マグロ大好きの日本人が色めきだったものの、肝心の関連銘柄は動かず。
2025年以降における太平洋クロマグロの年間漁獲高が拡大となり、日本も大きな恩恵を受けることに決まりました。国内の食習慣に与える影響は大きく、株価分析としては「大きなサプライズ」の発生です。ところが合意から1日が経過しても、関連銘柄に大きな動きは見えず。着眼点が良くても、日足の動きを読むのはとても難しいことを実感します。
クロマグロ漁獲枠の拡大とは?
この会議により、2025年以降の漁獲量は大型魚が1.5倍、小型魚が1.1倍と定められました。日本分の枠も同様に拡大され、大型魚が2807㌧増の8421㌧、小型魚が400㌧増の4407㌧となります。国際的な資源量が回復傾向にあることを踏まえた措置で、日本が主導したものです。
このニュースが流れた2024年12月4日、関連銘柄はサプライズで急騰しているのではと思い、チェックしてみました。ところが各社のチャートには、まったく気配が感じられません。
まずマルハニチロの日足です。漁獲資源買付と加工に強みを持つ同社ですが、株価はぴくりとも反応していないことがわかります。
ツナ缶(日本では一般的にツナ=マグロ)は、マグロの漁獲量の影響を大きく受けそうな印象があります。11月末以降上昇基調にはありますが、今回の影響とはいえないでしょう。
コロワイドといえばかっぱ寿司です。かっぱ寿司といえばマグロです。
漁獲枠拡大を阻害する要素は何かを考える
いずれの関連銘柄も、漁獲枠拡大により株価が好影響を受けていないことがわかります。NISA新制度で株式投資にチャレンジし、次の段階へと個別株を視野に入れている投資家にとっては、肩透かしの株価推移といえるでしょう。半導体や防衛株ではなく、日常生活に関係ある「食材テーマ」なのでなおさらです。なぜ今回、関連株に著しい影響が生じなかったのでしょうか。
物価上昇と流通費の高騰
考えられる主な理由は、物価上昇と流通費用の高騰です。また今回の枠組みは国家間であり、民間企業への影響が図りづらかったところも、日足が反応を見せない理由と考えられるでしょう。コロワイドなど回転寿司業態においては、人件費高騰も上昇期待を抑えこんだ理由として考えられます。もちろん回転寿司に特化した会社ではないことも前提です。
今後、今回取り上げた各社が四半期決算などで「漁獲枠拡大に期待できる」という記載があれば、各種銘柄にとって織り込み済みの段階といえるでしょう。現時点ではそれがいつの段階かわからないことに加え、流通費用などマイナスの要因が大きいため、投資家が手を出せないことが想定されます。この現象は2024年が終わり、2025年を迎えるにあたって、さまざまな銘柄にいえることです。
2024年年末からの利上げとトランプ就任は既にコンセンサスなのでは
代表的なものを2つ想定します。1つは2024年年末に控えているであろう、アメリカと日本の金利政策です。アメリカはインフレが進んだとして利下げ、対する日本は利下げのタイミングを計っています。
それぞれFOMC、日銀会合といった「決まった日程」によって意思決定がされるため、それぞれの日程の数日前から投資家の注目を集めることは間違いありません。なお2024年12月においては、FOMCが12月17日(火)・18日(水)、日銀決定会合が12月18日(水)・19日(木)です。1日違いのため、当該週の相場ではアメリカは〇〇~、日本は△△といった具合で分析されるでしょう。金利政策は銀行株などへの影響が考えられますが、どのように動くのでしょうか。
もうひとつは、2025年年明けとともに世界を席巻するトランプ新大統領の就任です。トランプ氏が大統領として実勢を振るうことができるのは、1月の就任以降です。現在の民主党政権から「政権交代」となるため、実務上の始動には時間がかかることも想定されます。
ただ実際に相場への影響は活発です。2期目ということもあって新政権の骨格や、同氏がSNSで表明した中国・カナダ・メキシコを想定した追加関税策は、大きな反発を招いています。
それにしても冗談とはいえ、カナダのトルドー首相に「カナダは51番目の州になってはどうか」と言えるのはトランプ氏の特権なのでしょうか。
株式にはコンセンサスとサプライズがあります。トランプ氏の就任において、就任日まで絶対に出てこないサプライズの情報とは何かを考えます。そうすると今回動かなったマグロの漁獲高拡大のように、拍子が抜けたように相場が動かない可能性も十分に考えられます。
戦争リスクに「令和のブラックマンデー」と、例年に比べ変動性の高かった2024年の株式相場も、まもなく一区切りとなります。NISA新制度がはじまったことで、多くの「新勢力」が加わりましたが、どのような運用成績となっているでしょうか。