを振り返る

2024年4-6月期の決算発表が一巡しました。今回は決算シーズン中に歴史的な相場下落が発生したこともあり、それに振り回された投資家が多かったと思います。それはそれとして、決算発表後の動きは想定外の反応となることも多く、こんなはずじゃなかった!ともどかしい気持ちになりがちです。


相場のことは相場に聞けと言いますが、できることなら同じ失敗は繰り返したくないところ。今回のテーマは好決算であっても下がってしまったケースを振り返り、次に生かそうという試みです。


すでに知ってたとされてしまうケース

決算発表後に下がってしまう事例として頻出するのが材料出尽くしです。織り込み済みとも言います。いくら良い着地だったとしても、そうなることが想定されていれば株価は事前に上昇しますよね。いわゆる期待買いというものです。想定されている範疇の決算内容であれば、サプライズ感に乏しい結果となってしまいます。目先はこれ以上の買い材料は出てこないと思う投資家が増え、決算発表後は売られるというケースです。


(例)日本航空電子工業<6807> 7月24日の大引け後に決算発表

25.3期1Q(4-6月)の連結営業利益は37.7億円(前年同期比2.1倍)

 

出所:トレーダーズ・ウェブ


ガッカリされてしまうケース

上方修正、配当増額、自社株買いなど、投資家が期待している発表がなかった時にも売られることがあります。失望売りと言われたりします。


例えば、第3四半期の決算発表で、通期の会社計画に対して利益の進捗率が90%を超えていたとします。第4四半期が例年低調という季節性がない会社であれば、計画を上振れる可能性が高いですよね。それにもかかわらず会社計画の上方修正がなかったら、会社の慎重な姿勢にガッカリと思う投資家が一定数存在します。


決算と同時に株主還元を発表する会社は多いので、現金をたくさん保有する会社、業績が好調な会社などは株主還元への期待が特に高まりやすいです。そういった場合は決算発表前に期待先行で株価が上昇していくため、期待に応える内容でなければガッカリとされてしまいがちです。



最近では、親子上場を解消する動きも増えています。決算発表と同時に親会社が子会社に対してTOB(公開買い付け)を行うといった思惑も出やすいので、投資家が勝手に期待し、勝手に失望していくといったケースもあります。


 (例)ポプラ<7601> 7月11日大引け後に決算発表

出所:トレーダーズ・ウェブ


ポプラはこれまで14時に決算発表を行っていましたが、今回は14時に開示が出ませんでした。14時予定というわけではありませんでしたが、コンビニ大手のローソンと提携して経営再建中ということもあり、もしかしてこれはTOBなんじゃないか?という思惑から14時以降は株価が急上昇することに。ちなみに、予定時間に決算が発表されず、その後にTOBが出た事例はあります。


しかし、大引け後に決算が発表され、TOBに関する開示はありませんでした。ポプラの25.2期1Q(3-5月)の連結営業利益は1億0600万円(前年同期比27.8%増)と良かったのですが、思惑外れによって翌日は大幅安。これは何とも言えないですね・・・


買いが続かないケース

決算が好感されたにもかかわらず下落してしまうこともあります。決算を好感した買いが入ったとしても、買い注文が継続しないと株価は上がりません。それ以上の株価では買い渋られると思った投資家が多いと、寄り付いた後は上値が重くなってしまいます。これ以上は株価が上がらないと判断されれば、決算発表以前に買っていた投資家の手じまい売りによって失速し、挙句の果てにはマイナスに転じてしまうというケースです。


短期売買の多い小型株でよく見られるケースで、寄り付きがほぼ高値になり、その後大きく下落することが多いです。(1)決算発表前に上昇し、決算発表直後に高く始まって失速するケース(2)株価が下落基調のなか、決算発表後に上昇したものの失速するケースの2パターンが頻出します。


(1)のケースでは、期待買いが先行→決算を受けて一部の投資家が高く買う→追随する投資家がおらず上値が重い→期待買いの投資家が手じまい・・・といった流れが考えられますね。


(2)のケースでは、決算を受けて買いが入る→決算発表前に高く買っていた投資家がやれやれと売りを出す(戻り待ちの売り)→これより下がると困る信用取引の投資家が慌てて売る・・・といった流れが想定されます。


(例)プレイド<4165>

24.9期3Q累計(10-6月)の連結営業損益は1.7億円に黒字転換 8月13日大引け後発表

 出所:トレーダーズ・ウェブ


プレイドの決算発表直後は、買いから始まりました。そこから上げ幅を広げたものの、一転して大幅安に。特徴的だったのは高く始まってから、早いうちに大量の売りが出たことです。上述の(1)が想定されますね。高値では前日比6%高、安値は同11%安と、かなり荒い値動きです。結局、前日比4%近い下落で終えました。



怪しい雰囲気を感じ取る

良い決算であっても下げてしまうケースでは、事前に株価が上昇していることが多いです。そうなると株価には期待感や思惑によるプレミアムが上乗せされているので、それを上回るサプライズ決算でないとなかなか好感されません。


決算発表が近づいてきたところで妙に上昇していたり、値動きが荒くなっていたら決算発表後のリスクがより高まっている可能性があるかもしれませんね。最近では、日々の信用取引情報を見られるサービス、大口や小口の取引比率をみられるサービスなど、証券会社のサービスもどんどんと充実しています。使えるものは何でも使い、この決算は跨いでもよいか避けるべきか、スキルを磨いていきたいところです。


日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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